※調教済サージェス(サージェスがかなり受け受けしいのとポトムリがサドっぽいです)
勝手知ったる他人の部屋のベッドの上で、ぐうぐうといびきを掻いている者がいる。
「……全く、この男は……」
ポトムリは起きる気配のない金髪の男を見下ろして、深いため息をついた。
サージェスがポトムリの部屋に訪れるのはもはや日課と言えた。
騎士団の仕事があったり、ポトムリの仕事が切羽詰っているときならば自然とサージェスの訪問はなかったが、それ以外はほとんど毎日来る。
特になにをするわけでもない。他愛のない話をしたり、だらだらと過ごすだけだったり。
それでも一応恋人という関係にあったので、それなりの行為もこなしていた。
そしてその日もいつも通りサージェスはポトムリの部屋を訪れた。
初めのうちは適当に会話をしていた。今日あった出来事をつらつらと話していた。だがその途中で、ポトムリが一人の研究員に呼ばれた。
「悪いが、少し行ってくる。いつ戻れるか分からないから戻っていてくれ」
「待ってちゃダメか? 今日はもう少しポトムリと喋りたいんだ」
どうせ俺ももう何もないし、とサージェスが言う。サージェスに壊されそうな武器は別の部屋に避難させていたし、見られて困るようなものもポトムリの部屋にはない。
時間がかかるのかもしれないぞ、と言うとそれでも待っていたいと答えたサージェスに、それならば好きにしていろと伝えて部屋を出た。
そして案の定研究員がポトムリを呼び出した要件は複雑で、思ったよりも時間がかかった。サージェスは待ちくたびれて帰っただろうか。そう思いながら自分の部屋に戻って、目に飛び込んだ光景が、これだ。
ポトムリが扉を開けた音にも気づかずにサージェスは深い眠りに入っている。騎士団がそれで良いのか。
流石に仕事をしてきた直後にだらしのない寝顔を見ると、そっとしておいてやろうという優しい心はなくなる。せめて自分の部屋に戻ってから寝てくれ、とサージェスの肩を揺すった。
「おい、サージェス。起きろ」
「うう〜ん……ひめさま……」
しかし寝つきの良い男にはポトムリの呼びかけなど何の効果もなかった。寝言ですら仕える姫の名を呼んで、だらしなく眉を下げている。
いっそベッドから落としてやろうか。そんなことすら思ってしまう。しかしポトムリははたと思いなおして、サージェスの肩を掴んでいた手をつう、と動かした。
「……全く、無防備なのがいけない」
右手を緩やかに動かして、彼の首元へと這わせる。このまま手に力を籠めれば殺せてしまう場所だ。だがサージェスは、相手がポトムリであることへの本能的な安心感か何なのか、急所に触れる手にも構わず寝入っている。
面白くない、とポトムリは手をそこから下へ、鎧を脱いで軽装になったサージェスの胸元を撫でた。
「……ん、」
すん、と鼻が鳴る。が、起きる気配はない。豊かな筋肉でなだらかな曲線を描く胸を大きく撫でて、その端、シャツの下で色づく箇所を爪先で軽く引っ掻く。
「ふ、」
筋肉に覆われているサージェスの身体は、それでもひどく感度が良かった。カリ、とポトムリの爪が布越しにそこを弾くたび、ひく、とサージェスの喉が震える。
眠っているのにそんな反応を見せるサージェスに、ポトムリの悪戯心が刺激される。
勝手に人の部屋で眠りこけていた罰だ。
ポトムリはサージェスの服に手をかけた。
――何だか心地いい夢を見ていた気がする。
ゆっくりと浮上した意識に、サージェスは金糸に縁どられた瞼を震わせた。
「……ようやく起きたか」
「ぅうん……、ポトムリ……、……ん、……んん!?」
妙な身体の違和感と、降ってきたポトムリの声。一気にサージェスは現実に引き戻されて、目を大きく見開いた。
確か自分は、ポトムリを待っているうちに眠くなって、そのままポトムリのベッドで寝てしまって。
「――で、何で俺は裸なんだ!?」
「あまりに反応が良かったものでな。ついついここまで来てしまった」
言いながら、ポトムリがサージェスの陰茎を手袋をしていない指先でくるくると弄ぶ。
サージェスが見下ろした己の身体はすっかり全ての衣服が取り払われ、乳頭はぽってりと腫れて普段の薄い色素のそれとはかけ離れて赤く色づき、つんと天を向いて尖っている。
