※肉体的源不です。



「――2対0! 勝者、真帝国学園!」

 ホイッスルが鳴り、試合が終わる。当たり前のような真帝国学園の勝利だった。
 特に勝利の喜びを分かち合うこともなく、真帝国イレブンがベンチに戻って行く。中にはすぐにシャワーを浴びに中へ入ってしまう者もいて、相手チームはその中学生チームらしくない振舞い、試合の様子に言いようのない視線を送るのだった。



「源田」

 肩からタオルをかけた不動は、源田の後姿に声をかけた。源田は佐久間に声をかけようとしていたところで、しかし不動の呼びかけに応えた。

「不動……! 今日の試合は何だ、佐久間が」
「元からウチは佐久間が点取る役目だろ? 皇帝ペンギン1号を撃たせなかっただけでも感謝してほしいくらいだぜ?」

 源田はだが、と口を開こうとしたのだが、その手をキーパーグローブ越しに不動に掴まれ思わず口を閉じた。

「人のこと心配してる場合かよ。MF、DFに仕事をさせず完全に佐久間と源田だけに動かさせた試合だ。この試合だけで20本はシュート喰らったんじゃねえの? ま、全部防いだあたり褒めてやってもいいけどな」

 不動の掴んだ手は痙攣するように震えていた。
 この試合はほとんどいじめと言ってもいいものだった。不動の指示のもと、源田と佐久間以外の9人は一歩も動かず、ただいるだけ。シュートは全て佐久間が、守りは全て源田が行った。
 それでも佐久間はなんとか一試合を走り切り、源田は全てのシュートを防ぎきった。だが彼らの疲労は普段の練習以上のものとなっていた。佐久間はふらふらと奥に入って行ったし、源田も今立っているのが精いっぱいだろう。

「そんなことよりお前、シャワー浴びてこいよ。汗の匂いで臭いったらねえ」

 不動がくん、と鼻を鳴らして源田を急かした。少し離れていても汗の匂いがむんとする。
 ただ臭いだけならまだいい。ひどく不動の性欲を煽るのが勘弁してほしかった。
 特に不動は試合で一歩も動いていないのだ。体力が有り余っている。

「ああ……、すまない」

 源田は重い身体を引きずるようにして不動に言われるがままに奥に入って行った。量のある髪が歩くたびに上下して、そこからまた汗の匂いがむわんと広がる錯覚が見えた。
 無意識に不動が唾を嚥下すると、少し離れた場所から凛として冷たい声がかけられた。

「あんた、飢えた目してんじゃないわよ。気持ち悪い」

 小鳥遊に指摘され、ふんと一瞥すると不動も男子更衣室に入って行った。



 他のメンバーは、動いていないのだから当然汗をかいていない。シャワーを浴びることもなくさっさと着替えて帰ってしまった。
 少しすると佐久間もシャワーから上がってきた。

「佐久間ァ、疲れたかよ」
「…………」
 
 佐久間は応えることなく、荷物を掴んでロッカーをばたんと閉めた。

「口を開くのも面倒なくらい疲れたか?」
「……帰る」
「おー、帰れ帰れ。源田はまだシャワー室か?」
「そうなんじゃないか。倒れてるかもしれないが」

 それきり佐久間は口を開こうとせず、不動に背を向け更衣室から出て行った。ここに残っているのはもう不動と、この奥にあるシャワー室の源田のみ。
 源田で遊ぶためにここで待っていようかと考え、しかし手持ち無沙汰でいるのも暇で、佐久間の「倒れてるかもしれない」の言葉に惹かれたのもあって。不動はユニフォーム姿のまま、シャワールームに向かった。

 水の音がザアアと響いている。湯気が部屋に充満していて息苦しい。
 簡単な仕切りとカーテンに区切られたシャワー室のひとつだけが使用中になっており、源田のいる位置を教えてくれた。

「源田ー、まだ身体洗えねーのかァ? 俺が手伝ってやろうか」

 不動が楽しげに声をかける。だが返事が返ってこず、眉を顰めた。

「おい、聞こえてんだろ。源田」

 しかし、その声にも返ってこない。不動はイライラとカーテンのしまる個室の前に立った。

「源田!」

 そして容赦なく、カーテンをざっと開ける。シャワーの湯が跳ねて頬に当たる。が、それは目の前の事態に比べれば大したことではなかった。

「…………本当に倒れてやがった」

 源田がシャワーの湯を頭から被りながらも、床に蹲っていた。壁に片手をついて膝を折っている。
 とりあえずシャワーを止めて、不動はボリュームをなくした源田の頭を掴んだ。

「おーい、起きろ。流石に俺一人でお前は運べねえ」
「……う、……」

 頬をぺちぺち叩くと、しばらくして、源田が眉を顰めて目を薄らと開けた。

「……不動……?」
「お、起きたか。上がるぞ。立て」
「……ちょっと、待って……くれ」

 何度か軽く頭を振り、一分近くを要してから、源田はようやく立ち上がることができた。しかしすぐに眩暈を起こし、ふらふらと壁に手をつく。
 不動は面倒そうに悪態を吐いたが、しぶしぶ源田の肩を抱いてやった。源田の身体についた湯がユニフォームをべったりと濡らしたので、この分は後できっちり払わせてやろうと思った。
 源田の体は重いったらない。それをずるずると引きずり、ようやくロッカー室まで来て、ベンチにどさりと投げた。

