長かった様な、短かった様な。最早不思議な感覚だった。ついに人生2度目である花の女子校生。バイトが許される歳になったので、一生懸命貯めたお金で漸くメイク道具一式を揃えた。ナマエちゃんてば本当に美意識高いわねぇと、お母さんがパチクリと目を丸める横で一生懸命メイク動画を見て研究をする。全ては、可愛くて綺麗な女の子になる為。ナチュラルなカラコン、パッチリ二重、流行りのリップ。正直、前の世界線でもこんなに努力した事はなかった。凄いなぁ。女の子って本当に好きな人の為に変われるんだ。そしてその成果だろうか。この女子高生生活、何だか前よりも男子に優しくされるし話し掛けられる事が増えた、気がする…!やっぱり可愛いは正義なのかもしれない。そして何より自信が持てた。ワンチャンいける。これならしんちゃんに告白してOKを貰えるかもしれない。と、わたしは何度も何度もしんちゃんへと告白するシミュレーションを頭の中でイメージをして繰り返す。言う、言うぞ。明日、わたしは長年温めてきたしんちゃんへの想いをもう一度伝える。


「しんちゃん、わたしが昔した話覚えてる?」

「んー?何だっけー」

「…もし、わたしが綺麗で可愛い女の子になれたら、お嫁さんにして下さいって話」

「…うーん、そんな事もー、あったようなー?」

「そのっ、い、今のわたし、どうっ?」


ドキドキ。心臓が煩いし声が震える。不思議な事に、中学の間はしんちゃんが彼女を作らなかったから意外だったし、涙が出るくらい嬉しかった。キリキリと胸を締め付けられていたあの頃が夢みたいだ。もしかしたら、可能性あるかも、なんて。わたしはやっぱり調子に乗っていた。期待した。しんちゃんもわたしの言った事を覚えていてくれて、わたしの為に隣を空けてくれてるんじゃないか、なんて。そんな都合の良い妄想ばかりをするわたしはやっぱり甘かった。うーん、と、瞬時に眉根を寄せて顰めっ面をしたしんちゃんに察してしまって一気に肝が冷える。


「なんていうか、ナマエちゃんぽく無いよねぇ」

「…へ、?」

「前の方が良かったゾ」


呆然と固まってしまって動けないわたしを傍目に、しんちゃんがアデュー、と手を振って背中を向ける。わたしは、そのまま放心してしまい動けない。一気に地獄のどん底まで、突き落とされた気分だった。



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