3/6
「まったく…。一体どこにいっていたの…って、え?」
「妻だ」 「妻です」
衝撃的すぎる事実は、一周回って私たちを冷静にさせた。あのまま共にうちはを目指し歩き出した私たちは結婚式場はどこにするか、新婚旅行に希望はあるか、新居はどこにするか、一緒に暮らすならば何を気をつけるべきかを真剣に語って、気付けばうちはの門をまたいでいた。そして多分イタチさんの母だと思われる女性に冒頭の挨拶である。混乱極まれり。
「初めまして、イタチの母のミコトです」 「初めまして、お義母さま。この度イタチさんと婚約させていただきます、観音です。不束者ですが…」 「お義母さま!!」
居間に通された私は身なりを正して改めて挨拶をする。しかし言い切る前にミコトさんは満面の笑みを浮かべる。
「聞きました?あなた、お義母様ですって!」 「ああ、聞いている」
居間にいたのは難しい顔をしたイタチさんのお父さん。それとさっきからずっと私を睨んでいる男の子(といっても私よりも少しだけ年下に見える程度だが)。この子はイタチさんの弟さんだろうか。
「初めまして、フガクだ。イタチをよろしく頼む」 「え、いえ!こちらのセリフです!これからもより良い関係を築けるように尽力いたします!!」
フガクさんが深く頭を下げられるから、私は慌ててそれ以上に頭を下げた。そんな私を鼻で笑う声が一つ。
「千手の姫だっていうからどんな女が来るかと思ったが、大したことないな」 「サスケ!」
それは先ほどの男の子で、その目はどうにも私を歓迎しているとは言い難い。ミコトさんが咎めるように名前を呼ぶが、彼の威圧は止まなかった。しかし、こんなのでめげては私は千手の姫を名乗れないだろう。
「初めまして、うちはサスケくん?あなたがおっしゃることも最もです。私は千手というカゴに大切にしまわれて育ってきました、まだ世のことを多くは知りません。だからイタチさんの妻となることも未だに不安ばかりです。しかし、そこで折れていたらそれこそ千手の名折れ。これでも初代様のひ孫でありますから、簡単なことでは引きませんよ。頭を下げ倒しても自分にできることを全ういたします」
これはいつも自分に言い聞かせていることだ。 きっと籠の鳥にもできることはあると信じていた。だから身を引けない。
「ふんっ」 「ちょっと、サスケ!」
ごめんなさいね、と謝るミコトさんに大丈夫です、と笑ってみせると、どこか嬉しそうに口角を上げているサスケくんが目に入った。
「あんたのことはわかった。うちはサスケ、イタチ兄さんの弟だ、今日からあんたの弟にもなる」 「は、はい!よろしくお願いします、サスケくん!」
彼がそっと手を出してくれるから私は慌ててそれをつかんだ。認めてもらえたんだという喜びが全身を覆う。ちらりとイタチさんを見ると彼も安心したように笑っていて、これなら上手くやれそうだと胸が踊った。
[ back]
|