長編 | ナノ
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いつまでもパジャマ姿のままでごろごろする家主さんにはバスケットに勤しんでいた昔の面影なんてどこにもなかった。

「洗濯するっ!のでっ!脱いでくださいっ!」
「なんなんだよいきなり…痴女かよ」
「ちっがうから!休みの日なのにいつまでもゴロゴロしてるからだっつーの!」
「あーーーちょっとテレビの前に立つのやめろ!オレのマイちゃん!」
「人の話聞いてる…?」

ここに住み始めてから大輝が休みな日は今日が初めてだった。私がいないときもこうやって一日中ごろごろしてたんだろうなあと容易に想像がつくくつろぎ方だ。大方ソファの前のテーブルに必要なものをすべて置いて、たまにトイレに立つみたいな生活を送っていたのだろう。

「ほらよ、脱いだ。からもってけ」
「え?あ。うん、ありがとう」
「あー、着替えっかな」

休みの日に服着るなんて久しぶりだわーとかなんとか言いつつ、大輝は自室に戻っていく。思ったより素直な対応になんだか拍子抜けしてしまった。なんかあったのだろうか?いつもだったらもっとぎゃーぎゃーつっかかってくるのに。

「じゃない、洗濯だって洗濯!今日はシーツも洗っちゃおう!」

ここに住み始めて、いつのまにか「いつもなら」なんて言葉を使えるようになっている。私の中で「当たり前」が、できている。それを思うとなんだか全て悪くないような気がしてくるのだから不思議だ。