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確か地理の授業だったか、もう忘れてしまったけど南極の氷がずさあ、と溶け落ちて海になってしまう動画を見せられたとき私は驚いたというよりは恐怖を感じた。だって南極ですよ?あのすごく寒い南極大陸ですよ?あそこでならソフトクリームを食べてもきっとコーンの部分がふにゃふにゃにならないだろうと思われる南極のですよ?氷が溶けるんですよ?つまり世界は結構簡単にひっくり返ってしまうかもしれない。嫌よ私、来月発売の漫画の新刊を買わなくちゃいけないんだから。今持ってる最新刊がすっごく気になるところで終わったんだから。

「それでね、テツヤくん。火神くんがまた怒ってたよ」
「火神くんの言うことを一から十まで真に受けていたらこっちの身が持ちません」
「ははは、確かにね」
「はあ…それにしても寒いですね」
「もう冬だね」
「そうですね…あっという間です」
「…試合、頑張ってね」
「ありがとうございます」
「私、見に行くからね、一つも残さず全部、」
「なまえさんが来てくれれば僕もいっそう頑張れます」
「そうかなあ」
「信じてないでしょ、本当ですよ」

にしたってちょっと寒すぎるのではないだろうか。はあ、と自分の手に息を吹きかけたりして寒さを誤魔化していると、テツヤくんがなんでもないように私の手を握る。慣れているなあ、と少し悲しいような悔しいような、もやもやした気持ちになる。テツヤくんは今までも、私じゃない誰かの手をこんなふうに、まるで宝物みたいに扱ってきたのだろうか。

「どうしました?なにかありましたか?」
「え?ううん、なんでもないよ」
「だけど、眉根が寄っています」
「え…そんなことないけど、ただ」
「ただ?」
「…テツヤくん、手繋ぐの慣れてるなあって」
「…」
「あ、別にそんなつもりで言ったんじゃないよ」
「そんなつもりで言ってほしいんですけどね」
「え?」
「僕はあなたが好きですよ、なまえさん」
「…うん」

地球温暖化に異常気象、それから核ミサイルと戦争兵器、も一つおまけに火山の大噴火。世界は脅威に満ちている。その前では私も、そしてテツヤくんもきっと一たまりもないだろう。嫌よ私、来月発売の漫画の新刊を買わなくちゃいけないしまだテツヤくんとキスだってイヤラシイことだってしてない。それどころかまだ一度も自分から好きって言えてない。だから神様お願いです、世界をひっくり返すのはもうちょっと、待って。




(120618)