即興二次小説ログ
サジェポト/人質大作戦


GOサジェポトとマジソン


 サージェスは悩んでいた。道端でたまたま拾った落し物のその持ち主。相手はすぐに分かった。
 何の変哲もない、ただの筆記具だ。しかしこれをサージェスはポトムリの部屋で何度も見ていた。名前などは入っていないが、そんなものなどなくてもわかる。
 だがしかし、サージェスは生憎と、現在絶賛ポトムリと喧嘩中だった。
 喧嘩と言ってもサージェスは特にポトムリを嫌う理由はない。ポトムリにとてもとてもありがたくない勘違いをされ、それがひたすらにこじれていっている。なぜこんなことになってしまったのかという理由やきっかけについては1000パーセント騎士団所属の軍師の好奇心が引き金だったりするのだが、今それは置いておく。
 サージェスは大きなため息をついて筆記具を手で弄んだ。
 これを持ってポトムリの部屋に行ってもいいのだろうか。また門前払いされるんじゃないか。むしろ門前払いしてくれるならいい。顔も合わせずに居留守をつかわれたり、扉越しに帰れと言われるだけで取りつく島もないかもしれない。
 それでもやはりこれはポトムリの愛用していた筆記具だ。サージェスは悲しみに包まれたまま、とぼとぼとポトムリの部屋へと歩いた。
 しかし、ポトムリの部屋にたどり着く前にサージェスの前に人物が立ちはだかる。
「サージェス、それ、ポトムリのものだろ?」
「マジソン」
 サージェスの手中を指さして聞いてきた軍師は常に楽しそうだ。小さく首を傾げてサージェスに聞いてくる。
「そうだが……、ポトムリに何か用があったのか? 届けてくれる申し出だとしたら、悪いが俺が、」
「違う違う。そこはサージェスに任せる。でもな、お前たち今喧嘩中だろ? すんなり渡せるかな?」
 そうなったのはお前のせいなんだが。サージェスはそうとは言わず、含みのあるマジソンの言い方に眉をひそめた。
「それについては俺も悩んでいたんだが……、それでもやっぱり俺はポトムリと話をするきっかけを作りたいし、返さないといけないし」
「それなら提案があるんだ。いいか……」

 意を決してサージェスはポトムリの部屋の前に立つ。
 コンコン、と軽い音を立てて扉と拳が鳴る。はい、という声が扉の向こうから聞こえた。ポトムリだ。
「お……、俺だ。サージェスだ」
「…………。何の用だ」
 一気にポトムリの声色が変わった。扉も開かない。しかしここでめげてはならない。サージェスは今しがたマジソンに教えてもらった「作戦」を実行した。
「ポ――ポトムリ、お前のペンは俺が預かった! 返してほしくば俺と仲直りしろ!」
 題して「人質大作戦」だそうだ。愛用していたペンなら釣れてくれるかもしれないだろ、とマジソンは言っていた。
 ――が。
「……。そんなものくれてやる。そいつがなくても代わりはあるからな」
 薄く扉を開けて目だけをのぞかせたポトムリがそう言って、ぱたん、と扉を閉めた。
 人質大作戦、失敗である。


2014.04

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