バタンっと突然突き破られたドアに言葉を遮られた

肩を震わせながら恐る恐るドアに立つ人物を見て目を丸くした

それと同時に逃げ出したい気持ちで一杯になる

「‥こんなとこにいやがったのか」

怒りに満ちたその顔は段々と距離を縮める

「話がある。ちょっと来い」

強い力で無理矢理ドタチンから引き離される

「いっ‥た‥」

痛みに顔をしかめながら抵抗出来ずにそのまま準備室を出る

悲しみと悔しさの混じったドタチンの瞳を見つめながら‥


連れてこられたのは男子トイレの個室

体制を変えられると壁に押し付けられ自由を奪われる

「なんなんだよてめぇ‥!いきなり俺を避けやがってよぉ‥!」

大きな怒声に耳がきんきんと音を立てる

「俺がお前に何したってんだよ、あぁ‥!?」

掴まれている手首が悲鳴を上げる

「シズちゃん‥痛い‥っ」

「何か言ってみろよ!!」

「‥っ‥」

言葉につまり俯いてしまう

何から話せばいいべきなのか

いや、話していいのだろうか‥

頭の整理が出来ないまま"ごめん"とだけ呟いた

「‥この糞ノミ虫が」

トンと肩にシズちゃんの頭が乗る

「この2週間‥俺がどんな気持ちだったか‥」

苦しい想いをするのは俺だけじゃないって分かってた

わかってて‥避けた

「何なんだよ‥ちくしょう‥」

震える静雄の肩を優しく抱き締める

「ごめんねシズちゃん‥俺、怖かったんだ」

顔を上げずに 何が という呟きに静かに口を開く

「俺はシズちゃんにもっともっと‥って求めてしまってシズちゃんを縛ってるんじゃないかって‥」

想いが込み上げ声が震える

「シズちゃんに‥嫌われたくなかった」

「‥臨也」

やっと肩から顔を上げると真っ直ぐ見つめられた

その眼差しに目を背くことができない

「俺が嫌うわけねぇだろ‥」

「だって‥シズちゃんあんまり喋んないし自分の意見言わないし‥」

「嬉しかったんだ」

「えっ‥」

まだまだ当てはまりそうな事が合ったが静雄によって遮られる

「俺が臨也に求められていることがすげぇ嬉しくてたまらなかったんだ」

「‥‥」

こんな事は想像していなかった

思いもよらなかった

俺はシズちゃんを必要としていて、シズちゃんは自分を必要とされることを必要としている

綺麗に絡み合っていたんだ

なのに俺は勝手に勘違いしていて‥

最低だな、俺 
「ごめん‥シズちゃん。本当にごめんね」

それでも互いの想いが通じた事にこれ以上とない嬉しさを感じていた

「お前は俺を必要としていればいいんだ。それ以外でも以下でもねぇ」

その言葉に見開いた瞳から頬に冷たいものが落ちていく

「うん。ありがとう‥シズちゃん」

「臨也、愛してる」

「俺も愛してるよ」

俺達って不器用だな‥って改めて実感した

でも、だから互いに引き寄せ合えるんだと今となっては思う

「ねぇ、シズちゃん。キスして」

そっと頬に触れると口を寄せ、重ねた

授業の始まるチャイムを無視して



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