「ぅっうっ……くっ……ん、ん」
「ふん、雌犬が。もっと腰をふれ!」

市は衣服を剥ぎ取られ、うつ伏せで尻を高く上げた状態で、男に貫かれていた。
あまり慣らしもせずに挿されたそこは裂け、血が流れていた。
男は遠慮なく動き、そして、市を罵倒した。
痛みで朦朧とする中で、市はようやくこの男が水神であると知った。
知ったところで市には謝罪も弁解もできず、今は先刻うるさい、と男に尻をぶたれたので声を抑えるため褥を噛みその律動に耐えるだけだった。

やがて男の腰はより激しい動きになり、ぱん、ぱん、ぱん、と皮膚がぶつかる音が部屋に響いた。
すると、髪を鷲掴みにされ、持ち上げられた。

「うぁ、あっあっんあ!」
「ほら、強請れ。俺の子種が欲しいだろ」
「あっあっう、あぁ!」
「早くしろ!殺されたいのか!?」

ばちん、と尻に平手打ちされた。
市は半分以上意識が飛んでいたが、殺される、という恐怖心で必死に応えを紡いだ。

「あ、み、水神、様のっ子種を、くださ、ください!お願いっします……!」
「今日はそれで許してやろう……ほら!孕め!……っ」

一層強く打ち込まれると、腹の中に熱いものが注ぎ込まれ、市の意識はそこでぷつりと途絶えた。
男、もとい水神は人形のようにぐったりと動かなくなった市を引きずり落とし、寝台にどかりと座った。
生来の癇癪持ちである水神は、気まぐれに自分が治める山を荒らしては幾度も人間に供物を要求した。
それは食べ物であったり、珍品であったり、様々な物が寄せられたが、こうして人間が来ることも珍しくなかった。

(この前は、女だったか……あまりにも泣き喚くからつい潰してしまったな)

水神は生贄となった人間の反応を見ては満足するまで弄んだ。
精根尽き果てるまで犯したり、家畜と称して四足歩行で生活させたり、そのどれもが残虐な最期を辿っていた。
今までの人間達を思い出し、高揚していた水神の視界に、気絶している市が入った。

(そう言えば、何百年か前に女を孕ませた時、発狂して自害したな……あれはつまらなかった)

青白い顔色の市を暫く見つめ、水神はふむ、と結論を出す。

(自害などさせるものか…この腹の虫が治まるまでは、な)

クク、と残忍な瞳で水神は笑った。



「お前はこれから俺の身の回り世話をしろ。それから許可なく彷徨くな、殺されたくなかったらな」

あれ以来、市は水神に恐怖を抱き、とにかく怒りに触れないよう懸命に献身的に尽くした。
掃除、洗濯、裁縫、まるで女中のような、否、それ以下の扱いではあったが、村にいた頃やっていたことと然程変わりなく、寧ろ力仕事ではなく良かったと思う始末だった。

「酒」
「はい、た、只今」

水神はとにかく自分の調子を崩されることを何より嫌った。
市は己の全神経を尖らせ、反射的に対応するよう心がけた。
仕事がない時は言いつけ通り、初めに通された豪華な部屋――恐らく、水神の寝室――から一歩も出ず、隅で小さくなり、それ以外では水神に陵辱の限りを受けていた。



水神に酌をした後は、いつも抱かれていた。
しかも、気分次第で押し倒されるので、市はいつも戦々恐々としていた。そして交わる時に必ず水神を欲しがるよう強いられた。

「どうしてほしいんだ?言え!」
「はっあっ水、神様のっ子種を、注いで、くださっは、僕をっ孕ませ、てくださぃ……っ!」
「この淫乱な雌犬がっ!」

どくん、と市の腹の中で生暖かい物が溢れる。
市はこの瞬間がとても嫌だった。
本当に自分が子種を強請る雌犬になったように思えるからだ。
しかし、それこそ水神の思惑だった。
この行為は正当なのだと市の体と心に刷り込んでいく。



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