「てめぇ、殺されてぇのか!」

「ひぃっ!ごごごごごめんなさっ」



もしも王道君が地味で平凡で気弱ないじいじっ子だったら。
【不良編】




寮に着くと、寮の管理人から説明を受けたが、また別の思案に気を取られ聞いていなかった。
自己嫌悪に苛まれながら、割り振られた部屋に辿り着く。
ネームプレートを確認すると、自分の名前と、もう一人、源静(みなもとしずか)と刻まれていた。
人見知りが激しい光は、それだけで心臓がバクバクし、ドアノブを捻るまで5分以上深呼吸を繰り返していた。

そして意を決し、扉を思いっきり押し開けると

ゴン!

と鈍い音がした。
恐る恐る、ドアの内側を見ると、額を赤くした般若がいた。

「ひいいいぃぃっ!」

急いで扉を閉めようとすると、男の手でそれは阻止され、光は首根っこをつかまれるとズルズル部屋に引きずり込まれた。
ソファに投げ飛ばされ、それでも尚逃げようとしたところ――

「てめぇ、殺されてぇのか!」

冒頭に至った。

光より一回りも二回りも大きい体つき、金に近い茶髪に長い襟足、耳たぶに夥しい数のピアス、そして極めつけは端麗な強面。

絵に描いたような不良を前に半泣きになりながらも必死の謝罪と、転入生であることを説明すると納得したのか、少し気が収まったように見えた。
が、

「今日からお前は俺の奴隷だ」

気のせいだったようだ。



男は源静という清楚な名前とは真逆の、学園一恐れられている不良であると光が知るのはもう少し先のことだった。





不良フラグ、消滅?

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