◎にゃんにゃん拓三


にゃんにゃんねた




〜拓三の場合〜

「そういえば、神童のその耳と尻尾、リュートに似ているな。猫を飼ってる人間として、猫耳を生やした感想はどうだ?」
「何の感慨もありません……」
 神童は、心なしかはしゃいでいる三国のよく分からない質問に答えて小さく息を吐いた。
 三国は完全に今の神童を新しいペットの枠に入れていた。なんたって、猫耳に尻尾だ。幸せそうな三国の顔を見ると怒る気持ちも失せる。
「ほら、ねこじゃらしとかどうだ? 気になるか?」
「気に……なり……ます、けど、待ってください三国さん、俺は別に猫になったわけじゃありません
「違うのか?」
 否定すると三国の眉も下がる。どこからとってきたのか、ねこじゃらしを掴んだ手も止まった。
「猫耳と尻尾が生えただけであって、別に完全に猫になったわけじゃないんですからね。俺は俺ですからね」
「それは分かってるよ。神童に猫耳が生えたからいいんだろう」
 にっこりと三国は神童に微笑む。これはもうだめだ。何を言っても聞かない顔だ。
 三国はねこじゃらしを振りながら神童に手を伸ばしてきた。神経も通っている猫耳をふに、と掴まれて、ぎゃっと声を上げる。
「さんごくさんっ」
「すごい、ふわふわだな! 本当に猫だ!」
 好きな人に頭を撫でられているという現実が、こんな非常事態にそんなものを撫でて遊ばないで欲しいと叱る気持ちが失せる。
 ましてや三国のこの嬉しそうな顔だ。こんな顔をされて断れるほど神童は強くない。
「……、もう……」
 しばらくの葛藤の結果、神童は三国の好きにさせてやることにした。
「何か言ったか? あっ、尻尾も撫でていいか?」
「いいですよ、好きにしてください……」
 大きくため息をついて、神童は三国の腕に尻尾を絡ませた。

02/25 18:17

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