▽ 臨也:不安定





















ごめん

ごめんな、臨也‥。



薄暗い部屋の中で
自分の腕にしがみついている恋人に向けて心の中で呟く

何度も、何度も。

もう半年近く外に出ていない

「‥臨也」

「なーに?」

「‥お前、もうファーストフード飽きただろう?久々に外食にでも行こうぜ」

この半年
近くのファーストフード店に電話で注文して玄関の前に置いてもらう、の繰り返しでろくなもんを食っていない

体力も無く、お互いに痩せていった

臨也から返ってくる返答は決まってるものの少しもの可能性を求めて問う

「‥いやだよ。」

不安と怒りが混ざったような暗くて低い声

さっきの臨也とは大違いだ

その瞬間、
俺の腕を掴む細い手にぎゅっと力が加わった

「シズちゃん。外は危険でなんだよ?」

「‥‥」

もう、聞き飽きた
何度聞かされたことだろう

「外なんか出ないでここに居ればずっとずっと一緒なんだよ‥?」

「‥別に外にでたって一緒だ」

臨也は俺達二人だけの空間以外を拒絶する

外に出れば、
俺がいなくなってしまう

誰かにとられてしまう

そういった複雑な感情が臨也をそうさせてしまったのだろう

暗闇に慣れきった瞳を臨也に向けると彼は震えだしていた

「‥ねぇ。どうして分かってくれないの?外は危ないって言ってるんだよ」

「‥‥」

「‥もしかしてシズちゃん。俺のこと嫌いになったの‥?」

震えが増し、腕に痛みが走り出した

「なんで‥なんで何も言わないの‥?だめだよシズちゃん。俺を嫌いにならないで‥捨てないで‥お願い‥どこにもいかないでよ‥!」

絶叫し、大粒の涙をぼろぼろ流して俺にすがりついてくるその姿は

とてつもなく痛々しかった

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だよ‥どこにも行かないで‥俺を独りに‥独りにしないで!」

外に出ようと誘っただけでこの乱れよう。

こいつがこうなったのは俺のせいだ

元から感情が不安定なこいつを愛した俺が悪いんだ‥

嫌だ嫌だと頭を押さえ込みうずくまる臨也をそっと抱きしめる

「‥ごめん。‥臨也、愛してるよ」

無表情、無感情でそう呟く俺は世界一最低な奴かもな

動く屍となった俺に残っているのは

こいつへの罪悪感

「‥俺も愛してる。シズちゃんは俺ので俺はシズちゃんの。離れることなんて許されないんだよ‥?ずっと一緒なんだよ‥?」

俺は一生こいつの側にいてやるんだ



「‥あぁ」

それがせめてもの償い


なにか冷たいものが額をつたった気がしたが

屍となった俺には気にもしなかった 

いや、できなかった




こういった依存も自分は好きです。



  

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