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ざざあん、ざざあんと波が寄せては引いていく。潮騒の音は胎児のときに母親のお腹の中で聞いてる音階に似ている気がする。だから人は海に帰りたがるのかもしれない。
浜辺で、彼は消えそうな輪郭をようやく保ちながらただ風に打たれていた。(どうしようシリアスに入りすぎてしまった…だ、打開しなくちゃ…)(無駄に責任感強い))

ほーくろくんっ
違います
「ごめんごめん、わざとだよお☆」
「…」
「あっ、今めんどくさいって思ったでしょ!?めんどくさいって顔に書いてあるよ〜くぬくぬっ(黒子の頬をつねる)
「…やめてくれませんか…?

ほくろくん改め黒子くんの瞳が怖いのでやめました。もともと光彩の色素が人よりもずっと薄い黒子くんが眼光を鋭くさせるともはや同じ生き物には思えない気がします

私と黒子くんは、合宿所の近くの海にやってきていた。正確に言うと黒子くんが先に風にあたりに来ていたらしく、片付けや明日の仕込みを終わらせた私もなんとなくでたまたま海に来たら黒子くんがいただけなのだが。や〜ん海で二人きりとかロマンチック☆とか絶対ならないあたり身の程を弁えている自分が…結構嫌いじゃないです…

「なんかあったの〜?」

黒子くんの背中は、コートや合宿所で見ているときより小さく見えた。いや普通に小さいんだけどさ

「…先輩は、才能って信じますか」
「才能?」
「…そうです。ボクは、」

私は黒子くんの言葉に注意を払いながら彼の横に腰を下ろす。海風が髪を乱暴に攫っていくのをやり過ごしていた。

「ボクは、…ボクには、才能がなかった。…才能を、もらえませんでした」
「…」
「先輩は知らないかもしれないけど、ボクがいたチームにはキセキの世代と呼ばれた天才がいたんです。それも、五人も」
「…ふうん」
「ボクはその天才たちを目の当たりにしながら今までバスケに臨んできました。でも…」
「…」
「なんだか、わからなくなってしまって」
「あーそれね。あるある(ドヤ顔)
「…さっき、夕食前に緑間くんは火神くんに…やり方は乱暴でしたけどアドバイスをしていたんです」
「(流された…!)ん?そうなの?それは知らないや」
「ボクが…言うのもなんですが、緑間くんはれっきとしたキセキの世代の一人、紛うことなき天才です。彼らは弱い人間に興味はありません。その緑間くんが…火神くんにアドバイスをした」
「そっか…」

「かがみんは天才なんだね」

私のその言葉を聞いた黒子くんの顔が強張るのを、私は暗闇の中でも見逃さなかった。ひきつった顔をなんとか和らげて、黒子くんが曖昧に笑う。泣きそうな顔だった。

「…きっとそうなんです。だからボクは、」
「うん」
「ボクは、怖い。また、また…」

沈黙が走る。潮騒がサウンドの全てを占領した。待っては見たものの。、黒子くんがその言葉を紡ぐことはなかった。

「そっかあ…」
「…」
ていうかマシン太郎って天才なんだね
なんですかマシン太郎って…先輩って本当にバスケに関する予備知識、なんにもないんですね」
「え?そりゃあそうでしょ。今までバスケに興味なかったわけだし?」

そう言って立ち上がる。勢いよく黒子くんの方を振り返った。海風がべたべたとまとわりついて、生臭い潮の匂いがする。砂に足をとられる、ここは、砂浜だから。

「だぁからぁ、しーらない!あんたらのそのオトモダチが天才だとか、かがみんが天才とか!なんにもわかんないし、いくら天才って言われてもね、私みたいな一般人は全然知らないし、ぱっと見さ、わかんないよ」
「…」
「黒子くんはさあ…本当にバスケ、好きなんだね。才能がなくても、努力するしかなくてもやめなかったんでしょ」
「…そん、なの」
「私はねえ、自分で言うのにもなんだけど、ほんとに甲斐性ないんだ。努力とかほんっと嫌いだし、ていうか苦手なのね。だから、今まで部活とか割と続かなくてさあ。だから、月並みな言葉で悪いんだけど、黒子くんって凄いと思うよ。」
「…気休めですか」
「そう。気休め。…ただ私は、気休めもできないようなやつが天才に努力で勝るなんて最初から無理だと思うなー」
「…軽くすごく鬼畜なこと言いますね」
「だってさあ、バスケって団体競技じゃん?仲間?っていうの?なんてゆーか恥ずかしいけど、まあチームメイトだっているんだしさあ。まあこれが個人競技ならこちらもまた違う励ましをしますけれどもね
「先輩は教師ですか」
「人生の上ではね。先輩っていうくらいだから教師でしょう」
「…ははっ」
「(笑われた…)」
「そうですね、なんか…なにも解決してないけど、でも、元気出ました」
「なにも解決してないけどね。それが気休めってもんよ」
「そうですね」
「ま、私はただのハケン臨時マネージャーだから頼りにしなくてもいいけどさあ、かがみんとか降旗くんとか、先輩とかもっと頼ってあげたら?多分あいつら、君が思う以上に君のこと好きだよ」
「…そうですかねえ」
「そうだよ。大体、天才以外がバスケやっちゃいけないなんて誰が決めたの。クソくらえでしょそんな理論」
「クソくらえ…そうですね、確かに」

黒子くんが笑って、その笑顔を見ていたらつられるように自分の顔も綻んでいた。足にまとわりつく砂が、今はこんなに愛しい。

「あ、それから一個思ったんだけど」
「…はい」
「マシン太郎って弱いやつにしか興味ないんでしょ?」
「え?ええ、まあ…」
「じゃあ天才じゃない凡人の黒子くんに執着するはずがないじゃない?ね?」

ぱちんと、漫画なら効果音がつくくらい勢いよくウインクをしてみた。黒子くんが唖然としたような、だけど少し照れたような笑いを浮かべてこちらを見ている。

「先輩…」
「…(決まった…いいこと言った…今私最高に先輩ぶってる…!)」
…ウインク気持ち悪いです
励ましたのにこの仕打ちだよチクショウ!

なんだかんだ言ってそのあとごにょごにょとありがとうとかありがたくないとか聞こえたし(なんだありがたくないって)、私が宿舎に帰ろうとするのと入れ替わるように砂浜の向こうのほうから走ってきたかがみんのロードワークに付き合っていたっぽいし、なにか吹っ切れたんじゃないだろうか。いい顔をしていた気がする。…いや私の位置から黒子くんの顔まではっきり見えないけどね!?そこは空気読んでね!

あと黒子くん励ましたときに自分で言っててすごいことに気付いたけどマシン太郎って凡人に興味ないんだよね?私の親友だよね、あいつなんだかんだ言って私に興味持ってたよね…?(事実無根)
…私ってもしかしたら凡人とかじゃなくて普通に天才なんじゃね?



あと四話かそこらで夏の合宿編終わりますよ(事実無根のドヤ顔)
(130506)