パチリ。目を覚まして自然と隣を見やる。仮面を外したシンクがスヤスヤと寝息を立てており、わたしは朝から早々呼吸困難に陥った。シンクが寝てる、わたしの隣で。無防備に、素顔を晒して。うあああ、顔面を両手の平で覆って呻いていると、それにシンクが反応して身じろぎをした。ピタリ。瞬時に動きを止めて静止する。普通に考えたら未成年淫行で捕まってしまう、とまで考えて漸く我に返った。ふぅ、危ない。また取り乱してしまう所だった…。冷静を保つ為には、少し離れた所でシンクの寝顔を見守る必要があると判断して。そっとベッドを抜け出そうとした時だった。


「どこ行くのさ」


寝起きで掠れた、何処か愉しそうな声。掴まれた腕をぐいと引かれてシンクの胸に飛び込んでしまう。まだ何処か眠そうにした瞳が、至近距離でわたしの事をじっと見つめていて。つい火が付いた様に赤面。やばばばば。もうわたしの思考回路はオーバーヒートしていて、顔も身体も熱くてじっとりと汗が滲む。顔を上げる様に言われたけど、この状況が恥ずかし過ぎて。わたしは顔面をシンクの胸板に押し付けて固まった。


「…や、むり、です」

「へぇ、ボクの命令に反抗するの」


クスクスと、小さく笑いながらシンクの手がわたしの頭を撫でる。そのまま指先をわたしの頬に滑り込ませて、じっくりなぞる様に触れてくるから心臓がドキドキとした。「ほら、顔上げて」とか、何でそんな甘い声で囁くの。寝起きの所為もあるのだろうか。いつものシンクとはまるきり別人なので戸惑ってしまう反面、もう何回も妄想してきた展開とほぼ同じ事が目の前で起きていて昇天しそうになる。こんなに上手くいってて良いのだろうか。今にも覚めてしまう夢を見ている様で、少し怖くもなった。

おずおず。顔の熱が引いてきたので、ゆっくりとした動作で顔を上げてみる。それに気づいたシンクが柔らかく微笑んで、「おはよう、なまえ」等と言うので甘く胸が痺れた。なっ、名前…っ!初めて呼ばれた!!うわっ、うわぁ!なんて破壊力なんだ。思わずまた真っ赤になって固まってしまうと、シンクが可笑しそうに喉の奥で笑った。




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