「みてみて哀しみの王。今日も夕陽が綺麗だよ」

「…うん。そうだね」


哀しみの王と手を繋ぎながら、哀しみの国を適当に歩いて散歩を続ける。相変わらず過保護で心配性な哀しみの王だけど。哀しみの王も一緒ならこうして出歩く事も許してくれる様になったので、前よりはマシになった気がする。以前は王宮の外に出る事すら危ない!駄目!!って禁止されてたからな…。竜巻に乗ったりグミみたいな奴にぶら下がって移動が必要な時は、基本私を抱きかかえて哀しみの王がキャリーしてくれる。その時の哀しみの王が少しクロノアに似ているし、凄く頼り甲斐があってカッコイイんだけど。素直に言ったらまたクロノアという名前に反応して拗ねそうだから胸の内に秘めておく。その辺にぶら下がってる仮面を手に取って顔につけてみたり、並んでる椅子へ適当に腰掛けてみたり。NPCである幻獣に触ろうとした時は、流石に怒られてしまったけど。基本は私がやりたい様にやらせてくれるから、変わったなと思う。彼はただじっと、私の挙動を見つめて見守ってくれていた。私が何処にも行かない様に。危ない目に合わない様に。手だけはしっかりと繋げられているのが可愛くて胸をキュンキュンと刺される。本当にベタ惚れだな哀しみの王。でもそろそろ夜になるらしい。私からしたらここはずっと夕方で、時間の感覚はイマイチ分からないんだけど。「そろそろ帰るよ」と促されて大人しく頷いておく。


「明日はさ、ここで一緒にお茶しようよ」

「…分かった」

「え、いいの?やったぁ」


ダメ元でしてみた提案がまさかのOKを貰えたので率直に喜ぶ。お茶菓子は何にしようかなぁと考えながら帰路に向かった刹那だった。少し強めの風に吹かれて、スカートがフワリと大きく膨らみ上がったのに驚く。


「わっ」


咄嗟に哀しみの王から手を離し、慌ててスカートを押さえ込む。ビックリした。今のは完璧なマリリンモンロー。おずおずと哀しみの王の反応を見てみると、長い両耳を持ち上げながら目元にぎゅっと強く押し当てているから呆気に取られた。哀しみの王、顔真っ赤だ…。


「哀しみの王?」

「な、なに、」

「もしかして、照れてるの?」

「ううう、うるさい」


ふいっ、て、そっぽを向いちゃう哀しみの王可愛いくな〜い?思わず胸がキュルキュルとしてお花をいっぱい飛ばしてしまう。ねぇねぇねぇと、真っ赤になった顔を覗き込もうとすればすかさず手の平で制されて。もう一度煩い!と怒られてしまい、私はアハハと笑い飛ばした。




×