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「おれはあんたが嫌いっスよ。なまえさん」
「…どうして?」
「どうしてだと思う?」
「質問に質問で返す男は嫌われるよ」
「別にあんたに嫌われても構わないっスもん」
「私は一般論を言っているだけなんですけどね」


コツコツコツ、なまえさんは足元にある石を適当に蹴飛ばした。蹴とばした石は三度跳ねた。夕闇が迫ってくる。遠くでカラスが鳴く声がした。真上に広がる赤色は全てを燃やし尽くす地獄の業火のようだ。地獄の業火、見たことないけど。オレの目の前に広がるなまえさんの影が、さっきよりぐいいと伸びた気がする。バスケットボールを持っている右手がじりじりと痛い。痺れているようだ。「まあ。理由なんてどうでいいけどね」なまえさんに顔は逆光でよく見えない。闇に、呑まれている。


「それと奇遇なんだけど黄瀬、私もあんたのこと、大嫌い」


なまえさんはニヤニヤ意地の悪い顔で笑った。ガムをクチャクチャと噛む音が聞こえる。ひどく耳障りだ。制服に大きめのパーカーを羽織って、ポケットに手を突っ込んでこちらをじろじろと楽しそうに睨みつける。矛盾があるようだが本当にそう表現するしかないような表情なのだから仕方がない。
「…降参っス」「そう、残念だね」やっぱりダメみたいだ。今回もまた失敗してしまったらしい。嫌いになりたいんだ、嫌いになってしまいたいんだ、なのにどうして、できないのだろう。縋ってしまうのだろう。苦しくて苦しくて窒息してしまいそうだ。息が、できない。呼吸の方法なんて今更誰かの真似をしなくてもできるはずなのに。目の前がぼおっと白く霞む。「あはは、黄瀬の目、濁ってる」なまえさんが心底楽しそうに笑う。ああどうして俺たちはいつも、どうしても手に入らないものを望まずにはいられないのだろう。「そんなの簡単じゃん、」












手に入らないから、望むんだよ。





黄瀬は誰のことも好きになれるけど、でも誰のことも嫌いになれないんじゃないのかなあというお話。
(120617)