そして陰茎もすっかり臨戦態勢で、ポトムリの手との間で先走りの体液がにちにちと鳴っていた。
「いや――、いやいや、待てってポトムリ、どういうっ、ん、ッ」
今の状況が理解しきれないサージェスは、意識とは裏腹に身体ばかりが反応してしまう。ぴくりと揺れたサージェスの身体を興味深そうに見下ろしながら、ポトムリは愛撫をやめない。
手に余る大きさのサージェスのものを細い指先でナゾリ、手のひらで形を確かめる。的確にサージェスの熱を高める動きには、どうしようもなく喉が鳴った。
「んッ、ぁ、ポトムリぃっ、やめ……ッ」
「やめてほしいようには見えないがな。ここも、こんなに女のような色をして」
「んぅうッ……!」
ぴん、とポトムリの空いた手がサージェスの乳首を弾き、そして二本の指で摘まむ。決して強い力ではないが、刺激に敏感になったサージェスの身体は大きく跳ねて反応した。
「あッ、ダメだって、ポトムリ……っ」
「そんなに気持ちよさそうに喘いでおいて、何がダメなのだ?」
ポトムリが乳頭をきゅ、きゅ、と小さく扱く。まるで牛の乳でも絞るかのような動きにサージェスの腰が意識とはかけ離れた場所で揺れた。
喉の奥から出てくる嬌声を飲みこんで、サージェスはシーツを掴む。
わけがわからないが、これはまずい。何度もポトムリによって愛されてきたサージェスの身体は、ポトムリの触れる場所全てが性感帯になっているようだった。
下腹にじくじくと熱が溜まっていく。とろりと先端からにじみ出た雫がポトムリの手を汚し、サージェスの羞恥を煽る。
「な、なあポトムリっ、怒ってんのか……!?」
起きたらこんな状況で、寝込みを襲われたことなどなかったサージェスはわけもわからずそう問いかける。しかしポトムリはいや、と冷静に首を振った。
「怒ってはいない。別に、仕事をして帰ってきたら他人が自分のベッドで気持ちよさそうに寝ていたことなんて」
「怒ってるじゃねえか!!」
サージェスの言葉には構わず、ポトムリは愛撫を続けた。
確かにサージェスの気持ちよさそうな寝顔に少しの苛立ちを覚えたことは否定しない。だが別に怒ったというほどでもない。第一この程度のことで怒りを覚えていてはポトムリの脳の血管は今頃ひとつ残らず切れている。
だがサージェスはポトムリになんとかこのわけのわからない状況をやめさせよう、怒りを治めさせようと、必死に許しを請うように視線を上げてくる。
「お、俺が悪かったってポトムリ、なあ、機嫌なおし……、――ッア、触んなぁっ」
「そんなことを言っても、ここは触ってほしそうだぞ」
「あ、あ……っ」
ぴんと張りつめた乳頭がポトムリの指に扱かれてますます尖る。千人斬りの騎士団長が、男には到底不必要にも思えるこんな場所で一人の男に途方もない快楽を与えられているなど、誰が想像するだろうか。
サージェスが眉尻を下げ、長い睫毛を震わせて翡翠の瞳をとろりと潤ませる。惑星一の科学者と呼ばれる男もまた、成人男性のこんな表情で欲情するなんて、誰が想像するだろうか。
すっかり敏感になった乳頭の先を最後に爪先で優しく撫でて、ポトムリはそこから指を離す。
「サージェス、ここは自分で触っていろ。上手にできたら褒美をやる」
「な、何……、ポトムリ……?」
「私はこっちを解すのに忙しい」
ポトムリはサージェスの両足を抱え、それを大きく開かせた。膝を曲げた状態での開脚はポトムリの眼前に全てを曝け出すことになる。同じ男であるし、もうすでにこんな行為は数えられないほどしてきた。それでも羞恥は煽られて、サージェスは足を閉じようと膝に力が入る。
だが、それは途中で霧散した。
「サージェス」
ポトムリの暗い瞳がサージェスを射抜く。悲しいかな、すっかり「飼い慣らされた」サージェスはポトムリには抗えない。抵抗するために込められた力は途中で消え、四肢はポトムリのなすがままに投げ出された。
「良い子だ。そのまま、ただ胸だけを弄っていろ」
「なんで、ここをやらなきゃいけないんだよ……ッ」
「見ていて楽しい」
サージェスにとって何のプラスにもならないそんな返答を貰っても更に反応に困るだけだった。ただポトムリをこれ以上怒らせてはならないとサージェスはおずおずと大きな手のひらを己の胸に這わせた。
