「み、源さん」

声を上げたのは光ではなく、光を組み敷いていた男の一人だった。
男達の隙間から伺うと、確かに源が立っていた、が、その背後に大きい般若の顔を背負っていた。

「ど、どうしたんすか源さん」

その問いに答えるかのように、源は手前の男を吹っ飛ばした。

「がはっ!」

残る二人はそれを目の当たりにすると金縛りの如く動けなくなった。

「お前ら、俺の奴隷に手ぇ出すっつーことは俺にケンカ売ってるってことだよなあ?」

男達はぶんぶんと首を振り、いえ、いえ、違います、と必死に弁解した。

「目障りだ」

消えろ、源が吐いた途端、目にも留まらぬ速さで気絶した男を抱え逃げていった。
それと同時に光は、今度は自分の番だ、と真っ青になった。

「ぁ…ご、め…なさ…」

ほろり、と涙が一粒零れると、堰を切ったように次々と溢れ出した。
源はただただ、その様子をじっと見ていたが、不意に光に手を伸ばしてきた。

(殴られる…!)

ぎゅっと目を瞑った光に襲ったのは、痛みではなく浮遊感で不思議に思い目を開けると、源に横抱きにされていた。

(え?え?何で?)

躊躇うことなく、歩み出した源が向かった先は予想外にも二人の寮部屋だった。





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