バン!ドン!パーーーンッ!


目の前で鮮烈な炸裂音。
ポカーン、と様子を見ていた私の目の前にトビさんが崩れ落ちた。咄嗟にその体を支え、脈を確認する。大丈夫、生きてはいる。

ことの原因は些細な言い合いだった。
というか今晩のご飯のメニューである。そんな超些細なことでいざこざが起き、この通り。呆れを通り越し、苛立たしくなる。あなたたちは子供か。

「…あ」

トビさんの唸り声に胸の奥が痛む。ばっと顔を上げると驚いた表情のデイダラさんが視界に入り、思わず怒りが湧き上がった。

「なにするんですかデイダラさん!!少なくともトビさんは味方でしょう!?喧嘩をするなら言葉でしてください!!」
「わ、わりぃって…」
「あは、おこられてるん、スかぁ…?」
「トビさんも!!人を煽るようなことをしないでください!!だから爆破されるんです!!!」
「うぃー……っス」

呆然とするデイダラさんに水を汲むように指示を出し、彼がいなくなったのを確認してからトビさんのお面を外す。そこには驚いた表情のオビトさんがいて、素直にどきりとした。そうだ…トビさんはオビトさんなんだ。

「大丈夫ですか…?」
「いてぇよ」
「でしょうね。……ありがとうございます」
「は……?」
「すり抜け、使わなかったの私のためでしょう?」

あの時、私はデイダラさんから見てトビさんの後ろにいた。だから、すり抜けを使っていたら爆破されていたのは私だったのだ。それがわかっているからあまり強くは言えない。でも、言い合いにならなかったらこうはならなかったはずだし、成長して欲しいとは思う。

「よく、見てるんだな…」

うわ言のようにオビトさんが呟くから、彼から目を離さないように告げる。

「当たり前です。ちゃんと見てるんですから」
「っ…!」

かちゃりと、首筋に冷たい感覚。目の前の彼のこんな怯えた表情は初めて見た。まるで、拒絶と承認欲求の間で揺れる少年のように。
カタカタと震えるそれが、クナイだと気付くのにそんなに時間はかからなかった。それでも恐怖より理解したいと思う気持ちの方が強くなるのは私の感覚が狂っているからだろうか。

「お前は、本物か…?」

震える言葉、その言葉の真意はわからない。だけれども彼が簡単に私を殺すとは思えなかったから、その手をゆっくりと包み込む。
きっと今彼は何かと戦っている、それを手伝えるなら私は。少しの間でも彼と過ごした時間は嘘じゃないって証明したいんだ。

「私は本物ですよ。トビさんも、オビトさんも、全部、本物です」

一瞬泣きそうな表情をした彼がクナイを下ろす。「悪い…」そんなつぶやきが耳をかすめた気がした。

「怪我、直します。上だけでも脱いでください」
「大胆っスねぇ…」
「今は、お面つけてないでしょう?」
「気にするな…。先輩が、帰ってきちゃいますよ」
「ふふ、傷口に塩を塗られたいんですか?」
「それ、やばいやつじゃないっスか」
「そうです、やばいやつです」
「…わかったっス。脱げばいいんでしょう?」
「ええ、そうしてください」

不思議な感覚だった。目の前にいるのは、オビトさんなのに喋り方は全部トビさんのもので、まるで現実を突きつけられているかのような…。でも悪い気はしなかった。むしろ心地がいい。

「なんで笑ってるんだ…」
「いえ……。やっぱり、トビさんはオビトさんなんだなあって思って」
「……そう、だな」

そう苦笑する彼が服を脱いだのを確認してから傷口に手を当てた。そして手のひらにチャクラを集中し医療忍術を施す。

「お前、使えたのか、医療忍術」
「これしかできません」
「そうか…」

あと少し、二人でいさせてほしい。
もう少しだけオビトさんでいてほしいと思うのはひどいわがままだとわかっていたけれど、願わずにはいられなかった。
ただ一人のあなただから

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