アルファこそが忠誠を誓う相手だと半ばベータに対する反乱からゴッドエデンへ赴き単独行動をした件について、ベータに見つかってしまったところまではまだ良かった。
しかしその後のサッカーバトルにて松風天馬に点を許してしまったこと。それが何よりもベータの怒りに触れてしまったらしい。
「ムゲン牢獄送りになることろを助けてもらったんですよ? もっと嬉しそうな顔をしてくれてもいいんじゃないですかぁ?」
くすくすとベータが笑う。それはザノウを恐怖に陥れた。
トウドウの前にてエイナム率いるチームA5の減刑を求めたのはベータだった。それは一見優しさのようにも感じられる。
しかしチームA5の単独行動を良しとしていなかったのは明らかで、ベータは特に点を許すという敗北に決定的な要素を与えたザノウに対して怒りを覚えていた。
エルドラド施設にて訓練中、何者かからの強制転移を受けたとき、ザノウは己の身に起こることを覚悟した。予想通り、先程から姿の見えなかったベータがそこにいた。
「こんにちは。練習中にごめんなさい」
こつこつと、無機質な床と踵が音を鳴らす。強制転移された先はまだエルドラドの建物の中であった。同じような部屋がいくつもあるエルドラドでは一見してどの部屋であるかは分からないが、窓がひとつもなく、モニターの光源のみがある暗い部屋は紛れもなくエルドラドの特徴だ。
ザノウは唐突に練習中に転移されたため、キーパーグローブを外して顎に流れた汗を拭った。運動で噴き出た汗と、それに少し混じる冷や汗だ。
ベータは微笑みながらザノウの前に歩み寄り、どこからともなく手のひらにスフィアデバイスを取り出す。サッカーボール大のそれは光を湛えベータの手の上で浮かんでいる。
「ねえ、ザノウ。どうして呼ばれちゃったか分かります?」
スフィアデバイスをくるくると弄びながらベータは聞く。ザノウはすぐさま浮かんだ答えを震えそうな唇に乗せた。
「……松風天馬に敗れたから、だろう」
「えらいえらい。ちゃんと分かってますね」
ベータは嬉しそうに微笑む。可憐な少女にしか見えない彼女の本当の恐ろしさをザノウは重々理解している。微笑めば微笑むほど、身体に刻まれた恐怖は増した。
試合中に激昂し言葉づかいが荒くなることも多いベータだが、真に残虐で恐ろしいのは、こうして丁寧かつ可憐に語る彼女のほうだ。
スフィアデバイスが湛える光が不穏で、ザノウは背中に流れる冷や汗が止まらない。ボールに使われるそれで肉体的罰を受けるのだろうか。もしくは、ひたすらにネチネチとベータの罵倒を受けるだけで済むだろうか。
どちらも御免したいが、どちらかを受けなければならないのなら、無駄に強靭にできているこの身体を痛めつけられるほうがましだ。
「あらあら、なんだか失礼な妄想しちゃってません? このベータちゃんがザノウを傷つけるとかぁ」
「ッ……そんなことは、」
「隠したってムダですよぉ。でも大丈夫、ひどいことはしませんから」
「うわ……ッ!」
ベータがスフィアデバイスを操作した。すると現れた金の輪が、ザノウの身体を二本の腕ごと腹部で締め付ける。上半身を拘束されてザノウは後ろに尻をついた。
身体を縛られて「ひどいことはしない」なんて、誰が信じるか。床に倒れ込んだザノウの前に立ったベータが楽しそうに見下ろす。
「痛いのとかそーいうの、嫌でしょう? だから、気持ちよく躾してあげちゃいます」
「どういう、……!」
「もう二度と俺に逆らえないようにしてやるって言ってんだよ。なァ、男はこういうのに弱いんだろ?」
予想もしていなかった場所にベータが触れたので、ザノウは硬直した。
プロトコルオメガのユニフォームとして使われている特殊な靴の固い底が、ザノウの足の間に触れている。男にとって急所である場所だ。
踏みつぶされる。恐怖でザノウは目を見開く。硬質のヒールがザノウの肉茎をユニフォーム越しに撫で上げてきたので、信じられない気持ちで息を呑んだ。
「や……、やめッ……」
「あぁ、大丈夫大丈夫。痛いことはしないって言ったでしょう?」
しかしベータは一転してそう笑った。ザノウに顔を近づけ、最上級の微笑みを送ってくる。