「ほらよ。これが欲しいんだろ」
「ああ……、ありがとう」

 不動から素直にスポーツドリンクを受け取り、それを一気に飲み干す。そうすることでようやく楽になったのか、源田は顔を上げて改めて礼を言ってきた。

「不動、本当にありがとう。シャワーを浴びていたら頭がぐらぐらして……。助かった」
「全裸で礼言われても妙な気しかしねえ」
「……! す、すまない。今服を、」
「いや、必要ねえよ」

 不動はぬっと顔を源田に近づけた。表情は何かを企んでいる顔。それにはとても見覚えがある。

「……不、動。ここは、まずい」
「もう全員帰ったんだよ。けど鍵はかけてない。もしかしたら誰かが来るかもしれない状況、興奮するだろ?」

 不動の唇の端から覗く歯が、源田に拒否権はないのだということを示していた。



 疲労で身体が重い。足の一本も満足に持ち上げられなくて、不動に舌打ちされた。

「……。仕方ねえ、今日は俺が女役になってやる」

 冷たいベンチに横たえさせられて、その上に不動が濡れたハーフパンツと下着を脱ぎ去って跨ってきた。
 濡れた髪が頬に貼り付いて、頬を水滴が伝った。

「あはは、風邪引くなよ」

 そんなことを言うならタオルで身体を拭く時間くらいくれてもいいのに。だが不動はそうすることもなく、裸の下半身を同じく裸の源田にぴったりくっつけた。不動のほんのり暖かい身体は、源田の冷えた身体に気持ち良かった。
 不動が身体をくっつけたまま源田の厚い胸板に顔を乗せる。と、石鹸の香りが鼻孔をくすぐり、何だか癪に障った。
 身体をずり上げて首筋の裏へと鼻を埋めると、先は離れていても香った源田の匂いがようやくした。満足してそこをぺろりと舐め上げる。すると耳元のごつい喉仏が上下した。

「何て言うんだろうな、この匂い」
「匂い……? まだ、臭いか」
「ああ、匂ってきやがる。お前の獣みたいなニオイ」

 源田は頬を赤らめ顔をふいっと逸らした。体臭を指摘されれば誰だって恥ずかしい。腕を持ち上げくん、と嗅いでみるが、源田には石鹸の匂いしか感じられなかった。

「そんな所から匂いはしねえよ。もっと匂いが強いのは、こっち」

 不動は腰をそれにすりつけた。源田はう、と声を詰まらせた。
 不動が腕をついて上体を持ち上げ、強く香る下腹に顔を寄せる。反応はしていないが大きいそれを左手で掴み、右手をその根元の茂みに差し入れた。

「毛が生えてる所は全体的にニオイが強いが、ここは特別だ」
「そ……れは、そうだろう……っ」

 普段外気に晒すことのないそこに鼻先を埋める。硬めの毛が不動の鼻をくすぐった。そこからも石鹸の香りはしたが、唇も付けて深く吸い込むと、源田の匂いに混じって雄らしい香りもした。

「不動……っ、あんまり嗅がないでくれ……!」
「ああ? ニオイ嗅がれただけでおっ勃てて、何言ってんだ」

 不動が左手に掴んでいた源田自身は、明らかにはじめよりも質量が増えている。それを指摘されると源田は眉間に皺を増やして不動を見上げることしかできなかった。
 ありえない場所で深く呼吸を繰り返され、そこの匂いを何度も何度も嗅がれながら、悪戯に左手で自身を扱かれる。熱い息が陰部にかかるのがたまらなかった。

「ふ……どうっ……」
「もう限界だとォ?」

 源田のたったそれだけの呼びかけで不動は全てを察し、仕方ねえなと身体を起こした。そして源田の見ている前で何のためらいもなく、源田の先走りに濡れた左手を自らの後孔に差し入れる。
 気持ちよさそうに出し入れし、3本の指がすんなり入るようになったところで、不動はその指を抜いた。

「今日頑張ったご褒美だ」

 不動が源田の勃起したそれを無造作に掴んで、今までほぐしていたそこにぴたりとあてた。そして、勢い良く最奥まで、源田の全てを挿入した。

「――は……ぁ、デケェ……っ」
「っ……不、動……」

 ふる、と不動が身体を震わせる。源田のものよりもだいぶ小さい不動自身が源田の腹にとろりと透明な滴を落とした。

「源田、この硬ェもんしばらく萎えさせるなよ」

 そう言い、不動は腰を上げ、すぐに落とした。そうして、ぱんぱん、とリズミカルで単調な動きを始めた。
 源田のもう乾いた胸板に手をつき動く不動から、汗や性液がぽたぽたと垂れ、再び源田の体を濡らしていく。

「あー、きもちい……」
「はっ……、ん……ッ」

 腰を動かしながら、不動が源田に倒れ込む。結合部がにちにちと音をたてた。
 しかしその厭らしい音を聞くこともなく、不動が再び源田の首筋に鼻を埋めた。

「……んっ、はあっ……くせえ……ッ」

 不快な匂いだと言っているわけではない。また汗をかいたおかげで咽かえるような源田の香りがむんむんしてくるのだ。そしてそれが不動の性欲を大きく煽る。
 その香りを胸いっぱいに吸い込んで、ガリッと、首筋に歯を立てた。

「……っ! くッ……!!」
「……ああ、また濃いニオイがしてきやがった……」

 不動の後孔で、どぷりと源田が吐精したのが分かった。それは強い雄の匂いをしているのだろう。また、不動の鼻先が埋まる首筋からも、毛穴から噴き出た汗がむわんとした香りをたてた。

「おい、もう一回やるぞ」
「む……、無理だ、もう。そろそろ誰かが来るかもしれないし」
「何言ってんだ。俺が枯れるまでやるんだよ」

 再び源田の拒否権は奪われた。


***

2011.08.19

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