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フラれました。私は人生で初めて無生物に敗北を記しました。信じられません。そりゃ私、とくに可愛くもないし彼の幼馴染みたいにナイスバディでもないしだからといって勉強もお料理もお裁縫も全部人並み。…いや、見栄を張りました。お裁縫は人並み以下でした。あと生物も。だけどまさか、無生物に負けるとは。いっそ相手があの幼馴染ちゃんだったらどれだけマシだったか。まさか、まさかバスケットボールが相手なんて。

「…青峰くん、なんでここにいるの?」

なんでしょう、この人ほんとになんなんでしょう。私が下校しようと校門に出ると、青峰くんは独りでそこに立っていました。今日は委員会の仕事が長引いて、帰るころには外は真っ暗でした。まさか青峰くんと遭遇するとは思わなかったので、面食らいます。やっぱりどうしたって気まずいから、知らないふりをして帰ってしまえば良かった。今からでも遅くないでしょうか。何も答えない青峰くんの横を黙って通り過ぎることにます。ちょうど部活が終わったばかりなのか、彼の髪からはうっすらシャンプーのにおいがしました。

「おいなまえ」

そうすれ違いざまに声をかけられたかと思うと、手首をぎゅっと掴まれ引っ張られました。体がぐいいと青峰くんに吸い寄せられていくのが自分でも分かりました。意味が分からないと頭を混乱させていたら青峰くんの顔が近づいてきて、辺りが真っ暗になって、それから、かちん、と歯がぶつかる音がします。…今私、もしかしてキスをされたのでしょうか。

「…なにすんの」
「別に」
「私、お付き合いしてる人以外とチューする趣味とかないんですけど」
「うるせえ」
「…あの、離してくれない?」
「好き」
「あお、みねく」
「ごめん、別れるとか無理」
「…」
「オレともっかい付き合って」
「…ほ、んとに?」
「わりぃ、オレ、アホだからうまくいえねーけど、なまえが隣にいないとなんか、むずむずする」

むずむずする、なんて原始的な彼らしい言葉でしょう。そんな彼がおかしくって愛しくって、くすくすと笑いました。忘れてました、恋とバスケットボール、どっちかなんて選べるわけなかったんです。選択するまでもなく、全部丸ごと攫っていく。なんてったって彼は王様なのですから。「…うん。あのね、私も、むずむずする。だから、隣にいさせてください」そう言って、できるだけ綺麗に見える顔でニコリと笑いました、と思ったはずなのにぽろぽろ目から何か零れ落ちてきたのだからお間抜けなお話です。そんな私を見て、青峰くんが少し目を見開いたかと思ったら、いつものシニカルな笑いを顔に浮かべました。「なに泣いてんだよ」あんたのせいです、アホ峰くん。

















えりさん リクエスト ありがとうございました!
(120723)