※アニメ設定(非敬語ビヨン)



 ――罠にかかったと気付いたのは後になってからだった。


「離せ、馬鹿!」
「いい格好だ、ビヨン」

 残虐に歪んだ左目がビヨンを見下ろし笑っている。その蒼い目の奥に絶望を見て、ビヨンの世界は暗転した。


 ビヨンがここに連れてこられたのは恐らく数時間前。練習を終え、家路につく時のことだあった。
 暗くなりかけた道を歩いていたところ、後ろから見知らぬ男に襲われた。思わず男の股間を懇親の力を込めて蹴り上げ逃げようとしたが、その直後に別の男に何かの液体が沁み込んだハンカチを口に当てられ、そこからの記憶がない。
 そして目が覚めたら、見知らぬ部屋にいた。とても整頓された、アンティークな家具の並ぶセンスの良い部屋。部屋を見て直感で思い浮かべた人物がすぐに現れ、ビヨンは思わず目を瞑った。

「……エドガー。何だ、これは」
「いや。悲願を成し遂げようと思ってね」

 エドガーの言わんとすることが理解できないビヨンは起き上がろうとしたが、頭上に上げられた腕が縄に絡みついていて動かせなかった。頭だけを起こし、寝かされているベッドサイドに立つエドガーを睨みつける。
 目的はよく分からないが、これは立派な犯罪だ。誘拐に、監禁。趣味が悪い。

「こいつを外せ、俺を帰せ、エドガー」
「それは聞けないな。私の目的を果たすまで」

 だから目的って何だ、とビヨンが言う前にエドガーの指がビヨンの体をなぞった。悪寒がしてビヨンは逃げようとしたが、腕が拘束されていては動けない。

「やめろ! 触るな!」

 ビヨンは大声を出し抵抗した。しかしここはエドガーの家だろう。彼の家でどんなに助けを求めてもどうせ意味のないことだ。
 予想通りエドガーは怯まず、指をくるくると動かした。ビヨンは全身に鳥肌を立たせ震えた。エドガーの目的というものが分かった気がして、気分が悪い。

「気持ち悪い、やめろ、離せ!」
「その抵抗の言葉も心地良い。強い目が快感に染まるのが楽しみだな」
「なッ……!」

 エドガーはビヨンの上着をたくしあげた。空気がビヨンの腹を撫でる。
 寒い、と思う間もなく首元まで露わにされたビヨンの上肢をエドガーが愛でた。手のひらで腹から胸元を撫でられ、ビヨンはまた全身を粟立たせた。

「気持ち悪いって言ってるだろ……! やめろ!!」
「どうせドルフィンに愛されているんだろう? ならば開発されていて当然のはずだが、」
「ッうあ……っ!!」
「ビンゴ、か」

 不意にエドガーの指がビヨンの乳首を捕らえ、思わずビヨンは声を上げた。エドガーの言う通り、ビヨンとニースは愛し合い、体を重ねることもあった。そこで快感を感じるようにしたのもニースだ。
 しかし誰でもいいというわけではない。ニースでなければ嫌だ。
 ビヨンはこんな好きでもない男にそこを触られ、感じてしまうのが嫌だった。そしてそれ以上にニースに申し訳なかった。

「くっ……、っ……!」
「声を殺すな。私が何のために口を塞がなかったと思っている」
「っ……っ……!!」

 エドガーはビヨンの反応を楽しむようにそこを捏ね、摘み、撫でた。ニースとは全く違う手つきだ。それが新鮮で感じ入ってしまうのが本当に悔しく、自分の体が恨めしい。
 ニースじゃなきゃ嫌だ、という言葉が言い訳のように感じてしまうほど、エドガーの手はビヨンの快楽を引きだした。

「んっ……んんっ……、ぐっ……」
「素直に堕ちればいいものを。まだ必死に抵抗する姿、やはり可愛いな」

 エドガーはビヨンを満足げに見下ろし、そして目線をふと下げた。
 なんとなく縛らずにおいた足。その両足がせわしなく動き、膝同士を擦り合わせている。中心に布地を押し上げるものを見つけ、エドガーはふ、と笑みを零した。

