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洛山高校二年、みょうじなまえ。好きなもの、練習後のアイス。嫌いなもの、練習前のストレッチ。苦手なもの、毎時間ある古文の古語の小テスト。不可解なこと、


「やあ、おはようみょうじ先輩」


最近、後輩であるこの赤司くんに付き纏われてること。





「…意味わかんないよ赤司くん」
「意味わからないなら気にしなくていいんじゃないかな?」
「一応先輩だよ、敬語を使いなさい」
「…オハヨウゴザイマスなまえ先輩」
「よろしい」

どうやら私には年上としての威厳の欠片もないらしい。ため息を着く暇もなく赤司くんはこちらへ近づいて来る。足取りは今日も軽そうだ。こっちは夜中まで一時間目にある古語の小テストの予習をしていて、少しフラフラするというのに。登校時間まで少し余裕があるというものの、やっぱりこの時間ともなればここも少しずつ混みだす。赤司くんは必ず私を見つけ出すけれど、いつもどうやっているのだろう。怪訝な顔で赤司くんを見つめると、あることに気付いた。そういえば前に見た時より、彼の前髪が短くなっている気がする。

「赤司くん前髪、短くなってるね」
「え?ああ、そうだった」
「散髪にでも行ったの?」
「切ったんだ、自分でね」
「…わあ、器用ね」
「知ってる」
「知ってるのね…」


ブロモ


「そういえば試合、あったんでしょ?どうだったの?」
「そんなの言うまでもなく結果は決まっている。僕たちの勝利だよ」
「そうなんだ、よかったね」
「勝つことは基礎代謝みたいなものだから」
「そっか、それは頭が下がることで」
「ありがとう」
「ところで基礎代謝って何?」
「…辞書で調べるといいと思うよ」

私から目をそらしながら赤司くんはそう言った。相変わらず生意気な後輩だ。いつか懲らしめてやるんだから。そう言いつつそれが実行できたことは一度もない。赤司くんは不遜な態度でいつも私を嘲笑う。

「また無くなってるよ、敬語」
「はいはいなまえさん、申し訳ありません。これで満足かい?」
「それ敬語じゃないと思う…」
「大体歳なんて関係ないんだよ。一個しか違わないんだし、それにもしなまえさんが来年大学に落ちて、浪人すればどうせ僕とは同じ学年だ」
「嫌な想像しないでよね」
「つまりはそういうことだよ」
「…なんか騙されてる気がする」
「そう思うならそうなんじゃない?」
「…じゃあなんで私に付き纏うの」
「嫌いじゃないから」

ああ別に好きなわけではないからね。と間髪入れずに赤司くんはそう言う。好きだっていうのと嫌いじゃないっていうのは、彼からしてみると厳密には違うものらしい。「好きじゃないなら、」期待させないでよ。そう思うけど続きは声には出さなかった。「ん?なんだい?」「…なんでもない」


エタン


キーンコーンカーンコーン。そんなことをしているうちに始業の鐘が鳴った。辺りを見回すともう誰もいない。さっきまで私と同じように下足棟に向けて歩いていた生徒たちはいつの間にか教室へと行ってしまったらしい。「私たちも行かなきゃね。赤司くん、一時間目何?」「ないよ」「え?」「たったいま無くなった」「何言ってんのよ」「僕が決めた」「…え?」



「ねえ抜け出そうよ、なまえ」



赤司くんは、ずるい。下から覗き込まれてそう言って手を取られたら一時間目に古語の小テストがあることも、二時間目の体育で新しく始まるバスケのチーム分けをすることも年上には敬語を使えってことも私が実は赤司くんのことを好きなことも、何も言えないじゃないか。



合成法






ジブロモエタン:1,2-ジブロモエタンは化学式
C2H4Br2で表される有機化合物である。藻
や昆布などにより少量が合成されるため海
にごく微量が存在しているが、大半は人工
的に合成されている。エチレンと臭素の反
応により合成される。無色の液体でい臭









wikipediaより抜粋
テーマは歳の差を気にする赤司。
(120617)