今日は、デート。ミョウジさんとお付き合いを始めてから一回目のデートだ。最近お互い仕事忙しかったから、恋人になって二人きりのデート、楽しみだなぁとゆるゆるにやける口元で待っていたらパタパタとミョウジさんが駆け寄ってきた。


「ご、ごめんね!野原くん、お待たせ」

「ううん、五分なんて遅刻に入んないし。でもミョウジさんが遅れてくるのなんか珍しい」

「えへへー、恋人になってから一回目のデートだって思ったら、昨日は緊張して中々眠れなくって」


う、なにこの以心伝心。あー、恥ずかしいな!ってほんのり赤みがかった顔を両手で覆うミョウジさんに胸キュン。なーんでこんなに可愛いのー。

行こっか。するりと自然に手を握るとびくりと跳ねるので俺までびくっとしてしまった。


「あ、えと、やだった?」

「…ううん、恥ずかしいけど、嬉しい、です」


恥ずかしいって、手を握っただけなのに。そっか、って。言った俺の心臓もドキドキしてきたから参った。ミョウジさん見てると俺まで初々しい気持ちになってしまう…浄化されてくなぁ。


「お昼、食べにいこっか」


お洒落なイタリアンの店に入って、メニューを開く。海鮮ドリアにしようかなと呟いたら、ミョウジさんが意外そうな顔して俺を見たのでうん?と首を傾げた。


「野原くん、納豆パスタがあるよ」

「えっ、ミョウジさん食べたい?」

「わたしじゃないよっ!野原くん納豆好きなのに、意外だなあって」


ちょっと慌てるミョウジさんが可愛い。とか思ってたら続け様にそう言われてふへへと苦笑い。


「納豆本来が好きっていうか、実はこういう納豆なんとかはあんまり食べないんだよねー、俺」

「え、そうなんだ…じゃあ毎日、わたしに作ってくれてたあれは?」

「あー、あれは、まぁ…ミョウジさんが少しでも納豆好きになってくれたらいいな、と」

「…でも最近作る回数減ってる、よね?」

「えーなーにー、ミョウジさん、ハマってきた?」

「違うよっ、急に作らなくなってきたからどうしたのかなー、って」


んふふ、また一つ苦笑い。この前同僚の田中くんに言われたことが引っかかって奥手になってたとは言えない。


「やー、そろそろ次のステップ進もうかなーとも思うんだけど、ミョウジさん無理してたらやだなあ、って」

「ぇ…」

「俺だって嫌いなピーマンあれよこれよって食べさせられたら嫌な気分になるし。ミョウジさんに無理強いしたくないなー、と」

「じゃ、じゃあ、わたしがいつまで経っても納豆好きにならないから愛想尽かしたとか、そういうんじゃない?」

「んな訳ないじゃん!ミョウジさんは俺が運命感じた子だよ?そんな理由で嫌いになるとかあり得ないし。見くびんないでよ」

「…うん、ごめん」


くすりと、ミョウジさんが小さく笑いながらどこか嬉しそうに謝る。最近なんか悩んでるなーとは思っていたけど、え、もしかして、俺が納豆弁当作らなくなったの、そういう理由と勘違いして?だから最近元気無かったの…?

聞いてみようかな、とか思ってたら、ミョウジさんがちょこちょこお冷を口にしながらあのね、と話出したので耳を傾ける。


「わたし、嫌じゃないよ。納豆はまだ好きになれないけど、野原くんと毎日ああやってお弁当食べるの、あの時間は凄く好き」

「え、ほんとに?」

「うん。無理な時は無理ってちゃんと言うし、とにかく今のところわたしは嫌な思いしてないよ!大丈夫」


ほっとした、んだと思う。ミョウジさんに理想を押し付けてるっていうのは分かってるし、それに付き合ってくれるミョウジさんは凄く優しくていい子で。もしミョウジさんの大好物がピーマンで、ミョウジさんが俺と同じように、同じよーにピーマンのオムレツとかピーマンの天ぷら作ってきたら、俺は受け入れられただろうか、と考えるとやっぱりミョウジさんは凄い優しい子で。あ、やべ重複しちゃった。


「野原くんはやっぱり、納豆そのまま食べれる子が、いい?」

「…まあ、理想はね。毎朝一緒に納豆かき混ぜたいなって思う。物心ついた時から、納豆とか、羊羹とか、あっつーいお茶が好きでさぁ」

「え、渋いね」

「えへへ、よく言われる。まぁ拘りなんだよね、俺からしたら。トマトには塩よりマヨネーズより砂糖ですって人たまにいるじゃん?これだけは譲れないってやつ。それと一緒で、俺にとって結婚に納豆は必要なんだぁ」

「…うん、そっかぁ」


ミョウジさんは、羊羹と熱くて渋いお茶とか、どう?聞いてみると笑って濁されたからんっ?てなる。


「…もしかして、」

「あっ、わたしラザニアにしよー」

「え、あぁ、うん」

「お腹すいたね」

「じゃあ注文しちゃおっか」


なんか話を逸らされた気がしてミョウジさんを見る、と、ニコニコ頬杖をつきながら俺のこと見るからちょっとびっくりして。ん?と首を傾げたら慌てて首を振る。


「なんか嬉しそう」

「…えへへ、野原くんとお出かけ、久しぶりだなって」

「うん、俺も嬉しいぞ」

「野原くん、野原くん」

「うん?」


名前を呼ばれるなり両手で片手ずつ引っ張られて、きょとんとしてる間にもぎゅっと力を込めて握られたのに不意打ちで心臓が短く鳴った。「ね、恋人になってなかったら出来なかったこと」とか、嬉し恥ずかし混じりなふわっふわな笑顔で言うから堪ったもんじゃない。うっわ、やられた、うーわ、


「…?あれ、野原くん?」

「何でもない、何でもないから」

「えっ、あ、もしかして照れて、」

「ない!なんでもないって!」


まさかミョウジさんに赤面させられるとは思わなかった。今迄は俺がミョウジさんをリードして照れさせるパターンだったのに!ミョウジさん純情ガールだとは分かってたけどまさかこんなに威力があるなんてなぁ…

赤くなる俺が珍しいのか、ミョウジさんがめっちゃじーっと穴が空く程見つめてくるので、取り敢えずメニュー持ち上げて顔を隠しておいた。あっ!て声が向かいから聞こえたけど気にしない。片手は繋いだままで、顔の熱りが冷めるまではこのままでいよう。



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