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「みょうじなまえ、高校二年生です。よろしくね」

そう言った彼女の顔があんまりにも、なんというかその、綺麗、で、オレは思わず舌の上でその名前を転がしてしまった。…何してんだオレは。

「おーい!あんたら何やってんの!そろそろ休憩終了よ…って、あれ?」
「あっ!カントク!わりぃ…!」
「その子、だあれ?見たところ、ここらへんの子?」
「えっと、ううん。ここらへんにおばあちゃんが住んでる子です」
「えっ、そうなのお!?えーと、…みょうじサン」
「そうだよー、日向くんにはこれも言ってなかったっけ?」
「そんなん初めて聞いたわ今」
「ちょっとお、なんで日向くんだけそんなケンカ腰ぃ?ごめんなさいって言ってんじゃんか」
「えーと、みょうじはあれか?夏休みでおばあちゃん家に遊びに来てる、とか」
「そうだよ、えーと…ごめん名前わかんないけど、大正解!」
「わるい、自己紹介が遅れたな。木吉だ。木吉鉄平。高校二年生。同い年だな」
「そっか、木吉くんね!」
「ちょっとお、ちゃんと説明しなさいよ鉄平」
「えっとな、だから簡潔に言うと、昨日日向が言ってた”人助け”ってのはこの人にしたやつだったってことだよ」
「はじめまして!みょうじなまえって言います!見たところあなたも同学年だよね?」
「あら、初めまして。私、相田リコ。鉄平と同い年で高2よ」
「やっぱり!え、リコちゃんは監督さんなの?」
「まあ、そんな大層なものでもない…と謙遜したいところだけど、そうね、カントクをやらせてもらってる。私もなまえちゃんって呼んでもいいかな?」
「いいよいいよ〜大歓迎!すごい!高校生で監督なんて、ちょうかっこいいじゃん!」
「あの〜、スンマセンお二方」
「なに?」
「どうしたのキャプテン?」
「練習、始めてもいいっスか」
「…あ」
「ごっめーん!よし!とりあえず体育館入ろ!なまえちゃんも、どう?暇なら少し見ていかない?」
「いいの!?行く行く!」
「は〜、女子って仲良くなるのマジ早いよな〜」
「コガ先輩だってあれくらい余裕だと思いますよ」
「ほんと!?黒子それ、褒めてる…?」
「褒めてます褒めてます。次のメニューなんですかね」
「適当じゃん!」

なんてことを言いながらぞろぞろと体育館に入っていく部員に続き、一番最後に体育館に入る。人知れず溜息をついた。なあんでオレは笑顔に見惚れたりしてんだダァホ。大体あんなに失礼な女、女としてより人間としてどうかって感じじゃないか。オレの前を歩いていた木吉が突然振り返って、二コリとオレに笑いかけてきた。…なんだその意味ありげな微笑みは。こいつのこういうところがオレは嫌いだ。まじうぜえ。
体育館に入って、センターサークルに集合する。ぺちぺちと、サンダルを脱いで裸足になったみょうじ、サンも当然のようにそこにいた。カントクー、オレ、とても嫌な予感がするんスけどー。

「んーと、じゃあ!とりあえずなまえちゃんに自己紹介しよっか!」
「えええ、なんだそれえ…?」
「まあまあいいじゃない、日中暇だからこれから練習の補佐してくれるって言ってくれたのよさっき」
「あの短時間でか…!…っスか…!?」
「女子コミュ力ありすぎってか決断力ありすぎでしょ!」
「小金井君うるさい。何か質問ある人!」
「はい」
「なに?黒子君」
「ボクたち、その人のことなんて呼べばいいんですか?」
「あー、えーと、うん、そうだな。」
「みょうじさんとか、みょうじ先輩とか、まあみょうじでも全然構わないよー!適当に!」
「じゃあ、小金井君から順番にお願い!」

威勢のいいカントクの掛け声で、自己紹介が始まる。みょうじサンはニコニコしながらそれを聞いていた。時折一人一人指さしさながら確認作業っぽいことをしていた。

「はいじゃあラスト、日向君」
「あ?オレか。えーっと、もう知ってっかもしんねえけど日向順平です。高2で、えーっと一応この部のキャプテンやらしてもらってます。あー?あとなんか、言うことあるか?」
「キャプテーン、彼女はいるんスかー!」
「コガ黙れ、てかてめえもいねーだろ、彼女はいません、いりません」
「バスケが恋人ですもんね」
「なあんか黒子のそれは嫌み入ってね?お前自分はあんな巨乳の彼女がいるからって」
「桃井さんのことですか。あの人は彼女じゃありません」
「あーあー、はい!もうオッケー!なまえちゃん、大体分かった?」
「うん!まあわかんなかったらその都度確認しちゃうけど許してください…!」
「オッケー!じゃあ練習、始めましょうか!」

カントクが練習メニューの説明を始めるなかで、みょうじサンはするりと円を抜けてコートの外、壁際に走って行った。それを追っていると目が合う。がんばれ、の形に口が動いた。にこりと微笑まれて手を振られた。それには応えず慌てて円陣の中のほうを向きなおす。…くそ、いけねー。やっぱかわいいじゃねえか。夏のせいだと、火照った頭をぶんぶん振った。