晃さんへ 相互リンク感謝文



「ねぇ・・・もういいって」

「だめじゃ。大将ともあろうヤツがこんな部屋ではいけん」


クザンのぼやきもサカズキにかかればすぐにたたき落とされてしまう。
それは分かっているが貴重な休日を部屋の掃除に使うとは少し勿体ない。
そんな気がするがサカズキにそう言えばまた怒られてしまうだろう。
今はサカズキの言うことを素直に聞きながら自分の部屋の掃除に専念することにしよう。
クザンはそう決めた。


なぜこんなことになってしまったのか。
それは約三日ほど前にさかのぼる。
クザンがサカズキの家に遊びに来た時のことだ。
クザンのとある一言がサカズキの心に火を付けたのだ。
それは。


『サカズキの部屋は綺麗だねぇ〜・・・オレの部屋とは大違いだわ』


軽く言ったつもりだった。
しかしサカズキは大将ともあろうクザンの部屋が汚いという事実に大層驚いたらしい。
散々問い詰めた挙げ句今度の休日に片付けに行くと言われてしまい、今に至るのだ。


「貴様・・・このシャツはいつ洗ったんじゃ・・・!」


ベッドの周りを掃除していたサカズキが見つけたのは白いシャツだった。
しかし所々汚れていて洗った後になくなったとは思えない。


「え?あーそれ探してたんだよね!もう何日も前になくなって・・・あ、ちょっとどこ持ってくのよ!」

「バカタレ!脱いだらすぐに洗濯せんか!」


案の定かなりの日数が経っていたらしい。
サカズキはそれを洗濯かごに放り投げた。
どうやらこの男。覚悟していた以上に不精者らしい。


「・・・・・・おい」

「ん?」

「冷蔵庫も改めさせてもらうぞ」

「え!」


この分だと冷蔵庫もひどい有り様なのではないか、そう一抹の不安を抱いたサカズキはそう言って立ち上がりキッチンへ向かう。
後ろでクザンが「プライバシーもへったくれもないな・・・・」などと呟いたがそんなことを気にしている場合ではない。
下手をしたらこの男は自分の健康管理も出来ていないかもしれないからだ。


「・・・・・・」


そして予想通り不安通り思った通り。やはりクザンの冷蔵庫は空っぽに等しかった。
飲み物の類は多々あるが食材等は一切ない。
あったとしても傷んでいるものばかりで、長いこと台所に立っていないことが伺える。


「貴様ついこないだまで何を食うて生きとったんじゃ」

「んー・・・最近は外食ばっかりだった・・・かな」


サカズキの静かな怒りを悟ったのかクザンはそう語尾を弱めて事実を告げた。
その瞬間サカズキは勢いよく立ち上がり、メモを取り出して何かを走り書きし、それをクザンに押しつける。
何だろうかと思い見ればそこには食材の名前と思われる文字が書いた速度のわりには綺麗に書かれていた。


「何これ?」

「これを今から買うてこい」

「えー・・・」

「いいから行けっ!その間に部屋の掃除はしといてやるけェ!」


そう背中を思いきり叩かれてクザンは「いてっ」と悲鳴をあげながら部屋を出て行った。
ここは自分の部屋なのにどうして追い出されなければならないのか。
そう疑問抱きつつもクザンはマリンフォード内にある市場へ出かけていった。



◆◇◆




さすがにメモのものを全て揃えるのは手間がかかったがサカズキに頼まれた以上一つも欠けさせるわけにはいかない。
全てのものを揃えて家に戻り、ドアを開けてクザンは思わず唖然とした。


「うわぁ・・・」


家は綺麗に片付いており部屋を間違えてしまったかと思うほどだ。
綺麗に磨かれた廊下を歩きながらリビングへ向かう。
ベッドはまるでホテルのベッドのようにぴっちりとシーツが敷かれていて布団も綺麗に畳まれている。
ごちゃごちゃしていて引き出しが閉まらなかったタンスも綺麗に閉まっていて、キッチンも綺麗だ。


