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「たーかーおー!先輩が呼んでるよー!」
「あー?ちょっと待って、今行く!」

教室付近の席に座っているクラスメイトから声をかけられた。そちらの方を見るとキャプテンが怖い顔をして立っていた。慌てて駆け寄る。やっべえ、オレなんかしたかなー。してねえと思うんだけど、呼び出し?

「おお、高尾。悪いな、部活の連絡だ」
「…えー、あー、なんだ、びっくりしたっス。なんかオレやっちまったんかと…」
「なんだ?なんか心当たりあんのか?」
「いやー、まさか!ないっスよ!!」
「…まあいい、緑間にも…」

キャプテンがちらりと教室の奥に座る緑間を見やった。「…伝えておいてくれ」あ、ちょっと今、目ぇ伏せたなー、気まずいとか思ってんのかなー。そんなあられもない想像をして、でも思っていることは言わないでにいっと笑って返事をする。「りょーかいっス!任せてください!」意識的に、気前のいい笑みを見せると、キャプテンは特に顔を崩しはしなかった。そしてすぐに本題に入る。淡々と業務連絡を伝えられる。「わっかりました。伝えとくっス」「頼んだ。じゃあ、また部活でな」「ういーっス!」キャプテンの背中が遠ざかっていく。というか、連絡なんてケータイでよかったんじゃねえの?なんてぼんやり思っていると、オレを呼んでくれた女子が話しかけてきた。「今のキャプテンさんなんだ?なんていうか、いかついねえ」「ははっ、まあ、バスケ部だからな。でもそれ言うなら真ちゃんだって巨人じゃん。あれっぽいよな、なんだっけ、巨神兵?」「うわー、最低。でもまあ確かに。…高尾は小さくて可哀想だねえ」「余計なお世話だっつーの!あ、やべ、真ちゃんとこ行かねーと!サンキュな!」そう言ってその場を後にする。緑間は自分の席で本を読んでいた。相変わらず近寄り難い雰囲気醸し出してんなあ、近づきづれーだろ。

「しーんちゃん!」
「…なんだ高尾、うるさいのだよ」
「ギョームレンラクだぜ、部活の」
「ああ、そういえばさっきキャプテンが来ていたな」
「おっまえ気付いてたのかよ…気付いてたんなら来いよ」
「どうしてだ」
「いや…なんてーか、部活の先輩後輩なんてそんなもんだろ。挨拶は基本だぜ?」
「意味が分からん。それに、呼ばれたのはお前だろう」
「いやそーだけどさ…あー。まあいいや。とりあえず、連絡な」

緑間は、はっきり言ってバスケ部内で浮いている。さっきのキャプテンの態度からも明らかに。まあ、いいんだけど、まあキャプテン自身もかなり複雑だろうなあ。いくらキセキの世代とはいえ、ぽっと出の一年がエースだしなあ。しかも、宮地サンとかもっと過激な人たちを押さえる必要もあるし、主将って大変だよな、シンチューお察しします、といった感じだ。いやまあ、嫌われてる…ってわけでもねえんだろうけど、でも、主将自身もあんまり得意なタイプではないんだろうなあ。というか大体、こいつ自身も正直ずれている。ちょっとじゃなくてだいぶ。なーんかこう、通じねえんだよなあ。先輩の命令は絶対、なんてスポ根染みたことを言うつもりはないけど、まあある程度先輩は敬うべきなんじゃねえの?中学で何を学んできたんだお前は…と思ったところで、あ、そういえばこいつ特殊な環境にいたんだったな、といつも思い出す。といったって、これは完璧に教育ミスじゃなかろうか。ていうかキセキの世代ってこんなんばっかなのか…?いや、てわけでもねーのか、あの、誠凛の黒子なんて普通だったしなあ。とにかく真ちゃんの性格、なんとかして高校のうちにオレが矯正してやんねーと。これからのためにもな。って、いや、オレ、真ちゃんの母親じゃねーんだけど!

「はあああ」
「何をため息なんかついているのだよ、高尾」
「うるっせえなお前のせいだ!バカヤロ―!」
「馬鹿という方が馬鹿なのだよ」
「真ちゃんまじうぜえんだけど…!」