一周年記念企画 千代子さん



「サカズキ」

「何だ」


クザンはそう言ってサカズキを後ろから抱きしめた。
サカズキは特に嫌がる素振りもなく、目の前の書類を整理している。
自分の行動に無反応の恋人にクザンはむっとしたが、とりあえず用件だけを言った。


「昇進の発表見た?」

「まだ見ていない」

「じゃあ一緒に見ようよ」

「・・・別に構わん」


そんな返事をもらえてクザンはニコリと笑い、懐から配布された書類を出す。
そしてそれをサカズキの机の上に置いて、サカズキの向かい側に机を挟んで立った。


「絶対サカズキが大将だね」


クザンの言葉にサカズキは溜息を吐いた。
サカズキは自分が優秀だとうぬぼれたことは一度もない。
自分はまだ弱い、だから強くならねばと思ってここまで走ってきただけだ。
それにそれはこの目の前の男にも言える事だろう。


「お前もだろう」

「オレ?オレは大将なんて器じゃないよ」

「器かどうかはお前が決めるんじゃない。センゴク大将が決める」

「あら。そう言うならなんでサカズキはオレが大将になるって思うのよ」


そう素朴な疑問を言うとサカズキはぴくっと身体を動かした。
この反応はまさかそう返ってくるとは思わなかったのだろうと予測出来る。


「・・・・・・」

「ね。何でよ」

「っ・・・うるさい・・・何でもいいだろうがっ・・・・!」

「よくない。だって言ってること矛盾してるじゃないの」


クザンにそう言われてサカズキはぐっと黙り込む。
確かにそれはそうだ。しかし、まさかこうも持ってくるとは思いもしなかった。
何か言い逃れる手はないかとクザンを睨むがクザンは相変わらずサングラスの向こうで笑っている。


「別に・・・他意はないっ・・・!」

「へぇ・・・サカズキが他意もなくそんなこと言うの?」

「うるさいぞ!ないと言ったらないんだ!」


サカズキはいつの間にか始めに持っていた冷静さを失っていた。
しかしそれに気付かずに怒鳴っている姿を見て、クザンはまた笑みを深める。
その笑みが気にくわないのかサカズキはクザンを睨みっぱなしだ。


「まぁいいや・・・じゃあサカズキとオレが大将になってるといいね」

「っ・・・」


イエスともノーとも言えないサカズキは黙りこくるしかなかった。
しかしクザンはそんなサカズキに特に何も言わずに大将の欄を見る。
一番目には予想通りサカズキの名があった。
その下には友人のボルサリーノ、そしてその下には。


「・・・だから言っただろう」

「あらら・・・」


サカズキの希望通り、クザンの名前は大将の欄にあった。
その名前を見て、頬をつねったりして現実を確認するが残念なことに現実だ。


「・・・結構見る目ないんだねぇ」

「お前・・・上司を悪く言うな・・・」

「言ってないよ。自分を過小評価してるんだよ」


そう言えばサカズキは納得していない顔をしたが、すぐに仕事を再開させた。
どうやら先ほどの答えはなあなあで済ませられてしまいそうだ。
しかしこれ以上聞いても答えてもらえそうにない上に下手すると追い出されてしまう。


「・・・ねぇ。サカズキ」

「何だ・・・次くだらんことを聞いたら溶かし尽くすぞ・・・」


サカズキにそう睨まれたため、クザンは少し肩をすくめておどけてみせる。
そしてとりあえず建前上はまともな質問をぶつけた。


「大将になったんだから抱負ぐらい述べてよ」

「は?」

「だって明日の就任式で言わなくちゃいけないでしょ?決まってるなら聞こうかなと」


そう言ってクザンはニコリと笑う。
その笑みにはあまり不快感がなく、サカズキは少し考えてからそのくらいならばと言うことに決めた。


「絶対的正義だ」

「へぇ・・・ご立派だねぇ」


クザンの言葉は取って付けたようなモノだったがサカズキは気にしなかった。
しかしふと思いついたようにクザンの考えが頭に仮説として立った。


「まさか参考にするなどと言うのではなかろうな」

「え?大丈夫。オレだって抱負決めてるし」

「ほぅ。そうか」


サカズキは言葉に出したあとにそれはないかと考えを改めた。
クザンがそんなことを言えば熱でもあるのではないかと思われてしまうだろう。
それにクザンは思ってもいないことは口に出さない性格だ。
しかしそう言うクザンの抱負も少し気になる。


「・・・お前は何を言うんだ」

「え?オレ?」


クザンは訊いてくることが意外だとでも言わんばかりの顔で返事をしたが、サカズキはお前以外に誰がいるという顔でクザンを見た。
するとクザンはニコリと笑ってサカズキの顔をのぞき込む。
そしてそれが当然でそれ以外何があるのだと言わんばかりの顔で自分の抱負を言ってのけた。


「大将になってもサカズキとずっとラブラブしようっていう抱負を言うつもり」

「っ!」

「じゃ、明日の式典楽しみにしててね!」

「ばっ・・・待てェ!」


言うだけ言って逃げるように走り出したクザンを追いかけるためにサカズキは勢いよく椅子から立ち上がる。
そしてその抱負を今日中に別のモノに変えさせるために慌ててクザンを追いかけた。


大将になって、忙しくはなるだろうけれども。
変わらぬ愛を貫いていければ、オレは幸せだ。


千代子さんからのリクエストで「大将なりたての二人」でした。
この三つの中で一番リクに応えられた気がしません・・・
甘ラブでいいのか?とかシリアスラブかな?と思いつつシリアスラブの路線で行こうとしたら
結局甘ラブになりました。MEMOのフラグを物見事に叩き折ってしまいすみませんっ!
では!一周年記念参加してくださりありがとうございました!
これからもよろしくです^^

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(10.07.27)




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