「気持ちよくなっちゃいましょうね。私の顔を見たらすぐに思い出しちゃうくらい気持ちよくなって、逆らえない身体になっちゃいましょうね」
「ベ……、ベータ……!」
肩に触れてくる細くて折れそうな指の持ち主が発した言葉は、ザノウがすぐに理解できるものではなかった。
「ほらほら、もうこんなになっちゃってますよ? ホント、男の子って扱いやす〜い」
「ぐ、ッ……!」
ザノウは身動きが取れないままベータによってユニフォームを破かれ、身体を弄ばれていた。
鍛え上げられた胸元と、腰から太腿までを曝け出されている。少女の前であからさまに乳首と性器だけを露出させられている格好に羞恥で死にたくなる。
少女の両足よりも太い太腿の間にベータが入り込み、左手で肉茎を、右手で乳頭をいじくりまわされる。信じられない光景にザノウは己の目を疑うも、性器に触れるは確かに細く白い指で、くすくすと笑うは汚れのない少女のようなベータだ。
ザノウの両腕に金の輪が食い込む。それは逃れようととすればするだけザノウを強く締め付けた。
「ザノウのって、すっごく大きいから楽しーい。ずっと思ってたんです、プロトコルオメガで一番立派なのを持ってるのは誰かなって」
オルカはガリングかなって言ってたけど、やっぱりザノウが一番かしら? と、くすくす笑うベータは心底楽しそうだ。
ベータの手に余っているザノウの性器が、情けないほどに硬さを持って頭を擡げて行く。くりくりと人差し指と親指で摘ままれた乳頭はぷくりと尖り、桃色の爪先で弾かれて震えた。
「やだ、女の子みたいなおっぱいになっちゃいましたよ? かわいー」
「馬鹿なことは止め、ッア……!」
「馬鹿なのはどっちです? ザノウ」
抵抗の言葉を発すると、ベータの細い指がザノウの肉棒をギリギリと握った。握りつぶす勢いのそれにザノウは怯み、首を振る。
「すまないッ、すまなかった……! ベータッ!!」
「ほんとに分かってます? ザノウのせいでマスターに怒られちゃったんですよ」
女の子らしく少し伸びて整えられた爪先がザノウの鈴口にグリ、と押し入れられる。乳頭を摘まんだ二本の指も爪を立て、引きちぎるような勢いでギリギリと引っ張られる。
あまりの痛みにザノウは瞳を潤ませ、歯を食いしばった。ベータが冷たい視線を送ってくる。
「俺が悪かった、だから、ベータ……!!」
「“申し訳ございません、ベータ様”でしょう?」
「もうしわけ、ございませんッ……、ベータ様……!!」
「はい、よろしい」
必死に懇願するとベータはすんなりと手の力を緩めた。そうして、痛みで完全に萎えてしまったザノウのものに再び愛撫を再開する。
「すっかり小さくなっちゃって。ううん、全然小さくないんですけどぉ! ふふ、かわいー」
「くッ、ァ……っ」
まさに飴と鞭のようだった。先ほどまでの迫力はどこへやら、ベータは再び可憐な少女の顔をしてザノウのそれを優しく弄んでいる。細い指先をザノウの鈴口へやって、先走りの液体を指先につけてはそれでぴたぴたと優しく叩いてくる。
ベータはどこまでもザノウを煽った。異性に明らかな意図を持って性器を愛撫されているというそれだけでザノウにとってはたまらないというのに、細い指先でザノウにはできないような愛撫をしてきたり、快感を感じられるなんて考えたこともなかった乳頭をコリコリと執拗に弄ってくる。
甘くくすくすと微笑みながら見上げてくるベータの瞳がいつ灼熱の炎を纏うか、先ほどの変貌にあてられて抵抗らしい抵抗もできない。もっとも、身体は縛られていて身動きが取れないのだが。
「すっごーい、男の子ってここまでおっきくなるんだ〜。ザノウ、気持ちいいですか?」
「は……、ッ、」
「気持ちいいかって聞いてんですよ」
ザノウが返事に渋るとベータの瞳が蔭る。思わず息を呑んで頷くとベータは満足した様子でにっこり笑った。
「ねえ、ザノウ。これからあなたに選択肢を与えちゃいます」
いまだザノウの猛ったものに指を這わせながらベータが言った。その先の言葉に予想はつかないが、ろくでもないことは分かる。
ベータはにっこり笑って指を一本立てた。
「ひとつ、私の目の前でおもらししちゃう。ふたつ、アルファの目の前でおもらししちゃう。どっちにします?」
「……な、……何、」
