※色々と注意かもしれません
※何でも許せる方のみどうぞ



 ニースが目覚めると、そこには信じられない光景が広がっていた。

「おはようございます、ニース」
「ニース、おはよう。目が覚めたか」
「え……、あ………?」

 ベッドに横たわって眠っていた体をはさむようにしてニースの顔を覗きこんでいたのは、裸のビヨンと、ビヨン。同じ顔がふたつ。――ビヨンが、ふたり。

「え、えええ!? ビヨンがなんで二人もいるんだ!?」

 一気に目を覚ましたニースはがばっと体を起こした。その肩を、右側にいたビヨンが掴んだ。強い獣のような瞳の持ち主だ。

「細かいことはいいだろ。それよりも俺と気持ちいいことしようぜ」

 その言葉に、今度は左側のビヨンがはっとした表情でニースの腕を縋るように掴んだ。陰を持っているが凛とした瞳の持ち主だ。

「駄目です、私と、ニース」
「え、えっ……」
「セックス、」
「しようぜ?」

 状況が全く理解できていないニースは、二人に増えたビヨンによって再びベッドに横たわらせられた。



 本当に何がどうしてこうなっているのか、全く理解ができない。考える暇もなくビヨンに脱がされ丸裸にされていた。
 止める声も聞いてもらえず、主導権は完全に同じ顔をした二人にあった。

「うわっ、ちょっと、ビヨンっ」
「んっ……っぅ、ん、気持ちいいですか……?」
「俺にされて気持ちいいよな……?」

 横たわるニースの足元に蹲るようにして、二人のビヨンは剥き出しにされたニース自身を指と舌を使い愛撫していた。二人がかりで施されるそれは同時に複数の場所を擦られるために、余計に敏感になって気持ちが良い。
 二つの顔が上目遣いでニースを見上げて来て、尚更だ。自分を俺と呼ぶビヨンが赤い舌でニースの尿道口のまわりをなぞり、私と呼ぶビヨンが竿を舌でつうっと辿った。

「っ……! ビヨン、待て、って……!」
「あ、今の、俺がやったのが気持ち良かったんだろ?」
「私ですってば!」

 二人のビヨンはお互いに敵対心を持っているらしく、先程からしばしばこうして言い争っていた。内容はすべてニースを巡ることだ。
 しかしその中心の人物が事を理解できておらず、また弱い部分を握られていては問い質すこともできず、ただビヨンにされるがままになっていた。男はこの快感に弱い。

「ニース、美味しい……」
「そ、そこで喋るなってば……!」

 ニースの先端を浅く咥え、軽く嚥下しながら右のビヨンが言った。くすぐったく吐息が当たる感覚にニースが息を詰めたのを見て、もう一人のビヨンが悔しそうな目で半身を睨んだ。

「あんまり調子に乗らないでください! ニースは私がっ」
「悔しかったら早くニースを気持ちよくしてやれよ。中途半端な刺激しかもらえなくて可哀相だぞ」
「っ……!」

 半身の挑発にビヨンは顔をさっと赤らめ、邪魔なその頭を押しのけてニースのそれを喉奥深くまでぱくりと咥えた。その顔を必死に上下させるように動かし、そのままニースの様子をうかがうように上目でみあげられたら、もう。

「くっ……!」
「あっ!」
「……っ!!」

 ニースは声をかける余裕もなく、咥えていたビヨンの口内に吐精した。急のことで口から出すこともできなかったビヨンは、喉奥に吐きだされたそれで咽そうになり、口端から唾液と共にニースの精液がつうっと垂れた。その様はとても情欲を煽るものだった。

「あ、こら! ニースのものを無駄にするな!」
「う、ぅんっ……」

 精液を垂らしたビヨンの顎から口端までを、勿体ないと言わんばかりにもう一人のビヨンが舌で舐めとった。そして口の端までたどり着くと、今度は白いものでいっぱいの口の中へ。

「はっ……ん……」
「っ……んんぅっ……」

 ビヨンが二人で舌を絡ませ合うキスをしている。しかも二人の舌がのぞくたび、ニースが今しがた出した精液も赤い舌に混じって見える。精液を二人で味わうように深くキスする姿は、どんな魅力的な女性よりも艶やかであった。そしてニースを視覚的に興奮させた。

