今日は珍しく寝起きが良かった。いつもは三日毎ごとに刀剣男子が代わり番こで起こしに来てくれるシステムになっていて何度揺すぶられても起きられないのに、昨夜は割と早く床に就いたせいか自分からぱちりと目が覚めてなんだかすっきりとした気分を迎える。布団の中で丸まってふわふわとした余韻を心地よく思いながら、今日起こしに来てくれるのは誰だったかなーと思い出す。

ええと、昨日は前田くんが3日目を終えたばっかりだから、今日は多分平野くん。もうすぐ来る頃かなぁと時計を見計らって、密かな悪戯心から驚かせてやろうと企み布団の中に潜り込んだ。本当は毎朝私のお腹の上で跳ね回りやや強引に起こしにかかる今剣にしてやりたい意地悪なのだけど、ごめんね平野くん、君はいつも丁寧に私を起こしてくれるいい子なのに。ちょっとタイミングが悪かったかな!


とんとん、と控えめに戸を叩く音。きたきた。ワクワクどきどきする胸中でひっそり布団の中で息を潜めると、足音が段々近くなるので心拍数が増す。畳に膝をついたのを確認してから腕だけを伸ばし相手の二の腕を掴むとそのまま引き摺り込んだ。驚きすぎたようで声も出ない、瞠目した平野くんのくりっとした瞳と目があ、…あれっ?…平野くんじゃ、ない、


「あっ、え、骨喰?えっ、」


自分で引き摺り込んだものの、まさか骨喰だとは思わなかったしこの異様な近さに混乱してテンパってしまう。


「うわあああ、ごめんね!てっきり今日は平野くんかと思って…っ」

「…昨日遠征に行かせてただろう」

「はっ!」


そうだった。思い出したように顔を上げれば、彼が呆れたようにため息を零す。未だに近い距離のままお互いに動こうとしないので微妙な空気が漂う中、取り敢えず寝起きの顔をじっと凝視されてる骨喰の視線から逃れたくてくるんと寝返りを打ち背を向けた。


「起きないのか」

「もう少しだけうとうとする」


暫くこうしていれば布団を引っぺがすなり出て行くなりするだろうと思っていた私の予想は大いに外れてしまった。ぴとり、私の背中に隙間なくくっついてきた骨喰に思考が止まる。…ええっと、


「な、なに?」

「こうすれば起きるからと兄弟が」

「…ずおめ」


必然と前回の目覚まし当番が鯰尾だった時のことを思い出した。主!いい加減起きないとちゅーしちゃいますよ!と言いながら布団の中に入り込んできてべたべた引っ付いてきたのは記憶に新しい。


「でもまだ起きたくない!布団の中でうだうだするのー」


大人げなく駄々を捏ねてみる。だってここ最近朝早くから定例会議で政府に赴いたり新しい刀剣男士の捜索だったりその報告書だったりでずっと働き詰めだったんだもの、今日ぐらいはゆっくりとした朝を過ごさせてくれてもいいと思うの。だから相変わらず布団の中で膝を抱えて小さくまるまっておく。「朝餉に遅刻するぞ」と思いの外すぐ後ろで声がした。


「いいよ、あとでゆっくり食べる」

「俺が怒られる。いい加減起きろ、主」

「…」

「さっきまでは目もぱっちり開いていただろう」

「う、あれはー、ちょっとした悪戯心で」

「あと三数えて起きなかったら俺も次の策を取る」

「え?」

「ひぃふぅみ起きろ主」

「はや!まだ三びょ、わぁ!」


あっという間に過ぎ去ってしまった三秒にぎょっとして振り向くなり、突然起き上がった骨喰が私の上へと覆い被さり顔の横へと手をついた。ずっと私たちを覆っていた布団がばさりと音を立てて落ちる。

突然の事態についていけず目をぱみさちくりさせて固まっていると、骨喰が私の手を取り手の甲に唇を寄せてきたので変な声がでた。


「なっ、ななな、!」


赤面してわたわたする私なんててんで気にせず、私の前髪を掻き上げるとそこにも一つキスを落とす。さらりと掛かった彼の髪に距離の近さを認識してどきどきと心臓が煩い。


「ちょ、ちょっと待っ、」


顔を逸らそうとした所に、じわじわと頬の熱が増すそこにもちうと唇が触れたのでいよいよ逃げ出したくなったけどその前に骨喰が主と私を呼んだ。相変わらず近すぎるくらいの距離でも彼は顔色一つ変えずに涼しそうな表情をしている。透き通っていて綺麗だなと思っていた瞳が今私のことをじっと見つめていた。


「は、はい」

「これでも起きないというのなら次は吸うぞ」

「…す、すう?」


手の甲おでこホッペときたら次は順番的に唇なんじゃ…と思って身構えていたので予想外の回答にハテナが浮かぶ。理解していないと悟ったらしい骨喰が、私に気づかせるようにとんとはだけた胸元を人差し指で叩いたので、私は顔を真っ赤にしたまま起きますと速やかに言葉を発した。



「おはよう、主」


そこで一つふっと笑ってみせるからもう私の完敗だと思ってしまうのだ。


20160724




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