「これぐらい綺麗にしておかんと大将の面子が立たんじゃろうが・・・」


誰も大将の部屋なんて見ないとは思うが、せっかくサカズキがやってくれたのだ。
ここは黙ってお礼を言おうとクザンは礼を言う。するとサカズキはうむと返事をした。


「で・・・一応買ってきたけど何すんのよ」

「今日の夕飯を作ってやる」

「え!ほんと?」


先ほどまであまり面白くなさそうな顔をしていたクザンは突然顔を輝かせた。
その落差にサカズキは驚いてクザンを見る。
飯を作ってもらえるのがそんなに嬉しいのか。
そう思ってしまうほどの笑みだ。


「とにかくお前は片付けたところを確認してくれ。あからさまなゴミ以外は捨てとらんけェ」

「はいはい〜わぁ楽しみ楽しみ!」


まるで子供のように機嫌良さそうにスキップをしながらクザンは片付けの確認に向かっていく。
何を期待しているのかは知らないが、自分が作れるものなど大したものではない。
ならば期待を裏切らぬようにしないといけない。
そう勝手に責任を感じつつサカズキは夕食の仕度をするためにエプロンをつけ始める。
買ってもらってきた材料を傍らに自分が作れそうな料理を思い出しながら、健康面に気を遣ったメニューに当てはめ作る。
しばらくすれば部屋中にいい匂いが漂い始めた。


「・・・・・」


その匂いに釣られてクザンは立ち上がりフラフラとキッチンへ向かう。
ひょいと後ろから覗けば鍋から美味しそうな匂いを漂わせたカレーがあった。
海王類の部位をも指定した辺り相当こだわった一品なのだろうか。
そう思うと自然と笑みが溢れてしまう。


「何じゃ・・・・」

「いや。どんなもんかなぁと」

「味見するか?」

「あらいいの?」


サカズキにそう言われてクザンはひょいとサカズキの手を取った。なぜ自分の手を取る必要があるのか全く見当がつかないサカズキはポカンと呆けたままそれを見ている。
指先にはカレーの汁がついていてこちらは指の主であるサカズキが味見しようと思っているものだ。
しばらくして予想通りというかなんというか。
クザンはサカズキの指をぱくりと口の中に入れたのだ。


「ひっ!」

「ん〜・・・ひっひょあじうしゅいかも・・・」


まるでその動作が当たり前であるかのようにちゅうちゅうと吸いながらそうしゃべるクザンを見てサカズキはかぁっと顔が赤くなるのを感じた。
それと同時にクザンを思いきり突き飛ばす。


「いて!」

「ッ〜!もうええわい!座って待っちょれェっ!」


顔を真っ赤にさせてサカズキはクザンを台所から追い出した。
殴られながら蹴られながらクザンは悲鳴をあげつつ台所から出る。
そしていじけたように肩を落としてみれば、サカズキの声が後ろから聞こえた。


「・・・・・・運ぶのを・・・・手伝え」


恥ずかしそうにそう言うサカズキを見てクザンは満足そうにニコリと笑い、返事を返してサカズキの元へ戻っていった。


一通り机に並べられた料理を見てクザンは思わず感嘆の声をあげた。
こんなにも食事らしい食事がこの机に並べられたのは何年ぶりだろうか。
しかしそんなことを言うとまたサカズキの小言が始まってしまうので黙っておく。


「見とるだけじゃあ腹いっぱいにならんぞ」

「そうだね。じゃっいただきまーす」


そう言ってクザンは箸を持っておかずに手をつけた。
ゆっくりと口に運んで噛みしめれば手作りらしい味だと実感し、思わず笑みがこぼれてしまう。
味はやはり少し薄いような気もするがこれがサカズキの好みの味だと思えばどうでもよくなる。
礼を言おう。そう思って頭をあげるとすぐにサカズキの不安そうな顔が見えた。
どうやら味の具合が気になるらしい。


「・・・う、美味いか?」

「そりゃあ美味しいよ。サカズキがオレのために作ってくれたら嫌いなものでも食べられるね」

「べ・・・別に貴様のために作ったんじゃな・・・い」


サカズキはそう否定したが語尾が弱々しく顔は真っ赤だ。
実際は褒められて照れくさくて嬉しくてのだろう。ただそれが表に出てこないだけだ。
それが可愛いやら愛しいやらでクザンは頭がおかしくなりそうになる。