「胸だけでこんなに感じられるとはな。ドルフィンの開発の賜物だな」
「ッ……、ニース、」

 ニースの名を聞き、ビヨンは顔を歪めた。しかしそれに構わずエドガーの手がビヨンのズボンにかけられ、ビヨンは目を見開いた。一度止んだ抵抗が再び大きくなった。

「や、やッ! やめろ、嫌だ、エドガー!」
「やめるはずがないだろう」

 ビヨンに蹴られる前にエドガーが一気にズボンを下着ごと下に降ろし、足首に絡みつかせて足の動きを封じた。そして露わになった下半身の中心にビヨン自身を見た。

「見るなっ、バカッ、クソっ」
「ずいぶん元気そうだな。それに、見るなと言う割に見て欲しいようだ」
「死ねッ……!!」

 エドガーがまじまじとそれを見下ろしてくる。それが耐えられないくらい恥ずかしく、プライドも傷つけられた。
 エドガーに見られているということがすでに勃起していたそれに更に血を溜まらせ、見られたくないビヨンは体をよじった。しかしその度にペニスも揺れ、エドガーにはとてもたまらない画だった。
 触れてもいないそこはエドガーの胸への愛撫と視線で痛いほどに勃ちあがり、すでに滴を零すほどに濡れていた。

「やめろ、やめてくれ、エドガー……っ」
「まだ泣き言を言うには早いぞ」

 エドガーは自由を奪った両足を持ち上げ、体をくの字に折り曲げるようにに足を高く上げさせた。そうすると自然と菊門がエドガーの眼下に晒される。
 あられもない姿にビヨンが声を上げる前に、エドガーがそこに触れた。

「ひぃっ……!」

 ビヨンは、触れたそれがエドガーの指であることは分かった。しかしぬるぬるとした感触は知らない。
 くちゅくちゅといやらしい音をたてるそこから意識を外そうとしても、エドガーの指が入ってきては無理だった。

「エドガっ、何、それっ、抜けっ……!」
「ローションだが。ただし、普通のものではないがな」
「ッひ、あ、あっ……!」

 ローションのぬめりによって容易く体内に侵入したエドガーの指が縦横無尽に動き回り、ビヨンを翻弄した。ぐちょぐちょと嫌な音がしきりに聞こえてくる。
 エドガーが抜き差しするたびにそこが熱くなり、普段からは考えられないほどのスピードで快感が大きくなっていった。

「アッ、あ、あっ、へん、変だっ……!」
「……効いてきたか?」

 エドガーが楽しそうに言った。ぬるぬるとしたそこが異常なほど熱を持っている。そして気持ちが良い。
 恐らくローションの中に何か入っていたのだろう。むず痒く熱い感覚にビヨンは思わず腰を揺らした。エドガーは焦らすようにそこからゆっくりと指を引きぬくと、傍の棚の引き出しから卵型の道具を取り出した。
 そしてビヨンの入り口に当て、撫でるように動かした。するとそこがひくひくと開閉しエドガーを誘惑した。

「欲しいか? 欲しいなら言え、ドルフィンを諦め私を取ると」
「っ……っ……!」

 ビヨンは無意識に揺らしていた腰を止め、エドガーを見上げた。その目には涙が溜まっている。
 エドガーの気持ちは最初から分かっていた。それに応えずニースの元へ行ったのはビヨンだ。しかしエドガーがこんな脅迫まがいのことをするとは思わなかった。
 こうしている間にも耐えられないくらい体が疼いている。今すぐにでもどうにかしてほしい。しかし、自分にはニースがいる。
 ビヨンはどうすることも出来ず、目に溜めた涙を零した。

「っ……無理……、ニース…ニースっ……」
「ッ……。くそっ」
「――っ!!」

 エドガーは感情に任せ、ビヨンのそこに小さなローターを押し込んだ。そしてスイッチを入れるとすぐにそれが震えだし、ビヨンの体内で暴れ始めた。強い快感がビヨンを襲い、口端からは唾液が零れた。

「あっ、あっ、んっ、ニースっ、ニース、ニース……!」

 助けを呼ぶようにニースの名を呼ぶビヨンを憎々しげに見下ろしながら、エドガーは入れたローターを指で奥まで押し込んだ。そこはエドガーの指をもぎゅうぎゅうと締め付けた。

「ニースっ、ニースっ、あ、あ、あぁあ……――!!」

 甘い声でニースを呼び、ビヨンは吐精した。黒い肌に白い精液がよく映え、ひどく性欲が煽られる。
 しかしエドガーの表情は浮かなかった。指とローターをずる、と引き抜き、ビヨンの体を拭いた。

「………。挿れ、ないのか」

 ビヨンは小さく、エドガーに聞いた。ここまでされたのだから挿入までは覚悟していた。
 エドガーはビヨンの服を整えながら言った。

「私は紳士だ、他人の男にそんなことはしない」
「ここまでしておきながら何言ってる」
「紳士といえ男だからな、たまには我慢の限界もある」

 意味の分からない事を言うエドガーを睨み、自由になった右手でエドガーの左頬を思いっきり叩いた。


***

2010.07.03

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