「――っはあっ……」
「はっ……あ……、ん……?」

 キスをけしかけた方のビヨンがニースの方を振り返り、その足の間にあるものを見た。ビヨン達の唾液に濡れたそれは今射精したにも関わらず硬さを取り戻そうとしていた。

「ニース、俺達のキスに興奮してくれたのか……?」
「い、いや、これは、まあ、その、」
「嬉しい……」

 ビヨンが愛おしそうにニースを見、独り言のように呟いた。そして同じ顔を見合わせ、何か通じあったのか、頷き合った。
 完全に置いていかれているニースは戸惑い、しかし先のフェラからずっと足の上に乗られているために動くこともできず、ビヨンを見上げるしかなかった。
 するとビヨンがそこから退いて腕を伸ばし、ニースを膝立ちさせた。何をされるのか全く検討のつかず、ニースはビヨンを今度は見下ろした。

「ビヨン、何するんだ……?」
「私たちでもっと気持ちよくしてあげます」
「ニースはただ立っているだけでいいぞ」

 そういうなり、ビヨンはニースの前に横向きに向かい合うようにして跪いた。そして少し前かがみになるようにして、ニース自身をお互いの胸の間に挟み込んだ。
 筋肉が付いているが程良くやわらかい感触に挟まれ、ビヨンの体内に挿入するのとは違う気持ちよさがあった。

「おい、もっとくっつけ」
「んっ……ニースのが熱い……」

 ぎゅうっとビヨンはお互いの体を抱きしめてニースのものを締め付けた。やわらかい肌に包まれるのはたまらなく、自分のものがビヨン達の胸の間にあるという普通ならばありえない光景も、ニースを興奮させた。

「ニース、私たちの間で動かしてもいいですからね……」

 そう言って、ビヨンはお互いを強く抱きしめニース自身を圧迫させながら先ほどの続きであるように自然に唇を合わせた。ちゅ、ちゅ、と角度を変えつつ啄ばむようなキスを繰り返し、そして片方のビヨンが舌を突き出すと、もう片方のビヨンも少し恥ずかしそうだが猫のように舌を出した。その舌を舌で絡ませ、ニースによく見えるようにキスをした。

「ビヨン……、」
「早く、動かせっ……」

 見上げる目にせかされ、ニースはゆっくりと体を動かした。胸の間に挟まれているものを動かすというのは奇妙な感覚だが、気持ちがいい。そして何より、視覚的に性欲を煽った。
 数回腰を動かしてみる。するとビヨンがキスをしながら小さく声を漏らした。

「ッ、っ……」
「ひゃ、ぁっ……」

 その声に二人の胸元を見てみると、ニースのものが全く同じ背丈のビヨンの乳首を擦っていたらしい。二人とも感じやすい体であることに感心し、そしてようやく自分のペースも取り戻して、ニースは腰を動かした。

「っは、あんっ、あっ……」
「あぁっ、は、あ……っ」

 ニースが動くたびに乳首を刺激され、二人のビヨンはキスを続けながらも吐息をもらし、ニースを見上げる目は潤んでいて感じているのは明らかだった。
 その気持ちよさそうな表情と声にニースも煽られ、腰を動かした。

「ビヨンっ、そろそろイく、ぞ……」
「んっ、いいぞ……っ、来い……」
「私たち、顔で受け止めますから……」

 ビヨンは唇を離し、ニースの足元に膝をついた。始めと同じ、ニース自身の前に顔を置いた。そして手のひらを片手ずつ添え、射精を促すように愛撫した。

「っ――! ビヨンっ、」
「わっ……!」
「んんっ……!」

 どくん、と吐きだされたニースの精液を、二人のビヨンは恍惚の表情で受け止めた。二人の顔を自分の汚物で汚す快感は何とも言えない。禁断の遊びをしたように、心臓が跳ねていた。背筋はゾクゾクした。

「ビヨン、大丈夫か……?」
「大丈夫だ、このくらい。だって俺達は」
「ニース、貴方を」
「「愛してるから」」




 ――ピピピピピ…………

「うわあっ!!」

 突然枕元で鳴りだした目覚まし時計にニースは飛び起きた。心臓がバクバクしている。ニースの隣で何かが身じろぎした。

「うーん……何ですかニース、朝から大声出して……」
「あ、ビヨン、ごめん、…………ん?」

 ニースは何か違和感を感じ、腕を組んで思案した。何かがおかしい。さっきまで奇妙な夢を見ていたような気が……。

「…………夢?」
「ニース?」
「夢だったのかあああー!!!」

 突然叫んで起きたかと思えば頭を抱えたニースを、ビヨンが心配そうに見つめた。むろん、このビヨンは一人だ。

「ニース、何かあったんですか……? 具合が悪いなら医者に、」
「ビヨンー!! ごめんな、お前は一人で十分だよ!!」
「わ、ちょっと、いきなり何ですか! 離して下さいー!!」
「お前が一人でも愛してるからなビヨン!!」

 状況が理解できていないビヨンをひしと抱きしめ、ニースはそう叫んだ。



***

2010.08.09

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