「じゃーん。今日はねぇ、納豆オムレツと納豆ハンバーグ作ってみましたー」


この前の納豆チヂミがイマイチだったのもあって、俺自身がおいしいと思ったものを彼女にも食べて欲しいなーと心底思った俺は、あれからネットでレシピを調べまくった。納豆使っててでもあんま納豆感はなくて美味しくてお弁当に向いてるやつ。色々作ってみたらこの二つが一番向いてる気がして、早速今日作って持ってきたわけだけど。お昼休みに入るなり得意げにじゃーんとミョウジさんの前に出すと目をぱちくりさせて驚かれた。ね、俺もね、まさか愛妻弁当作る側になる日が来ようとは思わなかったもん。


「へ…野原くんが作ったの?」

「そーだぞー。初めて作ったお弁当だけど結構自信あるから、ね?食べてみ」


恐る恐る、ミョウジさんが納豆オムレツにお箸を伸ばした。ぱくっと食べてくれたミョウジさんにどう?と早速聞いてみる。少しだけどきどきヒヤヒヤしたりして。


「うーん、うん…」

「あり、美味しくない?」


続けてハンバーグの方も一口食べると、ミョウジさんはくしゃりと困ったように笑った。あ、うわ、これ結構キツい、なぁ、


「でも、不味くもないよ。大丈夫」


落ち込む俺に気を遣ってくれてるのか、ミョウジさんはその後もパクパクと食べ進めてくれるのは意外だった。でも、


「いいよ、無理しなくて」


でも俺的にはおいしいと言ってもらえなかったのが何と無く不満でついついそんな事を言ってしまう。不味くもないってなんだよ、もう。いい年して大人気ないとか絶対に言ってはいけない。いじけてる俺を他所にミョウジさんがはい、と俺のお弁当箱に何かをころんと入れた。


「…なに?」

「わたしのオムレツもあげる」


えへへ、お弁当のおかず交換って楽しいよねとか、そうやって無邪気に笑うから。胸の内のモヤモヤがすっと消えて気付いたら高橋さんのオムレツを口に入れていた。うわ、なにこれうま、冷めてても美味しいフワトロとか。

これじゃあ俺のオムレツ、敵わないなあ当たり前だよなミョウジさん女の子だしと思うとまたなんかしんみりしてきた…。やっぱ自分で食べよ。


「貸して、今度はもっと美味しい納豆オムレツ作ってくるから。今日の分は回収」

「え、やだ」

「えっ、やだ?」

「うん。わたしが食べる」


彼女の意図が見えなくて思わず面食らう。ミョウジさんの指先がふと俺の手首に触れてびくりとした。


「軽い火傷のあとだね」

「えっ?あ、ほんとだ、気づかなかった…」

「あ、気付いてなかったの…」

「うん」

「…そうやって、わざわざ作ってきてくれたのが、わたしの為に作ってくれたお弁当が嬉しすぎたから」


だからわたしが食べる、もう野原くんにもあげないよー。って、ミョウジさんのはにかんだ表情に心臓が反応した。よくよく思えば、この前は納豆チヂミ食べようともしなかったのに、今日はちゃんと食べてくれたわけで。それがしかも俺がミョウジさんの為に作ったっていうのが理由だから、で。思わずもう納豆食べれなくてもいいんじゃないかとか思ってしまったから恐ろしい。あー、くっそ、あああ!

やっぱ好きだ。



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