一番星番外編 | ナノ



※星屑親子和解&母、シスイ生存if


「はぁ…全く…ながれもうずまきナルトも、集中力が足らないのではないですか?」

修練所の床に倒れ伏して息を整える私とナルトくんに母は仁王立ちのままため息を吐く。冷酷な瞳に冷ややかな声音、それでも彼女の暖かさを感じるから親子というのには本当にすごいと思う。

「下忍になったからと油断してはなりません。すぐに中忍試験があるのですよ」
「無理です母様…。サスケくんぐらいじゃないとどうにも」
「またうちはの話ですか?いつもいつも母に内緒で遊びに行っている事、知っているんですからね」
「……」
「うずまきナルトも、さっきから目をそらしていますがあなたも一緒でしょう?母の目はごまかされませんよ」
「厳しいってばよ…」
「またあの子のような口癖を…」

母はため息をつくとパンパンと手を鳴らす。今日はここまでです、という言葉にガッツポーズしそうになるが、ナルトくんと顔をつき合わせてグッとこらえた。

数年前に公園で出会ったナルトくんは現在我が家に居候している。星屑の館は馬鹿みたいに広いし、母もどこか思うところがあったらしく、予想以上にあっさり了承してくれた。

「あれ…もう終わったのか…?」
「シスイさん!!」

さぁ地上に戻ろうとしていたところで、広い修練所に優しい声が響く。その声は私の大好きなそれで、身が跳ねんばかりに聞こえた方向に体を向けると、相変わらず爽やかに微笑むシスイさんが目に入る。

パタパタと駆け寄ると頭をぐしゃぐしゃに撫でられて胸の奥がぎゅっとなる。やっぱり大好きだなっていつもいつも確認してしまう。続いてナルトくんも駆け寄ってきて「今度はいつ稽古してくれるんだってばよ!!」と目を輝かせた。シスイさんはそのおでこをコツンと小突き、「悪いな、また今度だ」とイタチさんのセリフを奪ってニッと口角を上げる。

「うちはシスイ…。何をしにきたのですか?」

絶対零度。
まさしくその表現が似つかわしい母の声に体が固まる。これには愛情なんて感じられない。本気で敵対してる時の声だ。

「我が家の監視任務はいいのですか?こんなところまで来ても、あなたに娘は渡しませんが」
「ヒジリさん、俺の任務はあなたの監視だ。あなたがここにいるなら俺もここに来るのは当たり前のことでしょう?」
「本当に暗部は何を考えているかわからないものです…」

母は呆れとか、諦めとか、そういうのを全て超越した様子で肩をすくめる。流石にやばい、と私はシスイさんを離れ母に駆け寄った。「顔色が…」と手を伸ばすとその手を取った母は不器用に少しだけ笑みを浮かべてくれる。

「ありがとうございます、ながれ。あなたは自慢の娘ですよ」
「えへへ…」
「ですが、星遁が発現しないことはまだ認めておりません」
「はい…」
「ま、まぁまぁ、ながれだって頑張ってるってばよ!」
「実らなければ意味なんてないのですよ。そういううずまきナルト、あなたにも教えなければならないことがありますね」
「げ…」

すっと無表情になる母は怖さよりも厳格さが立つ。ぴっと伸びた背中は追いかけるべき指標のように映って眩しくて仕方がない。ああ、本当にすごい人なんだなって強く感じる。

「か、母様母様!とりあえず本日は終わりですよね!?すぐに夕飯を作りますから…!」
「……私も手伝います」
「それはやめてください…」
「母ちゃんが混ざると消し炭になるってばよ…」
「その減らず口、叩き直しましょうか?」
「今日もながれのご飯楽しみだってばよ!!!」
「シスイさんもいかがですか?」
「お、じゃあお邪魔するかな」
「…本当に邪魔な男ですね」

修練所の階段を登りながら会話が途切れない。あんなに昔は上手くいくことはないって思っていたのに、少しずつ歩み寄ろうと努力したらなんてことはなかった。今こうして何気ない話をしている今がたまらなく幸福だ。ふと母を見上げると、彼女はつり上がった瞳を少しだけ緩めて「どうしたのですか?」と形のいい唇を動かした。

「ううん、なんでもないです!」



top