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その日、私は本物のイケメンというものを初めて目撃した。「…カッコイイ」いつのまにか口から漏れ出た言葉はどうやら音に乗っていたらしく、それは隣にいた友達がほうと息をつくのと同時だった。彼がスタスタと歩く中、周囲は奇妙に静まり返っていた。かと思えば彼が通り過ぎると途端にぱちんと泡が弾けたようにきゃあきゃあと黄色い声が上がる。キラキラと太陽の光を反射する金色の髪が彼の歩みと共にサラサラと靡いた。「…かっこよかったね」「…」「なまえ?」そう、これは所謂あれだ、ヒトメボレってやつに違いない。それから一か月。私は黒子と夕方の道路を歩いていた。「ねえ〜黒・子・ク・ン!お願いがあるんだけどぉ〜」「なんですか突然。なまえさんキモいです」「ひっどい!女の子にいう言葉じゃないんですけどおー。なまえちゃん傷ついちゃった!」「本当に気持ち悪いです、話しかけないでくれませんか」「ふふふ、恋する乙女をなめないでほしいな!今日私は朝起きた時に黒子に黄瀬くんのアドレスを聞くって決意してきたんだから!つまりこれはノルマよノルマ。ノルマってわかる?最低限達成しなくちゃいけない目標のことよ!」「意味が分かりません。それにアドレスは個人情報です」「なまえ諦めない!」「貴方はアホですか」「諦めない!」「ダメだこの人は…」金髪に黒いピアスをつけたあのイケメンは黄瀬涼太と言うらしい。友達が後から教えてくれた。現役バスケットプレーヤーでありながらモデルもやっているらしく、彼が表紙を飾る雑誌をその友達が見せてくれた。雑誌に載っているプライベートとはまた違った営業用スマイルも文句のつけようがないほどイケメンだったので、なんかもう本当にイケメンなんだなっていうのが、私の出した結論だ。そしてなぜ私が彼のプライベートを知っているかというとそれは隣にいる黒子とクラスメイトの火神とマジバに行ったときに偶然黄瀬くん?いや黄瀬様が現れたからだ。そのときの私の興奮というともう説明しなくてもきっと分かってもらえると思う。その黄瀬くん?ええいもう黄瀬様と呼ぶべき存在だ彼は、そう、その黄瀬様はなんと黒子の中学の時の同級生でなおかつ部活のチームメイトということが判明したのだ。なんたる幸福!いやあなまえちゃん痺れたね。神様って本当にいるんだなと思いました、まる。おかげで私はなんとあの憧れの黄瀬様とお話をし、なおかつ握手までしてもらうことができたのだ。なんたる眼福!私が興奮して意味の分からないことを口走って号泣したのはさておき、そのとき私はパ二クりすぎてそのまま彼と別れてしまい、連絡先を聞くことができなかったのだ。図々しい?聞こえません。恋する乙女もとい肉食系女子をなめないでほしいな!近くに糸口があるのなら掘り起こしてでも使います。ということで黒子、私に彼のアドレスを献上しなさい。「まあ、端的に言ってなまえさんに黄瀬くんはもったいないですよね」「コラ!黒子クン!意味の分からないこと口走らない!」「現実見た方がいいですよ」「ちょっと、なんのためにマジバのシェイク奢ってやったと思ってんのふざけんな教えなさいよ」「奢ってもらうとは言いましたが教えるとは一言も言ってません」「一休さんかあんたは!」クソ〜、この小坊主め!小賢しい!屏風の中に閉じ込めるわよ!黒子はいきりたつ私を気にも留めずじゅるじゅるとシェイクを啜った。「もー、教えなさいよ!じゃないと私、なんのためにわざわざマジバまで来たのよお」「僕はデートのつもりでしたけど」「はい?」なになにごめん聞こえなかった、もっと大きな声で!あんた影も薄けりゃ声も小さいのね。「…まあ、だから、なまえさんは僕にしとけばいいんじゃないですか」「え?」はい?「好きですよ、なまえさん」…なんですと?





悪夢






香辛料

山椒は小粒でもぴりりと辛いものですよ




黄瀬は本来こういう扱いのはずなんだと思う。
(120623)