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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -

「おはようございます!」
「なまえちゃんおはよう!」
「おはようございますみょうじさん」
「おはよー、リコちゃん、黒子くん」

今日も朝から元気いっぱいのみょうじがやってくる。ポニーテールがぽんぽんと跳ねた。Tシャツにショートパンツ。今日も白いその太ももを惜しげもなく太陽にさらしている。爽やかな装いに目を奪われる。手に抱えられた差し入れの氷菓子を差し出された。その顔にはにこにことこれ以上ないくらいの笑みが浮かんでいた。他人の目から見ても「楽しいんだな」と感じ取れた。

「じゃあ行きましょうか、海」
「海!?海に行くの?わあ、楽しみ!」
「みょうじは気楽だな…」
「オレらはどうせ砂浜を走るだけの簡単なお仕事…」
「みんな、そんなこと言うなよ!カニさんに会えるかもしんねーぞ!」
「木吉…意味わかんないよ…」
「おらお前ら!うっせえぞ!とっとと歩けダァホ!」
「キャプテンが怒ってます」
「もーどーでもいーから早くいこーぜ…暑ぃ…」

ぞろぞろと大男が連なって歩く一番後ろを、みょうじはニコニコしながらついてくる。隣を歩くリコと腕を見せ合って「こりゃあ焼けるねー」なんて言ってたから多分日焼けを気にしてる模様だ。…おい。待て。待て待て待て待て!「なんでオレはこんな盗み聞きみたいな真似をぉ!」頭を抱えて叫ぶオレのその言葉に隣を歩いていた木吉が反応した。「ん?日向、盗聴してんのか?」「き、木吉…!」「おーいみんな、日向盗聴が趣味らしいぞ!」「なんで今ここでそれを言うんだダァホ!てか違ぇよ!」「キャプテン…」「先輩…」「日向…」「え!?なにその顔!?なんでオレが悪いみたいになってんの!?誤解だよ!」もう嫌だこの部活。

「ふふ、仲いいね男子。いいなあ男の子」
「なまえちゃんもそう思う?私もよく思うのよねえ」
「だよね?いいな、私も体おもいっきし動かしたい!高く飛びたい!」
「わかるわよ〜」

みょうじの声だけがまるで音符に乗ったかのように耳を撫でる。ああもう、なんでこんなに目も耳もみょうじを追っちまうんかな。オレまじでキモチワリィ。

×××

真夏だ。炎天下だ。太陽サンサンだ。日差しが強い砂浜の下で、オレたちは練習を続ける。ようやく休憩になったが、ふっととらえたみょうじは、揺れるポニーテールの隙間から時折うなじが見え隠れしている。それを見てしまって思わず目を反らす。反らしてから、もう一度見つめた。大量の玉の汗が肌を流れていく。炎天下だ。日差しに慣れていないだろう彼女は、しかし帽子も被っていない。…大丈夫か?「日向先輩」ん、どっかから声が

「って黒子か!」
「…ボクですいません」
「わ、わりぃ。むっとすんなよ…で、なんだ?」
「…これ、貸してあげます」
「ってうぉお!どっから出したそれ!帽子!?」
「…別に日向先輩のためじゃありません、みょうじ先輩に貸してあげてください」
「…いいのか」
「早く持って行ってあげないと、倒れちゃうかもしれませんよ。みょうじ先輩はボクらと違って日に慣れていないようですから」

黒子に大きなつばのついた麦わら帽子を差し出された。いや、お前まじで今それどっから出した。そう聞き返したいが軽く流されてしまいそうだ。「黒子、サンキュ」と黒子に礼を告げ、みょうじのところに駆けだす。

「おい、みょうじ」
「…あれ?日向くん?」
「…お疲れ」
「お疲れ様。しっかし、あっついねえ〜。私倒れちゃうかも。なんちゃって。あはは」
「…これ」
「うん?」
「これ、使え」
「…麦わら帽子?え、いいよいいよ。さっきの冗談だし」
「いーから使えっての!お前に倒れられちゃ困るんだよ!」
「…」
「あっ、ばか、ちげーかんな!オレじゃなくて、みんな!特にリコとか!心配するって意味だからな!勘違いすんなよ!」
「…私、今日、ポニーテールなんだけど、被れないんだけど」
「あっ、え!?」
「ふふふ、嘘々!冗談だよ!ありがとう!貸してもらうね!」

二コリ、と思いっきり微笑まれる。月並みだが太陽みたいな笑みだと思った。少しだけ帽子を弄び、それから脇に挟む。ポニーテールを崩して適当な横結びにする。綺麗に結われていた髪が、ばらばらと解けて、ところどころぴんぴんと遅れ毛が出ている。案外適当なんだなあと思っていると、「本当にありがとうね」麦わら帽子を被ったみょうじに、ニコリとそう微笑まれた。「なまえちゃーん!」「いけない、リコちゃんが呼んでる。日向くん、私先に行くね」カントクに呼ばれたみょうじがオレに背を向けて歩きだす。もう休憩終わりか。そう思ってオレもそのあとを追おうとしたけどその前にうっと息を飲んだ。ああほら、うなじがちらり。疾しい気持ちになってそっぽを向く。頭の中をぐるぐるさせていると歩いていたみょうじがふいと足を止めてもう一回くるりと振り向いた。それほど距離は開いてない。戻ってきて、上目づかいで見つめられる。

「あ、髪の毛ぐっちゃぐちゃになってるから、あんまり見ないでね?」

…このやろう。やっぱり狙ってやってんだろこいつ。