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「#エロ」のBL小説を読む
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どどどどうしましょうどうして私はこんな漫画みたいな場面に立ち会ってしまったでしょうか。みょうじなまえ15歳、と数カ月。毎日慎ましく真面目に実直に生きてきたつもりです。人の悪口だってあんまり言わないようにしてるしお金だって大事に使ってるつもりです。なのにアーメン、天にまします我らの父よ、どうしてこんな現場に私をよこしたのですか…こんなに真面目に生きてる人間、きっと少数派ですよ。ビビりなだけですけど、それでも!…………ん?あれ?だけどよく考えたら、私昔から運が悪かったかもしれない。お姉ちゃんとおつかいに行って私だけ近所で怖いと有名な大型犬の前で転んでみたり、テストで唯一勉強し忘れたところが当日どーんと出たりとか、ジャージを忘れた日に限って体育が外でしかもすっごい寒かったりとか。あ、そっか。ということはこの場面に居合わせた不幸も通常運転ってことですね、安心しましたジーザス。

「…ごめん、オレ、今はバスケに夢中っスから!あ、でも!ありがとうっス、これからも応援してくれたら嬉しいかなって」
「…そ、っか、ううん。ごめんなさい、でも、これからも応援してるね黄瀬くん」
「ほんとっスか!嬉しいっス」
「私こそ、ちゃんと考えてくれて嬉しかった!ありがとうね!じゃあ、さよなら!」

がががが学校でも有名なキラキラ系イケメンの黄瀬くんが、告白されて現場に居合わせてしまったのが私みょうじなまえなのでございます。…さあ、はじまりました選手権大会、実況はみょうじなまえ、解説はみょうじなまえでお送りします。さあでは解説のなまえさん現在の状況を分かりやすく説明していただけますか。はい、丁度今黄瀬選手の向かい側にいる女子生徒が告白をしたようですね。これは告白の返事をしようとしているのか、黄瀬選手が口を開いた…おーっと黄瀬選手、痛烈な一打!しかしその後のフォローを欠かさない!さすがですねー、あれはポイント高いでしょうね。女の子の方も振られたのに心なしか嬉しそうな笑顔を浮かべていますね!非常に好印象です。おおっとお、黄瀬選手ここでダメ押しの笑顔!解説のなまえさんこれをどう見ますか。クリティカルでしたね〜、いやあ今のは良かった。高得点を期待できますね。おおっとお走り去った女子生徒の後姿を一瞥すると黄瀬選手がカメラのほうを向いていますね!そうですねこちらをまっすぐ見ていま…て、あれ?黄瀬選手が…いや、黄瀬くんがこちらへすたすたと歩いてきている?え、ちょ、気付かれてた…!?頭の裏側で実況のみょうじなまえ、解説のみょうじなまえでお送りしました〜という声がぼんやり聞こえた気がしました。あと近づいてくる黄瀬くんの顔が無表情すぎて怖いです。

「なーにしてんスか?」
「う、あ、や、き、せくん、ごめんなさい、そんなつもりはなくってですね!」
「オレ、なにしてんのかって聞いてんだけど」
「ひい、えっと、ごめんなさいゴミ捨てを頼まれまして!で、ここを通ったらですね!たまたま黄瀬くんのあのような現場に立ち会ってしまってですね!」
「なんかそんな言い方するとオレが学校でできないことやってたみたいじゃん」
「が、っこうでできないこと…」
「ははっ、アンタ顔真っ赤っスよ?何想像してんの?」
「うえ!?い、いや別に…!」
「ウケる…!でも、目撃したら黙ってUターンすればよかったよね?それを黙って見つめてたってことは…あんたもしかして、オレのストーカー?」
「は、はあっ!?ななななに言ってんすか意味わかんないですよ…!」
「まあいいんだけどね別に見られても」
「う、へ?はい?」
「よく考えたら、あんなふうにたかってくる馬鹿女の中の一人のために時間取ってやってるオレってまじでえらいスよね」
「…!(ぱくぱく)」
「あ、でもオレのストーカーもその中の一人ってことか。さっきの忘れてやるからさあ、ちょっと分かりやすくめんどくさいってこと言っといてくんねーっスか、もちろんオブラートに包んで」
「…!(ぱくぱく)」
「ほんと、砂糖に群がる蟻みたいスよね、あんたらって」
「あの…きゃ、キャラが違うんですけど黄瀬くん…!」
「はー?あんたらが勝手に作ったキャラっしょ?んなもん知らねーよ」
「…まあ、確かに、そうですけど、でも、あの、自分のこと好いてくれてる女の子たちのことそんな言い方はないんじゃないかなって、思ったり、して…あと私、別に黄瀬くんのファンじゃないし…」
「…」
「…(沈黙が痛い…!)」
「…そっかそっか、そんで、オレのストーカーはゴミ捨て行かなくていいの?」
「…あ!」

そう言ったはずみでばさばさあっと、持っていたゴミ箱が手から滑り落ちていきます。散乱したゴミが黄瀬くんの足にダイレクトヒット!というよりは黄瀬くんの足を覆いました。ぷうんと、ゴミ特有のいやな臭いが香ります。これにはさすがの黄瀬くんも動揺したらしく慌ててゴミの山から足を引き出していました。お昼に生徒が食べた弁当についていたのだろう、ケチャップが上履きに付着しています。ターン変わりまして今度は私が絶句する番です。

「いやあの、ほんと謝りますし忘れますあとズボンと上履きは弁償します…!」
「名前なんつうの?」
「ごめんなさいごめんなさいぃぃ、…て、え?今なんと?」
「だーから、名前。教えてよ」
「あ、えと、…みょうじ、なまえです…」
「そっか、オレは黄瀬涼太。…て、知ってるっスよね」
「ぞ、存じております…」
「あとみょうじサン、要領悪ぃってよく言われない?」
「え!?なんでそれを…!」
「まあいいや。なんかオレあんたと仲良くなれそーな気がするっス。これからよろしく、ね。ストーカーさん?」

黄瀬くんがにっこりと毒気のない笑みで笑いました。なのに中身が毒気だらけです。ゴミが被ってない部分からも腐臭がします。というか、あれ、ていうかさっきからストーカーって言われ続けてるんですけど、違うんですけどおおおお。…あれえ?私、もしかしてエビどころかゴミで鯛を釣っちゃった感じですか?


スカートのひだに潜ってみたい



麻衣さん リクエスト ありがとうございました!
(120811)(120817 修正)