実に人生3周目である。タイムマシンの造りが雑な所為で、タイムリープする先は案の定5歳のあの日からリスタートだった。でもなんか、もう、疲れちゃって。気付けば最初の1ヶ月はボーッと幼稚園生をしている内にあっという間に過ぎてしまったので驚く。え、もうひと月?早すぎる。この1ヶ月何をしたかと言えば、ネネちゃんのリアルおままごとに皆で付き合って、サッカーとか隠れんぼとか、ちゃんと子供っぽい遊びもして、たまにかすかべ防衛隊の一環として人助けや事件に巻き込まれる、みたいな。相変わらずの毎日。でも何にも気にせず、ただこうして子供らしく遊び呆ける毎日が、意外と楽しくて気楽だったりするのだ。…少しだけ。もう少しだけ、今はゆっくり休んでいても良いのかな、なんて。自分磨きはちょっと疲れちゃった。今は何にも考えずに、ただしんちゃんの隣に居て幸せを噛み締めていたい。そう、わたしの隣で死体ごっこに勤しむしんちゃんを眺めながら思った。


「しんちゃんしんちゃん、今日ね、クッキー焼いてきたの。食べる?」

「えー、オラ今日はチョコビのき、ぶ、ん」

「チョコビもあるよ」

「おわーっ!さすがナマエちゃん!ホントにそれ、オラが貰っても良いの?」

「うん!しんちゃんに食べて欲しくて持って来たの」


人生3周目。取り敢えず、しんちゃんにヒッソリこっそり貢いで生きていこうと最近は企んでいる。所謂推し活という奴だ。精神年齢は20代のままなので、幼稚園生活が兎に角暇に感じたわたしはお菓子作りをよくする様になった。ケーキにタルトにクッキー。しんちゃんに好きな物を与えて、デレデレに甘やかして、幸せそうなしんちゃんを傍で見ていたい期に入った事をここにお知らせします。

次々にチョコビを口の中へと放ってモグモグさせる。んーっ!幸せですなぁ、と、笑顔を崩すしんちゃんが可愛い。つられて表情を綻ばせていると、不意にしんちゃんがチョコビを摘みながら短く訊ねた。


「ナマエちゃんも食べる?」

「え、良いの?」

「だって元はナマエちゃんのだし」


あーん、と、わたしの口元までチョコビを運んでくれるしんちゃんにドギマギして思わずチョコビを落としてしまう。それを見たしんちゃんがもー、何してるのぉ、と嘆いたけれど。いやいやいや!好きな人からのあーんなんて無理!尊い!!


「いいよっ、自分で食べる!」

「良いから良いから。ほい、あーん」

「…あ、あーん」


おいし?としんちゃんが首を傾げる。本当は緊張し過ぎて味とか良く分からなかったんだけど。真っ赤な顔のままうんと頷いて、嘘をついた。



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