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常々思っていたけど、神様って不公平だ。

「…なにじろじろ見てんだよ」
「火神でかすぎ」
「は」
「だからあ、火神はでかすぎだって言ってんの!身長!」
「んだそれ…」
「言ってみなさいよ!何センチ!何センチあるのよ!?」
「なんでキレてんだよ…えーっと?190?とか?まあそんぐらいじゃね」
「ひゃ、ひゃくきゅうじゅうだとお…!」
「うわ、いてっ!なんなんだよおまえ、なんでオレ殴られてんの!?」
「ずるい!ずるいよ!」
「理不尽だ!!!」

体育館の片隅で、部活も終わって火神と対峙する。火神の身長に衝撃を受けて、こぶしを作って火神を殴ってみる。痛い痛いという割に火神の筋肉は硬くって、なんだか男の子って感じで、びくともしない。
おとこのこっていいなあ。常々思う。私だってダンクしたり、かっこよくリバウンドとったりしてみたい。身長さえあれば、そう、身長さえあれば。私の身長じゃどう頑張ってもダンクはできないのだ。私だって青春の汗を流したかったです安西先生。花道君はどこですか。

「不公平だ…」
「まだ言うかお前…いいから片づけしよーぜ」
「花道君と同じくらいじゃない…あれ、私それは漫画の中だけの話だと思ってたよ…?」
「しらねーよ」
「うう、花道君をください…」
「てーか木吉先輩だってもっとたけえじゃん」
「おお…!確かに…!」

火神しか見えてませんでした、なんて言葉だけにすれば砂糖吐き出しそうなほど甘いセリフだけど、それはただ一番火神と触れ合う機会があるからの話だ。大体木吉先輩なんぞ恐れ多すぎて自分からはとても近づけません。あの人よくお菓子くれるけど。あきれ顔で見ていた火神くんが、その場にかがんだ。どうしたの火神クン。おなかでも痛いのかいベイビー?でぃすいずすとまっくえーいく?

「…腹痛?」
「ばっ…ちっげーよ!ほら!してやっから!」
「火神…ほんとに国語苦手なのね…ふぇあいず目的語ー?」
「あー、うっせーな!肩車してやるっつってんだよ!」
「肩車…私を…!?」
「肩車したらオレの見てる目線以上いけるだろ、お前のほうが上だ。不公平じゃねえだろ」
「なあんか子供扱いされてる感が否めないんですけど…」
「子供が何言ってんだ。まあボールもったら不安定で危ねえけど、バックボードにタッチするくらいならできるだろ。ほら、早く乗れ」
「え、リング下でいいよ、なんでこっからわざわざ肩車してもらわないといけないの」
「いーから早く乗れっての!」
「い、いえすまいろーど」

火神のテンションと語気にたじろいで、思わず了解の意を示してしまった。仕方なく彼の首元にまたがる。け、結構これ恥ずかしいわね…!火神が立ち上がるのに比例して私の視界レベルもぐんとあがる。お、おお、おおおおお!

「高いぃぃ…!」
「へへ、どうっすかねなまえちゃん」
「や、やばいね想像以上にこれは…高い…!」
「じゃ歩くぞー」
「ふ、ふおおおやめ、ゆっくり!もっとゆっくり、あ、!」
「…なんか卑猥だな」
「この状況でそんなこと考える火神が卑猥だよ!」
「ほら、どうだ?」
「り、リングって意外とおっきいね…!」
「ははっ、オレも前リング壊したとき、それ思ったわ」
「…ねえ火神」
「んだよ?感動した?」
「…」
「…」
「…私高所恐怖症かもしれない、ちびりそう、ごめん下ろして…!」
「はあ!?ちょ、ふざけんな…!」

慎重に火神が屈んだ。視界がいつもどおりに再設定される。慌てて降りて地が足についているってこんなに幸せなことなのね。安西先生すみません、私やっぱりダンクはできなくてもいいです。

「はあ…怖かった…」
「地上2メートル30センチの世界はどうだった?」
「うん、私青春の汗いいわ、いらないわ」
「意味わかんねー」
「火神には一生わかんないよ」
「…でもなまえが女じゃねーとこういうことできねえし、いんじゃね?」
「う?お?おい?火神?」
「はは。まあさっきの卑猥ななまえちゃんがいけねえかな」

おいおい、ここをどこだと思っているの。神聖なる体育館ですよ。安西先生に土下座してください。まったくもう、火神クンてばハレンチさんね。



僕のかわいいエトワール




紅太さん リクエスト ありがとうございました!
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