嫉妬、羨望、失恋に絶望。5歳にして一度で一気に負の感情を覚えたあの時の事を、わたしは一生忘れられないのだろうと思う。普段しんちゃんにアタックして迫るあいちゃんを見るのとでは比にならない。照れ隠しに冷たく当たるのも、必死になってタミコさんを追い掛けるのも。両方しんどくて見ていられなかった。何かの間違いであって欲しい。このまま本当に、タミコさんが風間くんと結婚すれば良いのになんて。そうヒッソリと願ってしまうわたしは性格が悪いだろうか。大好きな人が幸せそうにしている未来を見て、5歳のわたしは絶望の淵から突き落とされた気分だったけれど。きっとこの時代のわたしはもっと辛くて切ない毎日を過ごして来たのだろう。最後に、未来の自分と会った時彼女に言われた。今にも泣き出してしまいそうな、憂いを帯びた顔でしんちゃんの後ろ姿を見詰めた後、わたしの目線に合わせて屈んでぎこちなく笑いかける。


「もっと頑張れば良かったな…。もっと、しんちゃんの隣に居れる様な女の子になりたかった」


片思いを拗らせすぎて、今更他に好きな人も出来ないんだと。未来のわたしはスッキリと晴れ渡った青空を見ながら呟く。「あなたは、後悔しない様にね」寂しさの詰まった声でそう言われ、つい反射的にしんちゃん達の方を見やった。大人になったしんちゃんと、タミコさん、それからもう一度未来のわたしを見て胸がじんと震える。この未来を変えたいと思った。この自分の不幸せな未来を、どうにかして変えてあげたい。大好きな人と結ばれたい。ただ、その一心だった。



×