ピリリリリと、携帯が鳴る音で起きた。電話に出ると涼太の声が耳元でわんわん鳴る。 「なまえさーん!」 「…涼太?」 「何してんっスか!集合時間、とっくに過ぎてるっスよ!」 「あー…」 「…」 「…」 「…」 「ごめん、」 完全に寝坊した。 アンチロマンチックド 05 頭を抱えた。集合時間は九時で、今日はせっかくの涼太のオフ。完全にやらかした。とりあえず集合場所に行こうと思って、歯を磨きながら適当に着替えを選ぶ。今日暑いからなー、大体こんな感じでいいかな。そう思って選んだのは結局いつも着ているような恰好。まあ、背に腹は変えられない。 そのあとも私なりに急いだけれど、それでも集合場所に辿り着くころには10時になっていた。涼太怒ってるだろうか、あ、考えると頭痛くなるから止めよ。 人ごみの中から涼太を探す、けど探す間もなくすぐにわかる。長身と金髪と知名度。彼の周りにはいつだって大体人だかりができているからだ。 「ごっめん涼太!」 「あ!なまえさんおはよう!大丈夫だった?怪我とかしてないっスか?」 「怪我なんかするわけないじゃん、意味わからん」 「いやでも急いできてくれたんスよね?そしたら予期せぬ怪我とか!」 「ねーよ。…映画、何時からだったっけ?」 「九時半っス。もう始まってますねー」 「うわー、ほんとゴメン」 さすがに申し訳ない。せっかくのオフなのに、いきなり寝坊されて遅刻されてとどめに映画も見れず仕舞い、そしてそれが100%私の過失。それなのに涼太は怒った様子一つ見せない。それどころか見当違いな心配さえしてくるくらいだ。 「まーいいじゃん、ねえなまえさん、DVD借りてオレん家で見ない?」 「…それで、いいの?」 「いいのいいの!オレ、なまえさんと一緒に居たいだけっスから!」 よくそんな歯の浮く台詞をこんな公衆の面前で言えるものだ。しかもなまじ顔がイケメンだから絵になりすぎていけない。涼太は「ね?」と笑って、当たり前みたいに私の手を握る。どこまでそつがないのだろうか、このイケメンは。 「…じゃあ、それで」 照れているとか悟られるなんて、死んでもごめんだ。 |