剣ばかり握っている手はごつごつとしていて、ポトムリの細くしなやかな指とは全く違って太さもある。不器用に、つんと熟れた乳頭に触れた。
「――んぅ……っ」
甘く切ないような感覚がサージェスの全身へと駆け巡る。騎士団の遠征など、己を慰めるようなときでもこんな場所に触れたりしない。ここに触れるのはいつもポトムリだけで、ポトムリの指とは全く違う自分の指の感触が、普段とはまた違う快感を生む。
「その調子だ」
ポトムリが目を細めてサージェスを見下ろした。そしてサージェスを眺めながら、開かせた足の間、最も奥まる窄まりを指先で撫でる。ひくりと小さく口を開けたそこにポトムリは口端を上げた。
「……すっかり受け身の身体になったな。こんなに口を開けて男を誘って、厭らしい」
「ぁ……、何の話、っぅん、は……っ」
熱に浮かされたサージェスの表情はポトムリを煽る材料にしかならない。ベッドサイドに置かれたサイドテーブルからローションを取り出して、手のひらに垂らす。粘つく液体はポトムリの手の上でねとりと音を立てた。
「どうだ、自分で触る胸は。お前のそこはいつも触るたびにどこまでも尖る。そして熟れた色で、もっと触れと誘ってくるのだ」
「んなこと、ねえ……ッ」
サージェスを言葉と視線で追い詰めながら、ポトムリはローションに濡れた指先をサージェスの体内に回し入れた。男を何度も受け入れたサージェスの後孔はしっとりとポトムリの指に馴染む。それでいてきゅうきゅうと締め付けてきて、みっしりと詰まった肉の感触が心地いい。
自分で二つの乳頭を弄り、大きく開脚した足の間で男の指を銜え込んで表情を蕩けさせているサージェスを、彼を騎士団長と慕う者達に見せたらどう思うのだろうか。
それを少し想像してふっと笑うと、そんなポトムリに気づいたのかサージェスが心配そうな瞳を向けた。
「ポトムリ……? 何だ、また何か気に障ることでもあったか?」
寝起きの時から、ポトムリに叱られていると感じているらしいサージェスが聞く。だがポトムリは笑って否定した。
「何度言わせるのだ、怒ってなどいない。ただお前の痴態は中々見ていて楽しいなと思っていただけだ」
「な……ッ、させてんのはお前だろ! この、……ッん、あ、……ぁッ」
サージェスが反論しようとしたところで、ポトムリが指を増やす。そして何度も愛撫したサージェスの快感の源を摩ると、サージェスはあっけなく陥落した。
サージェスは元々快感に弱かったが、ポトムリの手腕によるところもかなり大きかった。精密機械を生み出す手先の器用さが、妙なところで生きたものだった。
ポトムリがサージェスの体内を縦横無尽に動き回るたび、サージェスは喉から言葉にならない嬌声を上げ、全く触れていない陰茎を上下に振れさせる。完全に勃起している陰茎は振れるたびにサージェスの逞しい腹筋に雫を落とし、臍に先走りを溜まらせた。
「……本当に、厭らしいな。このまま胸と後ろの刺激だけでイけるんじゃないか」
「む、無理だそれはっ、ア、ん、ぅう……ッ」
「試してみる価値はありそうだ」
ポトムリが指を引き抜いて、己の陰茎を露出させる。サージェスを愛撫していただけで完全に天を向いており、雄の匂いを漂わせていた。
サージェスはそれを喉をひくりと鳴らして見つめ、嫌がる素振りをみせず、受け入れやすいようにより大きく足を開かせた。
力の差は比べようもなくサージェスが勝っている。そのサージェスに抵抗されればポトムリには勝ち目がなく、それゆえにこうした行為はサージェスの同意がなくては進められない。
素直にポトムリに身を任せるサージェスを見るたび、大型犬を手なずけたような気分になった。
「あ、あ、――ァ、ッは……っ」
細い指とはくらべものにならない質量を受け入れて、サージェスは悩ましげに眉根を寄せる。それでも慣れた身体は痛みを訴えるわけでもなく、ただ拭いきれない圧迫感に喘いだ。
同性同士で相性も何もないとは思うのだが、それでもサージェスとポトムリの身体の相性は、悪くなかった。ポトムリの陰茎は、絶えずサージェスの最も感じる部分に当たる。正常位で打ち付けられたときに感じるサージェスの快感は、常に意識が飛びそうなほどだ。
