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さつきは可愛い。可愛くてそれでいて芯がある。可憐と言う言葉で表してもいいかもしれない。長い綺麗な髪も、色素の薄い瞳も、優しく細められる目元も、全部、愛しい。私はさつきの隣にいることを許してもらっている。すごく幸せなことだと思う。なんにも持っていない私を、それでも何故かさつきは構ってくれる。完璧な容姿も、優れた才能も社交性だって私は持ち合わせていない。じゃあどうしてさつきは私といてくれてるんだろう。これから私はさつきの、なんになれるんだろう。なんて、そんな考えがおこがましいことくらいわかっている。だけどそう思うと涙が出そうになって、苦しくなっていつも考えるのをやめる。こういうふうに変に自信がないところも、私は私があんまり好きじゃない理由の一つだ。人一倍自尊心は強いくせに、変なところで謙遜してしまう。全て傷付きたくないだけのポーズだ。そんなことないよ、って言って笑って、私は駄目なやつだと絶望する、ふりを、するだけ。ポーズをとるだけなら、自分が思ってるよりずっと簡単にできてしまう。できてしまうから困ってしまう。
もちろん嫌いだとは思わない。自分がなにもできないやつだなんて、多分私はほんとは思ってない。だけどだからと言って好きかと問われれば、とてもじゃないけど首を縦に振る気にはなれない。自分のことですらこんなに中途半端な私は、だとしたらこれからさつき以外に誰かを好きになれるのだろうか。私が好きなさつきが誰かを好きになったとき、私はなにを考えるのだろうか。わからない、わからない、なあんにも、わかんない。でももしかしたらそれだって、ふりを、しているだけかもしれない。
不思議なことに、それでも誰かを素敵だと思ったり、美しいと思ったりはするらしい。嘘ではない。それは私の中で主にさつきだったけど。さつきが大事で、さつきが大切で、誰より愛しい。友情とも愛情とも多分違う。さつきは私の中で、もはや聖女と同じだった。私はきっとさつきを崇拝している。そうだ、これは崇拝だ。さつきが好きだ。だけど見返りはいらない。だから、見返りはいらない。
「さつきは可愛いね」
「もー、またそれ?恥ずかしいよー」
「だってほんとのことだもの、私はさつきが好きだよ」
「そんなことないよ、なまえのほうが可愛いじゃない。私、なまえのこと大好きよ」
さつきがにこりと笑う。嫌みなんてどこにも含まれていないような笑みで。ねえさつき、私の可愛いを、私の好きを、女の子同士の茶番なんかにしちゃわないで。好きって言われたから好きだなんて返すような安い言葉なら、ほしくないよ。私はあなたが好きなの。私はあなたが、好きなの。私の好きを支えるのは多分、あなたを他の誰よりも好きなのだというプライドだけよ。そう、プライド。他人から見ればきっとすごく些細で、くだらないもの。そんなくだらないものが、いつかさつきより大きくなっちゃう気がして、私はいつだって先を考えるのが怖い。さつきがいなくたってプライドだけで成り立つようになってしまう自分になることが、怖い。だけど今はただ、さつきのことがね、好きなんだ。それだけなの。好きになってもらえなくてもいいのに。心の中にある魔女のかまどで、私が大声で喚いている。熱いよ、熱いよ、助けてよ。どうして上手に届かないのかな、ねえさつき、大好きなの。




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