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その日もやけに天気がよくて、代わり映えしない一日だった。

「高尾、バスケしねえ?」
「お、いいねえ、やるやる!」
「よっしゃ、いこーぜ!」
「ちょっと高尾、今日数学板書だよ!あんんたやってんのー?」
「ゲッ、まじかよー…やってねえし!うわ、ワリィ!今日は止めとくわ!」
「マジかよー、しっかりしろよなー!あ、じゃあ、終わったら来いよ!コートいるからさ!」
「りょーかい!光の速さで終わらしちゃうぜ!…おい、サトー、数学やってんだろー?見せてくんねえ?」
「もー、仕方ないなあ」

折角昼休みにバスケに誘われたのに数学の板書という大きな強敵に道をふさがれてしまった。無念。くそー、運悪ぃなあ。最近おは朝見逃してっからか?いかんいかん、緑間に引きずられてどうする。オレを誘った友達はいつの間にか教室を出て行ってしまった。数学の板書だと教えてくれたサトーが呆れた顔でノートを差し出してくる。まじ神。助かった。これで数学の時間は乗り越えることができるみたいだ。

「あざーす!まじ助かる!」
「もー、ほんと仕方ないなあ、高尾は」
「てかなんでお前オレの順番把握してんの、すげーな」
「は、はあ?あんたの次私だからついでに覚えてただけだっつーの!」

…イカン。今のは失言だった。ごめんなさいサトー。心の中で合掌する。サトーの瞳がゆらりと揺れるのを見て見ぬふりをした。
こんな目を持ってるからか、オレはやっぱり少しだけ視野が広い。と、思う。結構、人の気持ちとかそういうのにも敏感な方だ。クラスのだれだれがだれそれのこと好きだとか、実は苦手だとか、あ、こいつオレのこと嫌いだなーとか。まあもちろん、こいつオレのこと好きだなーっていうのも、わりとわかってしまう。自分で言っていてジイシキカジョーなのはわかっているのだけど、でも大体において、外れてはないのだと、思う。
だからと言ってどうするわけでもないし、そもそもどうこうできるわけでもないのだ。だからなんにもしないで、気付かないふりをして通り過ぎるのが一番だと知っている。ゴメンナサイ、オレはオレが一番大事ですー、なんちゃって。だけどわざわざ敵を増やす必要もないっていうのは、当たり前の意見じゃないかとも思うのだけれど。

「まっじ助かるー!てか意外と板書多くね?ヤバくねこれ」
「なんでやってこないのよ馬鹿、期末でそこ結構大事だよ」
「いいって、そんときはまたお前に教えてもらうから」
「…うわー、調子乗ってる。高尾まじないわー」
「ごめん、高尾くん」
「ぅわっ」
「びっ、くりした…!みょうじさんか」
「ごめんなさい、そこ、私の席なの」
「え?」
「…私も数学の課題、忘れてて、だから、やんなくちゃいけないから、どいてくれないかな」
「…びっくりした。みょうじさん、言い方もっとあるんじゃないの…」
「ごめんなさい。でも、必要なの」
「わーわー!まあ別にいいじゃん!オレ、自分の席でやってくるって!」
「はあ?」
「サトー、ノートかして!みょうじさんマジでワリィ!」
「ううん、こっちこそごめん、高尾くん」
「まあいいけどー。私も高尾の席行くし」
「おー、そうしよーぜ!」

みょうじさんに声をかけられたときはマジでビビった。オレの席へ移動しながら、ふと、誠凛の黒子ってこんな感じの存在感なんだろうかとか思う。それなら同じチームメイトだったりクラスメイトだったらすげえ困るだろうなあ。いや、オレだったら多分見えるだろうけど、でも、ちょっと待てよ。日常生活でもあの存在感だったらもしかしたら見つけられねえかもしれねえな。…それ、ヤバくね?

「はー、びっくりした、みょうじさん、あんないきなり声かけてくる必要ないのにね」
「あー、まあ確かにな」
「なあんか、あの子絡みにくいんだよなあ」
「うーん、まあ、そういうところ、あるかもしんねえなあ」
「悪い子じゃないんだろうけどね」
「…そーだな」

言いながら横目でちらりとみょうじさんを見やると、彼女はすでにこちらに注意など示していなかった。音楽に夢中なのだろう。耳元からイヤホンと思われるヒモが見える。目の前のサトーに目を戻す。彼女は自分の爪を見ていた。ていうか、それ、オレあんまり好きじゃねえなあ。文句みたいな、悪口みたいな?なんてゆうんだろう、悪意の塊みたいなそういうのを言うだけ言って、そうやって最後にちょっと持ち上げて全部なかったことみたいにするやつ。悪い子じゃないんだけどね、って、それ言えばその前の悪意全部なかったことになるとでも思ってんの?そんなことは思ってるだけで、もちろん間違っても口にはしない。まあいーんだけど。それはオンナノコ同士の問題で、多分、オレにはあんまりカンケ―ないし。
窓から見える風景があんまりにいつも通りで、ふああと欠伸をする。なんだか眠くなってきた。