目が覚めると知らない所にいた。鮮やかな夕焼けオレンジが綺麗で。ついポケっとしながら見惚れてしまう。夕焼けは人を懐かしくさせると、誰かが言っていた気がするけれど。どうしてこうも懐かしさを煽られるのか。理由もよく分からないまま、心地の良い風の音に耳を貸す。早くしないと夜になってしまうというのに、私は暫くその場から動けずにいた。ひゅうう、聞き覚えのある懐かしい音に吹かれ、瞬発的にとあるメロディが頭の中へと流れ込んでくる。これは…


「…哀しみの国だ」


ぽつん。1人呟いた声が懐かしい音に溶けていく。オカリナと、オルガンと、そして風の吹く音と。確かに聞き覚えのあるメロディにドキリとして、私はおもむろに立ち上がり辺りを見回した。そういえば、もう大分ここでぼんやりしていた気がするけれど、空は依然として鮮やかなオレンジ色を保ち続けている。散策も兼ねて、私は少し歩いてみる事にした。


「うわ、こっわぁ…」


落下防止の柵や仕切りも無い。少し見下ろしただけで広がる闇を捉えて、思わず足が竦みそうになる。もしも落ちた時の事を想像して震えながら、私はおずおずと後ろへ下がった。少し遠くの方に、見覚えのある幻獣達が一定の動きを繰り返しているのが見えて確信する。間違いなくここは哀しみの国だ。何でか良く分からないけど、私風のクロノアの世界にトリップして来たんだ!それならいずれクロノアたちに会えるんじゃないかと。単純な事を思い立ってわあとテンションが上がる。クロノアに会えるかも!いつ来るかなぁ。どうしよう緊張する。しかし、そうしてのほほんと構えている私に声を掛けてきたのは、主人公のクロノア御一行では無くて…。


「…きみは、だれ?」


聞き覚えのある声がして反射的に振り返る。うさぎの様な真っ赤な色をした目が、私の事をじっと捉えて見詰めていた。




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