(ピンポーン)

玄関から呼び出しの鐘を受け、動かしていた指を止めるとめんどくさそうに玄関の扉へと手を伸ばした

「こんばんは」

そこに立っていた人物は俺の愛しい存在

紀田正臣

「紀田くん‥!とうとう‥」

「頼まれた薬を届けに来ただけです」

「え、俺に会いに来てくれたんじゃ‥」

「違います」

一時期舞い上がった気持ちもこの一言によって音をたてて沈んでいった

「うん、そっかぁ‥」

「‥新羅さんがこの薬をって」

寂しげに俯く臨也をよそに正臣はたんたんと用事を済ませようとする

目の前に差し出された袋を見る度思い出したかのように袋を手にとる

「‥ありがとね」

「いえ。‥何の薬ですか?」

「ん‥ちょっとね」

この時、正臣の顔が曇ったかのように見えたのは気のせいだろうか

「‥じゃ帰ります」

「あ、紀田くん」

明らかに不機嫌そうなまま背を向ける彼の手をひき引き止める

「‥なんですか?」

「俺達ってさ、付き合ってるんだよね」

「まぁ‥そうですけど‥」

紀田くんと付き合ってもう3週間がたったことだろう

しかし未だに正臣の口から「好き」だの「愛してる」だのと、愛の言葉を交わしたことは一度もない

デートだってまだ一度だけ

まぁその一度は俺が無理矢理連れていったものだけど‥

「ほんとに俺のこと‥好き?」

「‥‥」

「愛してくれてる?」

「‥‥」

問い掛けても俯いたまま答えようとしない

そんな正臣に目を細めると、静かに手を離し冷たく言葉をはなった

「そう‥。もう俺ら終わりにしよっか」

「え‥」

「付き合って3週間になるのに"好き"って言ってくれないし、第一紀田くんは俺のこと好きじゃないみたいだしね」

「ち、ちが‥」

「このまま続くとも思えないし」

焦り戸惑う正臣を無視して、一方的に言葉をのべていく

ち、ちがっ‥
俺は臨也さんのこと‥

「今日はありがと。またね、紀田くん」

口角はあがっているが笑っていない笑みを残すと背を向け部屋へと歩きだす

「まっ‥待ってよ臨也さんっ!」

震えて上手く出ない声で叫べば靴のまま部屋に上がり臨也にすがりついた

「やめ‥ろよ‥勝手に‥勝手に別れるとか言う‥なよっ」

「なんで?別にいいでしょ、紀田くんは好きじゃないんだし」

先ほどよりも低く冷たい臨也の声は正臣の背筋をぞくっとさせる 

「早く帰りなよ。俺はこうみえて忙し‥」

「好きですよ‥!」

叫んだ声が部屋一面に響き渡る

「好きすぎていつも頭のなかは臨也さんのことだけで!でもそんなこと恥ずかしくて言えるわけもなくて‥。臨也さんと付き合えたことだって最高に幸せですよ!」

目を丸くし固まっている臨也を前に止まらなく次々と溢れでる涙をみせながら正臣は叫び続ける

「デートだってほんとは毎日したいけど臨也さんといるだけで‥話すだけで心臓が止まっちゃうほどバクバクしちゃうし!好きで‥好きで好きすぎて‥どうしてくれるんですか‥っ」

そのまま崩れるように床に座り込むと必死に声を殺しながら涙を拭い続けた

自分が何を言っているのか分からない

もしかしたら今ので臨也さんは俺に呆れたかもしれない

次々と頭の中が不安の色で染まり、一層涙が止まらなくなる

「‥紀田くん」

臨也は正臣と同じ高さに膝をつくとにこっと笑った

「はい、紀田くんのデレ頂きました♪」

「‥‥‥は‥?」

「いやぁ〜紀田くんがそんなに俺のことを想ってくれてたなんてねぇ。この照れ屋さんっ」
 軽くデコピンをしてくる臨也は先程までの態度とはまるで別人のように、満面の笑みで笑っているではないか

「い‥臨也さん」

「ん?」

「もしかして‥からかったんですか‥?」

「うん♪」

「なっ‥ななななな‥!?」

あんなに止まらなかった涙も止まり、徐々に赤に染まっていく

「だって紀田くん、こうでもしないと言ってくれないでしょー?」

「さいってー‥。さっきの全部嘘ですから!忘れてください!」

「だーめっ。」

とにかくこの場から消え去りたいと後ずさる正臣を優しく抱きとめると、額をすりよせた

「この俺が紀田くんを手放すわけないでしょ?」

「‥っ」

「俺も愛してるよ」

「‥っっ」

「紀田くん?」

「お‥俺も‥です‥」

「くすっ、これからはもっとデレてよ?」

正臣は言葉を詰まらせたようにすると、臨也の胸に顔を埋め小さく呟いた

「え?なに、聞こえない」

「っ‥何でもありません!早く離れて下さい」

「あー紀田くんが冷たいー」

だって、簡単に愛の言葉を吐き続けたら元には戻れない気がして‥

こんなこと、口が避けても言わないけど

まぁ、1日1回これだけは言うようにしてもいいかな‥


   ((愛してる))





落ちがよく分からないw

ツンデレは神だと思います











 
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