シャンブルズブルースシンガーさん 相互感謝文



警察署で(ある意味)有名な刑事クザン。
すらっと高い身長に一般的に見ても整った顔立ちをしていたが、性格はだらけきっていた。
クザンは主に傷害事件を担当していたが、傷害事件はやたらに起きる訳でもなくほとんどは警察署内で昼寝をするか同僚にちょっかいを掛けるかだった。
現在も机に突っ伏しだらし無く開いた口から唾液を垂らしながら眠っていた。

「オイ起きろ青雉。」
「ん゙……あらら…おはよースモーカー君…」

パンッと書類か何かで頭を叩かれ心地好い睡眠から強制的に起こされたクザンはアイマスクを外しながらスモーカーを見上げた。

「おはよーじゃねぇよ昼だぞ。センゴクさんからお前にあたって欲しい事件があるそうだ」
「んぁ?事件?」

事件という言葉に片側の眉を緩く吊り上げると事件の事が掛かれた書類を渡される。
書類には「暴力団事件」と書かれていた。

「暴力団……なにヤクザ?」
「あぁ、最近勢力を増して来てやがる『赤犬組』だ。」
「あららら…で、赤犬組って何?」

スモーカーはクザンの言葉を聞くと溜め息を吐き出し。
「中に詳しく書いてある、てめぇで読みやがれダラ刑事」と吐き出すように言い残すとさっさと何処かへ行ってしまった。
クザンはめんどくせぇ等と小言を呟きながら書類の束をペラペラとめくった。
文字ばかりで頭痛がするが暫く行ったページには一枚の男の写真と男についての説明文が書いてあった。

(赤犬組組長……サカズキ…?)
クザンは心中でそう呟きながら写真の男を見つめた。
写真の男は深い紅色の着物に身を包んで眉間にこれでもかというほどの皺を寄せ鋭い目付きをしていた。

「へぇ…たしかに『赤犬』って名前なだけあるわ……」

クザンはそうひとりごちると、ベリッと写真を剥がし胸ポケットへ入れ書類の束をクルリと巻き肩を叩きながら口笛吹き部屋を出た。





―――――…………
「こりゃまたでっかい犬小屋にお住みで…………」

翌日クザンは赤犬組の本部と疑われている建物へと来ていた。昔ながらの日本を思い立たせる威厳を醸し出した立派な建物に失礼きわまりない台詞を吐きながら『犬小屋』と称した建物を見上げた。

「兄さん!お帰りなさい!あれ…?」

見上げていると建物の中からピンクの髪をした青年が現れた。
兄さんとはさしずめサカズキの事だろう。
クザンは取り入っておけば事件解決に役立つだろうと思い青年に話し掛けた。
「こんにちは君、名前は?」
「君じゃありませんコビーです!貴方誰ですか?」
「君んとこの頭のお友達だよ。中には居ないみたいだね?」
「はい用事のようです、あ、中に入ってください!兄さんの友達なら入って構わないと思います。」

クザンはニコリと笑って礼を言うとコビーという青年クザンを疑いもせず鼻の頭と頬を赤く染めながら中へ入れてくれた。

流石ヤクザの本部というのだろうかそこかしこに強そうで厳つい男が歩いていた。
しかしコビーはそんな男たちにも笑顔で話し掛けながら客室らしき部屋に入れてくれた。
お茶持ってきますから自由にかけていて下さいと言うとそそくさと茶を取りに行った。
お茶を待っていると男数名の声がこちらへ近づいてきた。
少し身構えながら声へと耳を澄ませる。どうやら小さな言い争いになっているらしい。
しかし途中から声が減り何かぶつぶつと呟きながらクザンが居る部屋へと近付きとうとう客室の襖を開けた。

「あ……」
「あ……?誰じゃァお前は。」

襖を開けた人物は深い紅色の着物を着ていた。
まっすぐと見つめながらクザンにお前は誰だと明らかに不機嫌そうに尋ねた。

(組長……サカズキ…)

写真で見た鋭い目付きに凛々しい眉、紅い着物はすぐにクザンの記憶からすぐに蘇った。

「や、サカズキさん…だね?」
「そうじゃが…誰じゃお前は。」

サカズキは眉間に皺を寄せ客室でくつろぐクザンを一瞥すると目の前に腰を下ろした。
クザンは笑顔で「クザン、俺はクザンだよ」と、自分の名前を伝えるとサカズキはたちまち目を見開いた。

「クザン…?……!!貴様警察…!何しに来た!まさかパクりに来たんじゃなかろうな!」
「はぁいそのまさか、逮捕しに来たのよ、サカズキさん。」

クザンがニコリと笑い四つん這いでじりじりとサカズキににじり寄るとサカズキは眉間に皺を深く刻みじりじりと後ずさる。大の男が2人こんなことをしていると正直画面的にキツイ。

「誰…!!…むぐっ!」
「ダメだよ大声上げちゃあ、誰か来ちゃうでしょ。」

叫ぼうとしたサカズキの口をクザンの大きな手が塞ぐ。
サカズキはこれでもかという程眉間に皺を寄せ睨んだがクザンは怯むどころかニタァっと妖しく笑った。

「あららら、そんなに睨まなくてもいいじゃない。ワンコはキャンキャン鳴いて抵抗するより腹見せて服従する方がいいよ。」

クザンはそういうと手をパッと離し立ち上がった。
サカズキはクザンを見上げ鋭い目付きで睨んだ。

「貴様……!!絶対殺っちゃる!」

クザンはその言葉を聞くと少々驚いた様に目を見開きクスクスと笑った。

「そりゃ楽しみだね。気が変わったよ逮捕はまた次にしてあげるから」
「警察ごときに情けをかけられても不愉快なだけじゃ!!」
「情け?ヤダなぁヤクザに情けなんてかけないよ。俺は楽しみはサイゴまで取っとく派なんだよ。」

クザンはそういうと「おじゃましました、またねサカズキ」と言い残しさっさと帰ってしまった。
サカズキは心底不愉快そうにクザンの背中を睨んでいた。
するとパンッといい音を立て障子が開いた。

「長らくお待たせしてすみま……アレ…?兄さん!お帰りなさい!お客さん来てた筈なんですけど…」
「客?あの警察か。アイツなら帰っ……帰らせた。」
「うぇ!?け…警察!?」

障子の先にはおぼんに湯呑みを乗せたコビーが居た。
クザンの事に気付いていないのにサカズキは少々呆れ頭をくしゃくしゃと撫でた。

「う…じ…じゃあ僕たち逮捕…!?」
「それは無いじゃろう、何やアイツは掴み所が無いヤツじゃったが…そんな気がする。」

サカズキはうすらと微笑みコビーの頭をぽんぽん叩いて客間を後にした。

コビーは去って行くサカズキの後ろ姿をジッと見つめた。

「兄さん……耳が真っ赤…ま…まぁ…、あのヒトかっこよかったから…」

コビーはそう呟いたあとハッとして待って下さいとサカズキの後を追い掛けた。




嗚呼
いつか儂は貴様に捕われる
存分に噛み付いてやろう
青い雉
赤い犬の凶暴さ
一筋縄じゃぁ
いかんけぇのォ


シャンブルズブルースシンガーさんから相互感謝文として頂きました!
まずまず・・・なにこの設定萌える!
前にサカズキが警察な小説書いたんですが普通にこっちの方が萌えるじゃないかと(^p^)
シャンブルズブルースシンガーさんのこういう詩人的な語り口が大好きですハァハァ
ありがとうございました^^

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(10.11.19)




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