「男の子が一番恥ずかしいことって何だろうって、私、考えたんです。そしたら、やっぱり子供らしくおもらししちゃうことかなぁって!」
かわいらしい少女の口からそんな単語が出てくることが信じられない。次から次へとやってくる現実とは思えない現実にザノウはもう頭がいっぱいだ。
しかし変わらずベータは楽しそうにくすくす笑っていた。
「ただこうやって抜いてあげるだけでも良いけど、やっぱり決定的なものが無いと、ザノウ、分かってくれないでしょう? だからおしっこしたら許してあげちゃいます。ベータちゃん、やっさしーい」
「――ふざ、」
ふざけるな、と言おうとしたところで、ベータの手が不穏に動く。与えられた痛みを思い出してザノウはひゅっと息を呑み、言葉を飲みこんだ。
「いいじゃないですか。減るもんじゃないし、むしろ排泄できちゃって好都合でしょう? 問題は誰の目の前でするかってことですけど」
ベータは悪戯にザノウの鍛え上げられた下腹を優しく押した。筋肉で硬いそこは、確かに筋肉の下に尿の溜まった膀胱があった。
ふと思い出す。訓練中にここに連れ去られたことと、最後に排泄したのがもう何時間も前であったこと。意識をしていなかった尿意を自覚させられてザノウは呻いた。
だが、しかし。少女の目の前でみっともなく排泄するのも、敬愛するアルファの前で子供らしく漏らすことなども、どちらも比べようもなく耐え難い。
「ザノウ、結構溜まってるみたいですね? ふふ、今ここで出しちゃってもいいですよぉ。そしたらアルファの前でおもらしするのもナシにしてあげちゃいます」
ベータはザノウの肉棒を弄びながらも、下腹をぐっ、と押す。射精がしたいのか排泄がしたいのかもよく分からなくなる刺激。しかしザノウはひたすらに耐えるように目を瞑る。
「ザーノーウ」
ひたすらに我慢しているザノウに、ベータはとびきり甘い声で名を呼び囁く。
「よく考えてください。おしっこするだけで解放されるんですよ? 何も傷つけずに、迷惑もかけずに終わるんですよ? 早くしちゃったほうが身のためですって」
「しかし……、こんな、こと」
「ベータちゃんに見られながらおしっこできるんですから、むしろご褒美と思ってくれちゃっていいんですからね」
甘い吐息でそんなことを言われていると、まるで催眠にかけられているような気分になってくる。正気を保とうとする自分がどこか遠くへ行くような気がする。
トドメのように、ベータが優しく指先でザノウの鈴口を爪弾いた。
「ッ――、は……!」
「きゃっ」
――どくり、とザノウの太幹から精液が垂れた。勢いを持って吐きだされたそれはベータの手、そしてユニフォームを汚し、どろりと付着する。
何度かに分けて射精された精液は量が多く、そして濃い。粘度のある体液を全て放出させると、ザノウは深く眉間に皺を寄せたまま、その先に遅い来るものに耐えた。
「あはっ……、出ちゃいます……?」
「く……そ、見る、なッ……!」
しかし、射精の後の弛緩した身体では耐え切れなかった。ベータの好奇に満ちた声に囁かれては尚更だった。
痛いほどの視線をあらぬ場所に感じながら、ザノウはそのまま放尿した。
しょろろ、と耳を塞ぎたくなるような音がする。ベータの手の支えを借りたまま、トイレでもなんでもない場所で、磨かれた床に放尿するというありえない状況に全てがどうでもよくなる。
予想よりも長い放尿を終えたのを見届けて、ベータはザノウの性器を二、三度振った。鈴口から垂れる尿を全てふるい落として、はあ、と甘い息をつく。
「よくできました、ザノウ。ちゃんとおしっこできましたね」
少女の甘い声とご褒美の言葉、それが試合中などであればどれだけ良かったか。強い雄の香りと尿の匂いの充満した部屋で聞く言葉ではない。
強すぎる快感で朦朧とした意識に沁みこむベータの声はザノウの身体の深くに刻まれた。
「ザノウ、これでゴッドエデンのことは許してあげちゃいます。これからもベータちゃんの下で、ちゃんとゴールを守るんですよ」
「はい……、ベータ、さま」
ベータの言葉にザノウはゆっくりと頷いた。
2014.02.18
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