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自室のカーテンはピンクにした。遮光カーテンとどっちにするか迷ったけど、日の光で起きる方が気持ちよくねェ?なんて言う彼の言葉で、結局普通のカーテンを買うことにしたのだ。今日もキラキラ、眩しい光で目が覚める。

そんな日がいつだったかわからなくなるくらい、涼と私はたくさんの時間を過ごしてきた。涼は私にたくさんの時間を使ってきた。野球に夢中でもちゃんと私のことを見てくれたし、私のことをいつも考えてくれていたことも、わかっていた。涼は悪くない。だけど、それはつまり私が悪いということになるのだろうか。
ぼんやりとした頭でシャア、とカーテンを開ける。外は明るく、ぽかぽかした陽光が部屋いっぱいに差し込んだ。私はカーテン越しの光のほうが好きだなあ、といつか涼に言ったら彼はぶーたれていたんだっけ、それともそうだなぁと頷いていたんだっけ。そんなことも覚えていない自分に、少しながらガッカリした。多分こうやって少しずつ、私の中で彼が消えていくのだなあ。


「涼。別れようか」
「…は。」
「私もう疲れちゃった。」
「…俺のこと、嫌いになったのか?」
「ううん、まさか」
「だったら、なんで…!」
「涼はね、なんてゆうか…」



「遠かったよ。いつもいつも」



「…」
「ありがとう。楽しかった。あと、よくわかんないけどさ、たぶん幸せだった。」

私のその言葉を聞くと、涼は俯いて、なんにも言わずに私の部屋から出ていった。結局私は謝らなかった。そういえば、お前は強情だなァ、なんて溜息を疲れたこともあったけ。涙も出ない、ごめんなさいも出ない。私が彼にしてあげられたことなんて、あったのだろうか。考えてもなにも出てこないところを見ると、きっとないのだろう。「さようなら、」私はガラス越しに呟く。自分の息で窓ガラスが白く曇った。

私にはきっと、涼が眩しすぎたのだろうなあ、と思う。強い光は私から何かを吸い取っていく。もうどうしようもないくらいに、いつのまにか苦しくなっていた。フェンス越しの彼とは、決して目を合わすことができない。バックネット裏から見えるその背中は誰よりも近いはずなのに、なぜかいつも遠く見えた。その孤独を、果たして彼は知っていたのだろうか。





明日になったらこのカーテンも変えてしまおう。がらっと雰囲気も変えて、遮光の、青いカーテンなんていいんじゃないかなあと、思案を巡らしながら、瞳を閉じた。パステルピンクも視界から消えて、真っ暗い宇宙みたいな暗闇が広がる。外されたカーテンは捨てなくちゃいけない。この部屋に馴染んだこの色が変わることも、この瞼に馴染んだその髪色が見えなくなったことも、きっとすぐに慣れてしまうのだろうなあ。





(この恋が終わる。この恋を終える。)

(120206)

企画:少女と星屑さんに参加させていただきました。
ありがとうございました。