最近、凄く戸惑う事があった。なんとわたしのティータイムにシンクが加わる様になったのだ。元々一人でお茶をするのも好きで、よく一人でティーセットを広げてのんびり過ごしていたのだけれど。ふらりとやって来てはわたしの正面に腰掛けてまたケーキ食べてるの、太るよ?なんて刺々しい発言をしていくシンクが確かにいた。え、信じられますか?因みにわたしは未だに信じられない思いでいっぱいで幻でも見たかなという疑惑に駆られています。…え?

でも実際、今だってわたしの正面にいてん、とティーカップを差し出して来るので、わたしは慌てて彼のカップに紅茶を注いだ。幻、では無いと思うんだけど…。考え事をするのにとても難しい顔をしていたのか。それを見たシンクがワンオクターブ低い声で「何?」と言うのでビクリとしてしまう。僅かにピリついた空気。…シンク、機嫌悪そう。


「悪かったねぇ、ディストじゃなくて」


しかしそんな事を言うのでつい笑ってしまうと、シンクが余計ピリついた様子で睨み付けてくるので慌てて口元を引き結ぶ。最近のシンクは、機嫌が悪いとディストさんの名前を出しがちだ。それにどんな意味が含まれているのか。つい自分の都合の良い様に妄想してしまう度、わたしは自分を戒めてそんな訳ないと言い聞かせる。


「…アンタってさ、随分ディストと仲が良いみたいだけど」


…けど?言葉の続きを待ってみる。しかしそのままこっくり黙り込んでしまったシンクに小首を傾げて考え込んだ。


「まぁ、気が合うと言いますか、一緒に居て楽と言いますか」

「…それに比べてボクと居る時は、ガチガチに固まって緊張してるし距離を置きがちだよね」


なんて、そんな事を言われて即座に心臓が反応した。心拍数を早めてドキドキと高鳴りだす。そっ、それは貴方の事が好きだからです!なんて、当然言える訳もなく。露骨に狼狽えてしまうわたしに、シンクは重たげなため息をついて。相変わらず機嫌の悪そうな声のトーンで、「そんなにディストが好きなの」と外方を向きながら言った。ディストさんが好き…シンクには、そう見えてるんだ。また鼓動が早くなる。「違います、」緊張からか、僅かに声が震えて胸がぎゅっと詰まった。わたしが好きなのは…そんな思いを込めてシンクを見つめてみるけれど、当然伝わる事なく顔を逸らされてしまう。…言えば良かったかな、今。なんて煮えきれない気持ちでいると、不意にシンクが「今日は一個しかないの?」と疑問要素控えめで訊ねてきた。彼の視線はわたしの食べ掛けのケーキに向いていて、直ぐにあぁと理解する。


「これね、最近出来たケーキ屋さんで買ったんです。今日は一人のつもりだったので、」


ひょい。シンクの手がわたしの使ってたフォークを取るのでつい言葉を止めてしまう。そんなわたしの事など気にも留めず、シンクがわたしのケーキをフォークで刺して口へと運んだ。そして微妙な顔をしてフォークを元に戻す。


「アンタの作ったケーキの方がおいしい」


ありがとうございます、今日も今日とて死です。




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