「ハイグレ魔王さまっ、そろそろ本気で私と付き合ってみませんか?」


出せる限りの可愛い声にウインクをつけてハイグレ魔王さまに呼び掛けると、魔王さまがまたかとでも言いたげにため息をついた。


「…小娘がなに抜かしてんのよ」

「あのですね、世の中には男も女も両方いけちゃう!って人もいる訳でして、」

「ナマエ、そういうのはね、オカマじゃなくてバイって言うのよ」

「ところがどっこい、オカマの中にも女の子が好きって人はいるみたいですよ?私ちゃんと検索かけたんですから!」

「そうね。でもそれは一部のオカマであってあたしはアクション仮面みたいな男が好きなの」

うっとりとした表情でそう言った魔王さまに私は顔を顰める。アクション仮面。あの一件があって以来、ハイグレ魔王さまがよく口にする男の名前。その度に私がむくれるの知ってるくせに。あぁ全く、面白くない


「…まーたアクション仮面」

「ほら、そんな顔したら可愛い顔が台無しよ」

「そうさせてるのはハイグレ魔王さまじゃないですかぁ」


拗ねる私の頬を、つんと魔王さまが突っつく。さり気なく可愛いと言ってもらえたことは嬉しいが、アクション仮面のせいで素直に喜べない。私はアクション仮面が大嫌いだ。ずっと魔王さまと一緒にいたのは私なのに、魔王さまにこんなにも好かれている奴が憎い。奴が魔王さまと出会うずーっと前から、私はあなた様にアプローチし続けているというのに。…どうしてアクション仮面なの?


「いい加減私だけを見てよ」


じっと魔王さまを見つめると、その黒い瞳に見つめ返されなんだか吸い込まれてしまいそうな気さえした。一応、私なりの精一杯を伝えたつもりなのだけど、魔王さまは楽しそうにふふと上品に笑うだけで私の質問には答えてくれない。


「私、今回は本気ですから」


自身の手を魔王さまのそれに重ね合わせ、そっと握りしめる。


「アクション仮面と決闘します。私の大好きな、ハイグレ魔王さまを賭けて。だからもしも、もしも私が奴に勝てたら、」


その時は、私と結婚を前提に付き合って下さい!ああ、言っちゃった!もうまともに魔王さまの顔を見れなくて、ぎゅうと目を閉じて半ばヤケにそう言い切った。普段から魔王さま好き好きアピールはしてきたけれど、こんなにもはっきりと自分の口から気持ちを伝えるのは初めてのことで、さすがの私でも照れてしまう。恐る恐る目をけ魔王さまの反応を伺うと、魔王さまはその端正なお顔を歪めており私はちょっと悲しくなる。


「魔王さま、そんなにアクション仮面が、いいんですか?」

「…違うわよ。あたしはあんたのことを心配してるの」

「わたし、の?」

「だってアクション仮面はナマエに惚れてるじゃない」

「え、」

「アクション仮面があたしを賭けた勝負なんて呑むはずがないでしょう。代わりにナマエを賭けてくる可能性は十二分にあり。負けたらどうすんのよ」


正直、失望した。確かにアクション仮面は私のことを大層気に入っているらしいが、私は魔王さま以外には興味がないので軽くあしらっている。でも魔王さまからしたら私は恋敵なのだ、ビミョーな三角関係なのだ、もうやだこれ、これがより一層アクション仮面を嫌いにさせる原因なのである。でもアクション仮面はてんで気にしてない様子でやぁナマエ、今日も可愛いねとか、ほんと勘弁して。私が魔王さまに嫌われちゃう。ていうか、もう既に魔王さまにとって私はとんだお邪魔虫なんだなって、いま、痛感してしまったから、


「あぁ、そうですね、それで私が負けてアクション仮面とゴールインしちゃったら、魔王さまが困っちゃいますもんね。だからその事心配してるんだ!よーく分かりました」

「いやいや、なんにも分かってないじゃない」

「別にいいですよ!アクション仮面に求婚されたらその時はその時です、一層の事OKしちゃった方が楽になれるかもしれないですね。もういいですよ!私アクション仮面と結婚しますから!」


魔王さまのバカ!涙ぐみながら、殆んど勢いで思ってもないことをペラペラと、口にしたら益々私のマスターは顔をしかめっ面にして私を睨んだ。でももういいんだ、魔王さまなんて、魔王さまなんてもう、ううっ!


「魔王さまなんて失恋しちゃえばいいんだ」

「…いい加減にしないとその口、塞ぐわよ」

「え?魔王さまの口で塞がれるなら本望ですけ、」


ど、言いかけた言葉が口内で消える。くい、人差し指で顎を持ち上げられた次の瞬間には伏せられた魔王さまの長い睫毛が目の前にあって、唇に触れる温もりに、私は呼吸を止めた。


「馬鹿な勘違いしてるのはあんたの方よ、ばーか」

「っ…!」


ゆっくり、ゆっくりと時間を掛けて魔王さまが離れたが、ドキドキしすぎて上手く息が出来ない。苦しい。


「ま、まお、さま…」

「あたし、アクション仮面みたいな奴は好きよ。でもね、今はそれ以上に好きな人がいるの」

「う、…え?」

「性別関係なしに、あたしあんたの事結構買ってるんだから」


なんてことだ、私歓喜余って泣きそう、ていうかもう、目の前が歪みまくりで、だって、やっと、やっと魔王さまが、


「そうね、次の星でも侵略出来たら、その話乗ってあげてもいいわよ?」



ーやっと届いた白百合のー


(次の星侵略出来たら私たち結婚するんだ)

(魔王さま!それ死亡フラグです!)
(あら、じゃあ婚約やめる?)
(死ぬ気で頑張らせて頂きます!)


20150721

もう長いこと片思いでハイグレ魔王さまにあしらわれて来たんだけど、それがやっと届いた女の子のお話。


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