かくしだて / クザサカ



多分、というか絶対自分の方が“こういう場”には慣れている。
サカズキを抱くたびにクザンはそう思った。

特に正常位の時なんて一番実感する。
体位的には一般的なのにサカズキの恥ずかしがり方は騎乗位の時やトイレでしている時と何ら変わりはない。
ずっとクザンの胸に顔をうずめて、全然顔を見せてくれないのだ。
せいぜい分かることと言えば皮膚越しから伝わる顔の熱ぐらいだろうか。


「ねぇ・・・」

「嫌じゃっ・・・・嫌じゃァ・・・・」

「そんなにイヤイヤ言われると切なくなっちゃうねぇ」


普通に自分の部屋で、ベッドの上で。
他には誰もいないと言うのに、愛し合っていると言うのに。
なのにサカズキはクザンの顔を見せてほしい、という願いを聞き入れてはくれなかった。
どんなに見せてくれと頼んでも嫌だの一点張りで、それは挿入した後も変わらない。
試しに身体を揺すって落とそうと試みた所、ずるっと落ちたがすぐに両腕で顔を覆われてしまった。


「ねぇってば」

「嫌なもんは嫌なんじゃっ・・・!」


そう断られては仕方ない。
普通ならばそう思えそうだが今はどうしても思えなかった。
こんなにも嫌がられても、このくらいのワガママは許してくれるんじゃないだろうか。
そんな確信が生まれてしまうのは長く続いた付き合いが生んだ信頼ゆえだろう。


「まぁ・・・・嫌なら嫌でもいいんだけど・・・」


そう残念そうな声を出しながら腰を打ち付ける作業を再開させるとまたサカズキも喘ぎ悶え始める。
勢いで顔を隠す腕が外れるかと思ったが意識をして力を込めているのかなかなか取れない。


「っねぇ・・・・サカズキ」

「はぁ・・・・んっ?」

「見せなくていいから、チューがしたい」


攻め立てながらもクザンはいつも使う優しい声でサカズキに囁いた。
さすがのサカズキもこれには嫌だと言わないだろう。
実際に先程まで嫌だ嫌だと言っていた口は、今は嫌と言わずに恥ずかしそうに閉ざされている。
したいが恥ずかしい。そんな葛藤をさ迷っている最中なのだろうか。
そう考えつつもクザンはしばらく待つ。


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・サカズキ?」


様々な意味を含めて名を呼ぶとサカズキはわずかに口を開き、腕を崩してちらりと恍惚に満ちた目を見せてくれた。
腕の隙間から覗く片方だけの目が、肯定的な意味だと確信したクザンは思わず口元をつり上げて。


「隙ありっ」

「っう?」


素早くサカズキの腕を掴み、サカズキの頭上に押し上げた。
すっかり油断していたらしくサカズキの腕は先ほどのやり取りなど嘘だったように簡単に押しやられてしまう。
サカズキは一瞬ポカンとしてクザンを見つめていたが
クザンのまるでずっと探していた宝物を見つけた子供のような表情を見て、すぐに顔を赤らめて目を伏せた。


「離せっ・・・・ェ!」

「それは出来ねえ相談だね」


サカズキは顔を横に逸らし隠しながら離してもらおうと腕を何度か揺らした。
そんなことをしてもクザンが離すわけがないとは分かっているが
見られたくないのだから見られたくないと自己満足程度の意思表示でもしておかないと気が済まない。


「んんっ・・・・見られとうないんじゃァ・・・!」

「・・・・だから、言ってんでしょうに」


まるでわからず屋の子供に諭すような口振りで、まるでワガママを聞いてもらえぬ子供のように、クザンはサカズキの口をふさいだ。
そしてねっとりと絡み付くようなキスをした後に一際優しく囁く。


「それは、出来ない相談、だって」


えいえいと短文です。
そろそろクザサカ不満に陥ってきたんですかね。
甘いのが書きたいなーっていう願望と
いかに情事中であるにも関わらず健全性を出すかというワケの分からない目標を持って書いてみました。

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(11.01.16)




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