夏合宿、やっちゃお! というわけでノリと勢いだけで突っ走る見切り発車です。 「ちょっとリコー、なんで私がこんなことしなくちゃいけないのよ」 「あんたくらいしかいなかったのよー、どうせ暇でしょ?夏休みだってのにぐーたら寝てアイス食ってるだけでしょ?」 「ぐっ、なぜそれを…!」 夏休みだ。高校二年の夏休み、それはつまり高校生活で一番ぐーたらできる夏休みということだ。普段ならソッコーでテレビの前のソファを占領して一日中ごろごろしてるはずだが、なぜか私は海にいた。え、本当になんで!? *** 話は終業式まで遡る。一学期最後の日、つまり終業式が終わって大量の宿題となんともいえないビミョーな通知表に吐き気を覚えたのも束の間、るんるん気分でスキップしながら帰ろうとしたらがっしりと首根っこを掴まれたからだ。振り返りたくても振り返れない状態で視線だけやってもまったく見えない。「ねえ、お願いがあるんだけどー(はあと)」聞こえる声からリコだと判断できた。お前はどこぞの殺し屋か! 「ねえ、夏休み、暇でしょ?」 「えっ、何言ってんの暇じゃないよ」 「嘘つけ!ネタはあがってんのよ!つべこべ言わずついてきなさい!」 「えええええ」 理不尽なことを言われ軽くおののいていると、リコが説明を始めた。まあ要約すると夏合宿についてきてほしいということらしい。ええ、嫌だよめんどくさい!リコはそんな私の精一杯の悲鳴をあっさり無視し、まあまあ〜とか言ってる始末。 「そもそも私野球部とか日向君しか知らんし!」 「大丈夫!あんたならなんとかなるわ!」 「ならねーよ!馬鹿なの!?」 「ちょっといいか?」 「あらーキャプテン」 「すまない、やってもらえないか?」 「げ、日向君…?」 私が渋っているのを見るに見かねたのか、主将本人のお出ましだ。日向君は申し訳なさそうに私を見ながら、満面の笑みを浮かべるリコに目を配る。 「…やってくれないか?」 その鬼気迫った視線で私は悟った。そういえばリコの料理って殺人級だった気がする。一回作ってきたお弁当がグロテスクな何かだったことを思い出す。いや、うん、私もあまりの壮絶さに記憶から抹消したからよく覚えてないけど… 「お願いします!!!」 後ろを振り返るといつの間にかバスケ部の大男たちがずらりと並んでいた。デカい分威圧感も半端ない。しかしみんな一心に私のことを見つめている。その瞳が真に迫っている。そんなにリコの料理嫌なの!?え、なんか参加する流れになってんですけど!ちょっと待って!待って!えええええ嫌だし何この部活ちょう怖いんですけどおおおお 続くよ! とりあえず参加決定。 (120612) |