源は困惑した。

最近転入してきて同じ寮部屋になった桜藤光という人物に。



もしも王道君が地味で平凡で気弱ないじいじっ子だったら。
【不良の場合】




初対面は最悪だった。
一人部屋で悠々自適に生活していたのに、転入生が来たことによって二人部屋になると言われ苛々していた。
元来誰かと生活を共にする、というのは絶対無理だと自覚まである性分だったので、入学当初から同室者を脅しては追い出し、ようやっと暗黙の了解で一人部屋を獲得したのだった。

(殴るか?それとも犯すか?)

同性愛の巣窟とされるこの学校の特色にまだ染まっていない転入生なら、十分脅しになるだろう、と源は考えた。


そうして転入生が入寮してくる当日、タバコを買いに部屋を出ようとした時、件の転入生に扉をぶつけられた。
完全な不可抗力で、偶然が重なって起きた事故であったが、虫の居所が悪かった源にはそれは起爆剤になった。

ソファに投げ飛ばし、とりあえずぼこぼこに殴ろうと臨戦態勢に入ったが、転入生は可哀相な程怯え、ひたすら謝罪を繰り返していた。

「ごめんなさっわざとじゃ、ないんです!本当ですっごめ、なさいっ」

その態度を見て源は、加虐心を刺激された。

「今日からお前は俺の奴隷だ」

そうして身も心も奪ってやろうと押し倒した。



(そうだ。俺はこいつを虐めたいと思ったし、学校でどうなろうが知ったことかと思ってた、のに)

「ぁ…ご、め…なさ…」

強姦されそうになり、恐ろしかったのだろう。
血の気を失い小刻みに体を震わせていた。
その姿に、源は言葉が出なかった。

無残にも引き裂かれたシャツ、足首にひっかかってるだけの下着、押さえつけられた手の跡、ぐちゃぐちゃな髪型。
この学校で強姦の類は珍しいことではないし見慣れていたはずなのに源は、目を背けたくなった。

そして、自分のブレザーを被せ寮まで抱き帰り、今現在、光のために湯を張っている。

(一体俺は何してるんだ…)

自分自身に呆れながらも、放り出すことはできなかった。



リビングに戻ると、光は不安そうにまだ震え縮こまっていた。
また、横抱きで脱衣所まで連れて行き、服を脱がすと自分も脱ぎ風呂場に入って体を至極丁寧に洗った。

次第に緊張の糸が切れたのか、湯船に浸かる頃には光は船を漕ぎ出した。
ぽんぽんと背中をゆっくり叩いてやれば、すぐに意識を手放したようだった。

自分の胸に体を預け、くうくう寝ている光を見てため息をつく。

(本当、何やってんだ、俺)

そうは思いながらも結局、パジャマを着せてやりベッドまで運び終えるまで世話を焼いた源であった。





不良ルート、突入?



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