しかしそうであっても、これまでサージェスが後ろのみ、胸のみの快感で達したことはなかった。どんなに強い快感であっても射精するには至らない。必ずポトムリによって陰茎を扱かれて、ようやく蓄積された熱を放出することを許されていた。
「サージェス、ちゃんと手も動かしていろ」
「そ――なこと言ったって、ポトムリぃっ、あ、ア……ッ」
ポトムリが腰を打ち付けながら、サージェスの手を彼の胸元へと持っていく。ぴんと尖って敏感になったそこは、ほんの少しサージェスの指先が触れるだけでも電撃が流れるようだった。
サージェスの拙い乳頭の愛撫に合わせてポトムリもサージェスの体内にある快感を抉る。翡翠の瞳はまるでパレットの水彩絵の具に水でも垂らしたかのように薄い膜を張ってポトムリを見上げた。
「そんな顔をしてもダメだ。ちゃんとしないと、イけなくてつらい思いをするのはお前だぞ」
「んな……っ、やっぱり、怒ってんだろ、ひッあ、あ……!」
サージェスの抗議も右から左へ受け流し、ポトムリは腰を動かす。だがサージェスはどうにもポトムリの動きに手が緩慢になり、だらしなく口を開け言葉にならない声を上げるだけでいっぱいいっぱいになっていた。
しばらくそうして、やがてポトムリも、仕方がない、と小さくため息をつく。
「サージェス、」
「んっ、――ん、……ふ、ぅ……」
ポトムリはサージェスの頬へと手を伸ばし、その唇に柔らかく口づけた。キスはサージェスの好きな愛情表現だった。
何度か重ねて口づけたあと下唇を優しく食み、ほんの少し開いた隙間へと舌を差し入れてサージェスの厚い舌と絡める。サージェスも堪らなく上がってしまう嬌声を喉から上げながら、ポトムリの舌に舌を合わせた。
「は、ん、ぅんっ、……ん……っ」
キスを深くしながら、ポトムリの手がサージェスの乳頭を弄る手を上から掴んで更なる刺激を与える。腰の打ち付ける動きもやめない。ポトムリの薄い腹を、快感を訴えるサージェスの陰茎が振れて叩く。
ポトムリはサージェスの舌を甘く噛んだ。瞬間、サージェスの身体が大きくびくりと跳ね、咄嗟にポトムリの腕を縋るように掴む。
「んッ、んん、ァ、――あ……ァ……っ!」
「……っ、」
サージェスが達する際の食いちぎるかのような強い体内のうねりに、ポトムリは歯を食いしばるも呆気なく体内で射精させられた。
痙攣するようにひくりひくりとサージェスの身体が揺れる。何度かに渡ってどろりと体外に放出させられたサージェスの精液は、サージェスの腹とポトムリの腹を汚していた。
名残惜しそうに唇を軽く吸って、ようやくポトムリが身体を離す。赤く火照り淫靡な香りを漂わせるサージェスの姿態を見下ろして、なんだ、と声を上げた。
「イけたではないか」
「っ――し、仕方ないだろ! ポトムリのせいだからな!」
「ああ、私のおかげか。よくこんな厭らしい身体を作り上げたものだ」
科学者の端くれとして誇らしいな、と自画自賛したポトムリにサージェスは半眼になる。そしてもういい、と再びポトムリのベッドに沈み込んだ。
「なあ、もう今日は遅いからここで寝てもいいだろ。こんな時間になったのもポトムリのせいだし」
「そもそもお前が勝手に私のベッドで寝ていたのが悪い。というか、寝るのは良いがその前に始末をしろ。精液まみれの身体で寝るな」
「堅いこと言いっこなしだぜポトムリー」
「堅いことではない、明日腹を下して痛い目を見るのはお前だ。そのシーツを洗わされるのもお前だ」
「……俺が洗うのか」
「そうだが」
「…………」
当然のように言ったポトムリにサージェスは眉を顰め、はあと溜息をついて渋々起き上がった。
「……一緒に風呂に入るか?」
「まだ足りないと言うのか?」
「分かった分かった、一人で入ってくるよ……」
急速に襲ってきた睡魔を必死に堪えながら、ポトムリに抗えないサージェスは重い身体を引きずって風呂場へ向かった。
――そのまま風呂場で眠りこけたサージェスをポトムリが今度こそ力づくで叩き起こすのは、また別のお話。
2014.04.10
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