「ねーみょうじ、今度さ、この前貸したCDのバンドがライブで来るんだけどさー、一緒にいかねー?」 「まっじで?行く。ちょう行く。」 「やったァ、じゃあチケット取っとくね!」 「うわあ、めっちゃ楽しみなんだけど!これでまたしばらくバイト頑張れそう!」 「水谷そんなことしてる暇あんのかよ」 「大丈夫大丈夫。ライブがあるのは二学期のテスト期間なのです!」 「余計ダメだろ」 「はァ!?なんで!」 「おっまえ…自分の成績表見てから言えよ」 「大丈夫だよ阿部ー。責任もってこのみょうじさんが面倒見ますから!」 「おー、さっすがみょうじ!頼りになる!」 「伊達にあんたらが野球してる時間勉強してないからね!」 「はあ…」 「ため息つくと幸せ逃げるぞ阿部ェ〜」 「そうだぞ阿部ェ〜」 「うっぜぇ」 水谷の頭にぐりぐりを食らわせながら阿部はそういった。それにしても阿部は本当に水谷が嫌いなんだねえ、とそういうと、当たり前だろ。なんて澄ました顔で返ってくる。それを聞いた水谷がひっでェ!ってうざい泣き真似をするまでがいつもの流れだった。どうして私たちは一緒にいるのだろう。水谷と阿部は野球という共通点があるにしろ性格は真逆だ。私と二人など、共通点すらない。ああ、水谷とは音楽の趣味っていうそれがあるかもしれないけれど。 「ねぇねぇ、夏どっか遊びいこ」 「俺らそんな暇ないかもな」 「てかまだ試合負けてないしね!夏は甲子園でいっぱいかも〜」 「ははっ、じゃあ、行くよ私も。甲子園。」 「まじでか!」 「おい水谷負けらんねーぞ」 「うわ、阿部プレッシャーかけるのやめろよォ!」 終わらない夏はないと、去年も痛いほど思い知ったのに、私は今年も馬鹿みたいにそれだけを願っている。 |