「じゃあ誰のために作ってくれたのよ」

「うっ・・・・・お前が身体を壊したらわしらが迷惑なだけじゃっ!いわば予防じゃ予防!」

「ようするに心配してくれてるのね。分かった分かった」

「っ!じゃけェそうじゃな・・・んっ?」


まだ騒ぐサカズキを横に置いて、クザンは少しサカズキに顔を近づけた。
その顔が何か欲していることはさすがのサカズキでも分かるがそれが何なのかまでは分からない。


「なんじゃ・・・」

「何って食べさせてよ。恋人が手作り料理作ったらあーんしてくれるのが常套でしょうが」

「あぁ!?なぜわしがんなことをっ・・・!」


そうサカズキは反論しようとしたがそれを言わせまいとクザンはすぐに口を開く。
そしてトドメを刺すようにして言葉を一つはいた。


「だから、オレ達恋人同士じゃない」

「うっ・・・・・!」


サカズキが"恋人"という言葉に弱いことは知っている。
普段は黙認されている事実を改めて突きつけられるとどうも照れくさくなるらしい。
それでもサカズキの心に何かしら女々しい感情が湧くのならば、多少嫌がられても何度でも言うだろう。


「・・・・・近い。もっと離れろ」

「はーいはい」

「はいは一回でええっ!」


ついに否定しなくなった辺り食べさせてもらえるのだろう。
そう感じたクザンはサカズキの言うとおりに少し離れて、サカズキがおかずを箸にのせていく。
そしてクザンの前にずいっと近づけた。
それを合図にクザンは口開ける。


「あ、ちゃんとあーんって言ってね」

「っ・・・あ、あーん・・・」


サカズキの言葉と同時にクザンは突き出されたおかずをぱくりと食べた。
サカズキは自分の手からおかずを美味しそうに食べるクザンをじっと見ていたがやがて恥ずかしくなったのかすぐに箸を引っ込めて自分のおかずを食べ始める。
先ほどから調子をかき乱されすぎだ。早く食べて帰ろう。
そう思いながら箸を進めていると今度はクザンが箸を目の前に突き出してきた。


「っ・・・」

「ほらっ。お返し」


その箸には先ほど食べさせてやったおかずが乗っていて流れからして食べさせてくれるのだろう。
しかし慣れない動作のせいかそれはどうも恥ずかしい。
羞恥心のせいで固まったままでいるとクザンはほらと急かして来た。


「っ・・・・一度だけじゃっ・・・!」


ついに折れたのかサカズキはそう悔しそうに言って口を開けてくれた。
クザンはその中におかずを入れてあげたわけだが、勿論あの言葉は忘れない。


「はい。あーん」

「っ!!」


そう愛しそうに言えばサカズキはただでさえ真っ赤な顔をさらに赤くさせておかずを食べてくれた。
何か言いたいのか早々におかずを飲み込んでしまったが。


「そっ・・・そりゃあ言わんといけん台詞じゃなかろうがっ!」

「え?だってサカズキが言ってくれたから言わないといけないかと思って」

「じゃあかしいっ!もう作らんぞっ!」


サカズキのその言葉にクザンは困ったように眉を下げた。
しかしサカズキはそれに気付かずクザンをにらみ続ける。
とりあえず言いたいことは言っておこうとクザンは心底困ったように口を開いた。


「えぇ!それは困るな・・・これからずっと作ってもらおうと思ってたのに・・・」

「わしはお前の通い妻じゃないけェ!」

「じゃあもうお嫁さんに来ちゃえばいいじゃない」

「っ!!」


クザンの言葉に大層照れくさくなったのかサカズキはついにうつむいてしまった。


相互リンクをしてくださった晃さんへ捧げました。
ありがとうございます!
リクエストは『クザサカでちょっと世話焼きなサカズキさん』でした
ラブラブしてろ!との命令がくだったのでイチャラブさせました〜
これからもよろしくお願いします^^

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(10.11.02)




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